住宅業界に迫る職人不足問題、人がいないなら育成するしかない!?

今、住宅・建設業界は多くの課題を抱えていますが、その一つが「職人不足」です。職人が減っていることはもちろん、若者のなり手不足、高齢化が急速に進んでいます。
国勢調査においては、例えば「大工」の就業者数を発表していますが、2020年時点で29.8万人でした。40年前と比較すると、3分の1の規模まで縮小しています。さらにこの就業者数のうち、60歳以上が43%に上ります。さらに近い将来、2030年には大工がさらに半減して15万人まで減るという予測も出ています。住宅・建設業界には早急な対応が求められます。

リフォーム業界で活躍!「多能工」の育成学校が誕生
住宅業界では、職人育成に注力する企業が増えています。大手ハウスメーカーでは積水ハウスや住友林業などがその筆頭ですが、多くは大工の育成がメインです。そして、リフォーム業界に目を向けると、多能工の育成を手がける企業も出てきています。
今回取り上げるのは、千葉県成田市のリフォーム会社である株式会社ハウジング重兵衛の取り組みです。同社は従来、自社で多能工の育成に注力してきましたが、このノウハウを生かし、多能工を育成する学校として「JMCA」(Japan Multi-Crafter Academy)を2024年2月に創設しました。25年11月までにJMCAが輩出した卒業生は26名。参加者の経歴としては、職人未経験者から会社の役員クラスまで幅広いです。
JMCAの拠点となっているのは、千葉県香取市にある元小学校の校舎です。同社が建物の内部を改修し、現在はリフォーム技術を実践的に学べる訓練スペースが整備されています。複数の生徒がここに集い、約1ヶ月間共同生活を送りながら、多能工としての技術習得に励みます。
カリキュラムは、トイレコースとキッチンコースの2種類を用意しています。いずれのコースも最終日に実務を想定した卒業試験を実施します。顧客へのあいさつから始まり、施工、現場の養生や清掃、工事完了後の商品説明、さらには営業担当者への工事完了報告までを行い、この一連の流れを総合的に評価します。単に仕上がりの品質が高いだけでは合格とならず、顧客対応などが徹底できているかについても評価ポイントであることが特徴です。併せて、ハウジング重兵衛が実践している職人向けの研修や評価制度についても公開し、卒業生が自社で活用できるようにしています。

職人に求められるのは「技術」と「顧客対応力」
ハウジング重兵衛では従来、自社で多能工の育成に取り組んでいました。2019年には多能工集団として㈱KENSHIを設立し、職人の新卒採用もスタート。25年12月時点でKENSHIの多能工は36名で、新卒で入社したメンバーが35%を占めます。KENSHIの多能工と、他社の職人とで異なる最大のポイントは「マインド」といわれるものです。技術力以上に、顧客に喜んでもらうために何をすべきなのかを考えるマインドの形成を重視しており、定期的に研修も実施しています。
また、職人の評価方法も確立しており、その手法の一つが「360度評価」です。これは、職人おのおのが親方や同僚、後輩、リフォーム営業、現場監督、事務員など、業務で関わる全員から評価を受けるというもので、職人によっては評価者が20名内外に上ることもあります。
評価項目としては、「ビジネスマナー」「多能工職人としての能力」などが挙げられます。このほか、キャリアパスを明確にするための等級号制度も整備しており、年次にかかわらず、ステップアップできるとのことです。
社員職人を抱えるメリットとは?
多能工に限った話ではありませんが、社員職人を抱えることには一定のメリットがあります。第一に挙げられるのが、工事の内製化です。ハウジング重兵衛では、トイレやキッチンのリフォーム工事の約7割をKENSHIが担っています。加えて、営業担当者とコミュニケーションを取りやすい点もメリットの一つです。工事現場であれば、職人でなければ判断が難しい納まりの工事などについても、タイムリーに打ち合わせができます。さらに、工事スケジュールについても組みやすいという側面があります。
リフォーム営業の担当者の生産性も高められています。例えばトイレ工事では、一般的なリフォーム会社であれば営業担当者が協力会社に同行するケースが多いですが、同社では多能工1人で顧客対応から工事までを完結できます。このため、営業担当者の現場対応に割く時間は少なくなり、商談や顧客対応といった本来の業務に注力できます。結果として、受注増と残業時間の抑制を両立できます。若手営業担当者の成長スピードも速く、3~5年目で個人生産性が1億円を超える人材も現れています。職人との連携や業務の進めやすさが、離職防止にもつながっているようです。
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