人材採用

『大工』の数が直近40年で4分の1?深刻化する職人不足

『大工』の数が直近40年で4分の1?深刻化する職人不足


目次[非表示]

  1. 1.「受注しても建てられない」職人不足時代に突入⁉
  2. 2.大手ハウスメーカーが仕掛ける「大工」のリブランディング

「受注しても建てられない」職人不足時代に突入⁉

住宅業界は住宅着工戸数の減少、建材コストの上昇など様々な課題を抱えています。人手不足もその一つで、採用活動はより厳しくなっていますが、自社のスタッフだけでなく、施工の担い手である建設技能者、いわゆる職人不足も顕在化してきています。

家づくりには多くの技能者が携わっていますが、主役と言えるのは間違いなく「大工」です。家づくりにおける大工は重要度が高く、彼らの技術力が建物品質に直結します。

近年は構造材のプレカット技術が進歩したこともあり、構造躯体の品質は保ちやすくなりましたが、とはいえすべてがプレカット材ということではなく、特に下地や細かい納まりなどは大工各々の熟練度に左右されるところです。これが、その後の内装のクロスなどの仕上がり品質にも当然影響してきます。一部の住宅会社が自社で大工を育成している理由も一つは品質の確保です。「建物品質」をウリにするためにはいかに現場に入り込めるかが、カギになっています。

総務省が5年ごとに実施する国勢調査では、この大工の人数を集計しています。これによると、2020年時点で29.8万人。戦後の大工のピークが1980年と見られ、当時が93.7万人でしたが、それから40年間で3分の1の規模まで縮小しています。

大工が減っているだけでなく、高齢化も深刻化しています。2020年時点で60歳以上は12.8万人。大工全体の43%を占めています。平均年齢ということでは2020年時点で54.2歳まで上昇しています。

一方、若年層ということでは、29歳以下に限定すると2.1万人。この20年間で5分の1まで減少しました。大工の数を見ても技能者の減少は深刻で、将来的に業界内で技能者の奪い合いになる可能性も十分にあるでしょう。

このような背景もあり、国土交通省では人材の流入を改めて促すべく、建設業界の魅力向上を図る取り組みに注力しています。その一つが「建設キャリアアップシステム」、通称「CCUS」です。住宅会社もこの導入は推進していきたいところです。

改めてCCUSとは2019年4月より本格運用が始まった制度で、大工などの技能者が技能・経験に応じて適切に処遇されるために、この元情報となるような技能者各々の現場での就業履歴といった情報を登録、蓄積できるシステムです。

CCUSに登録できる情報は、具体的には技能者個人の所属事業者履歴、日々の就業の履歴、1級建築大工技能士などの資格、表彰受賞履歴などです。現在はこれらのデータを基に、技能者それぞれを4段階でレベル分けしています。

国土交通省は2023年6月にはこのレベル別平均年収も公表しています。従来は、賃金に関わる情報はある種ブラックボックス化していたこともあり、建設技能者を目指す若者にとって悩みの種とも言えるところでした。この年収の公表は大きな意義があるはずです。

大手ハウスメーカーが仕掛ける「大工」のリブランディング

施工キャパは技能者を募集するだけでは間に合わないこともあり、自社で育て上げる取り組みも本格的に始動しなければならないタイミングが到来しています。実際にここのテコ入れを始めた企業の一つが積水ハウスです。一戸建て住宅などの建設請負事業を展開する子会社の積水ハウス建設は、これまで職人候補生として、高校・専門学校卒生の採用を行ってきました。

そして、今後はこの採用数をさらに増やす方針で、実際に2024年4月には前年の3.4倍にあたる134名が入社しています。来年4月も同程度の入社を目標としているとのことです。

同社では、職人の待遇制度向上にも取り組んでいます。給与面では、高卒社員の初任給を23年4月に最大11%アップ、この4月にも最大9%アップさせています。新入社員だけでなく、既存の社員も同様に給与を上げています。同社では職人の呼称を「クラフター」としていますが、30代のチーフクラフターと称する上級職は年収を最大約900 万円、上げ幅としては最大1.8倍です。

積水ハウスはこのほかにも、ユニフォームのデザインの刷新など職人のリブランディングも図っています。また、昨年11月には大工の技術力を競う選手権「WAZA 2023」を、初めて開催しました。関西有数のコンベンションセンターにて、アーティストさながらのステージと、MCにプロのアナウンサーを起用してイベントを盛り上げました。大工の大会を自社で開催する企業は他になく、この様子は当時多くのメディアに取り上げられました。

大工をはじめ建設技能者の成り手不足が深刻化する中、積水ハウスグループはこの採用を増やせています。これからの住宅会社は、住宅を「売る」人材だけでなく、「つくる」人材の確保にも本腰を入れていきたいところです。


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株式会社住宅産業研究所(JSK)
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1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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