解体工事で出る廃棄物はどう処分する? 廃棄物の処理方法と注意点について解説
解体工事で排出された廃棄物は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分別し、それぞれ法に従って処理する必要があります。適切な処理を怠れば、重い罰則が課せられる恐れもあるため、事業者は正しい処理方法を把握しておかなければなりません。
この記事では、解体工事を行うにあたって必要なごみ処分の方法と、基本的な注意点について解説します。
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産業廃棄物と一般廃棄物の違い
廃棄物の取り扱いについて考えるうえでは、法律で定められた区分を適切に理解しておく必要があります。ここでは、「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の違いについて確認しておきましょう。
産業廃棄物とは
「廃棄物処理法」では、産業廃棄物を次のように定義しています。
1.事業活動を通じて排出された廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物 |
(出典:e-Gov法令検索『廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)』)
「産業」と名のつくように、基本的には「事業活動」にともなって生じた廃棄物のうち、特定のものを産業廃棄物として扱います。ここでいう事業活動とは、建設工事やオフィス・商店などの商業活動のほかに、公共事業も含まれます。
つまり、解体工事で出る廃棄物のうち、特定の種類のものは産業廃棄物に該当するということです。特定の種類とは、具体的には紙くずやコンクリートなどのがれき類、木くず、ガラス、プラスチック類、金属くずなどの20種類の廃棄物が該当します。
そのうち燃え殻や汚泥、廃油などの12種類は、あらゆる事業活動が対象とされます。一方、紙くず・木くず・繊維くず・動植物性残渣などは特定の業種が対象です。
そして、建設業で排出された紙くず、木くず、繊維くずは、産業廃棄物の対象となります。産業廃棄物の取り扱いには「都道府県の許可」が必要であり、一般廃棄物とルールが異なる点に注意が必要です。
一般廃棄物とは
一般廃棄物とは、産業廃棄物処理法で規定された産業廃棄物以外のものを指します。家庭から出るごみだけでなく、飲食店から排出される生ごみや商店などから排出される紙ごみも一般廃棄物に該当します。
一般廃棄物の取り扱いは市町村ごとに決められていますが、特に爆発性、毒性、感染性などが強いものについては、政令で「特別管理一般廃棄物」として定められ、通常とは異なる処理方法が適用されます。
参考:東京都環境局 産業廃棄物適正処理ハンドブックより、廃棄物の分類
(出典:東京都環境局『産業廃棄物適正処理ハンドブック』)
解体工事で出る廃棄物の処理方法
解体工事で出た廃棄物はどのように処理すべきなのでしょうか。ここでは、基本的なルールと処理方法について見ていきましょう。
自らの責任において処分しなければならない
廃棄物処理法では、産業廃棄物を排出した事業者は自らの責任で処理しなければならないと定められています。解体工事で出た廃棄物は、まず一般廃棄物と産業廃棄物に分別します。
そのうえで、前述した「廃棄物処理法」や、「建設リサイクル法」に基づいた適切な処理を行わなければなりません。建設リサイクル法とは、コンクリートやアスファルト、木材を用いた建築物に関する一定規模以上の解体工事・建設工事において、分別解体と再資源化を義務付けた法律です。
解体工事の場合は、「床面積80平米以上」が対象とされているため、実質的には一戸建て住宅を含む多くの建物の解体に適用されます。
(出典:e-Gov検索『建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律』)
(出典:環境省『建設リサイクル法の概要』)
廃棄物処分業者に委託することも可能
解体工事で出る廃棄物は量も種類も多く、分別や処分には手間や時間がかかります。許容量を超えてしまう場合は、無理なく処分業者に任せるのも有効な方法です。
適切に処理されなければ、行政処分などの罰則対象になる恐れもあるため、処分の仕方は慎重に判断しましょう。
廃棄物の処理を依頼するときの流れ
解体工事では大量の産業廃棄物が排出されることから、専門の処分業者に依頼するケースが多いです。ここでは、廃棄物処理を外部へ依頼するときの注意点と流れについて解説します。
廃棄物処理を依頼するときの注意点
廃棄物の処理を依頼すると、収集運搬業者から処分業者へと引き渡されて処分が行われます。そのため、外部に委託する際には、収集運搬業者と処分業者のそれぞれと委託契約を書面で交わさなければなりません。
また、廃棄物が適正に処理されているかを確認・保存する方法として、排出事業者には「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」の発行と、都道府県・政令市への報告書提出が義務付けられています。なお、解体工事を法人から請け負う場合であっても、排出事業者は依頼主ではなく請け負った解体業者となります。
依頼主がたとえ法人であっても、排出事業者になるわけではないので注意しましょう。
廃棄物処理を委託するときの流れ
廃棄物処理を委託する際の流れは以下のとおりです。
1.廃棄物の処理を依頼する。 |
収集運搬業者と処分業者のそれぞれと契約を交わしたら、マニフェストもそれぞれに交付する必要があります。収集運搬業者に廃棄物を引き渡すと同時に、マニフェストを交付し、運搬が終わったらマニフェストの写し(運搬終了報告)を送付してもらいます。
その後、収集運搬業者が処分業者へマニフェストを受け渡し、処分が終了したら「処分業者→収集運搬業者→排出事業者」の順でマニフェストの写し(処分終了報告)を戻してもらうのが基本的な流れです。なお、マニフェストはそれぞれの業者が5年間保存しておかなければなりません。
すべての処理が完了したら、排出事業者がマニフェストを基に報告書を作成して都道府県・政令市に提出し、適切な管理が行われていることを報告する義務します。
電子マニフェストなら情報処理センターを介したやりとりが可能
マニフェストを電子データ化すれば、関連する3者で、情報処理センターを通じたネットワーク上のやりとりを行うことも可能です。情報処理センターでデータを一元管理できるため、業者間の確認や送付といったやりとりが効率化され、労務が大幅に削減されます。
さらに、都道府県や政令市側も監視業務が行いやすくなることから、制度の普及拡大に力が入れられています。
参考:日本産業廃棄物処理振興センターホームページよりマニフェスト精度の目的
(出典:『日本産業廃棄物処理振興センターホームページ』)
処分業者と契約をするときの注意点
処分業者と契約を行うときには、さまざまなリスクを想定して計画を立てる必要があります。ここでは、特に注意しておきたいポイントを3つご紹介します。
処理依頼は早めに行う
建物の解体が決まったら、廃棄物の処理依頼は早めに行う必要があります。先にも述べたように、解体工事では元請業者が排出事業者となるため、万が一廃棄物を放置すればその責任が問われてしまいます。
廃棄物を不法投棄した場合、「5年以下の懲役もしくは1,000万円(法人の場合は3億円)以下の罰金またはその併料」という重い罰則が課される可能性があるので注意しましょう。
許可事業者であるかどうかを確認する
産業廃棄物の収集・処分を行うには許可が必要です。不要なリスクを避けるためにも、依頼する収集運搬業者・処分業者がきちんと許可を得ているかどうか、事前にチェックしておきましょう。
なお、収集運搬業者では「排出場所と運搬先の両方の都道府県知事許可」が必要です。また、処分業者も「中間処理施設と最終処分施設の両方の確認」が必要となるので注意しましょう。
依頼先選びは複数の事業者から見積もりをとって比較する
依頼先を見極める際は、複数の事業者から見積もりをとって比較するのもポイントです。廃棄物の処理費用は、処理業者や都道府県ごとに異なるので、見積書で相場を把握しておきましょう。
なかには悪徳な事業者もあり、相場よりも高く料金設定されているケースだけでなく、反対に不自然に低く設定されている場合もあります。料金があまりにも安い場合は、「許可を得ていない」「不法投棄が行われている」といったリスクが潜んでいるため、不明な点があれば細かく確認することが大切です。
環境省ホームページや自治体ホームページなどで最新の情報を確認し適切に処理をすることが重要です
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:産業廃棄物とは?
A:産業廃棄物とは、基本的には事業活動にともなって生じた廃棄物のうち、特定のものを産業廃棄物として扱います。主な種類としては、燃え殻や汚泥、廃油、金属くず類などがあげられ、建設業ではさらに紙くず・木くず・繊維くずも対象となります。
Q:解体工事の廃棄物の処理方法は?
A:解体工事の廃棄物は、依頼者でなく解体業者が排出事業者となり、責任を持って処理する必要があります。解体工事では大量の産業廃棄物が出るため、外部の処理業者に委託するケースも多いです。
Q:廃棄物処理を業者に依頼するときの流れは?
A:排出事業者は収集運搬業者と処理業者のそれぞれと契約を結びます。3者はマニフェストのやりとりを通じて処理状況を把握・管理し、それぞれ適切に処理したうえで、保存しておかなければなりません。すべての処理が終了後、排出事業者はマニフェストを基に報告書を作成し、都道府県・政令市に提出する必要があります。
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