建築・施工管理

【建築業界の基礎知識】建築基準法第22条区域とは?定められている制限と区域指定の調べ方を解説

【建築業界の基礎知識】建築基準法第22条区域とは?定められている制限と区域指定の調べ方を解説

都市計画では「安全で良好な住環境の形成・維持」という観点から、区域ごとにさまざまな制限が設けられています。特に、市街地での火災・延焼の防止は、都市計画における重要な課題の一つです。火災による被害を防ぐためのルールにはさまざまなものがあり、「建築基準法第22条区域」もその一種です。

今回は建築基準法第22条区域の概要や具体的な制限の内容、区域指定の調べ方などについてご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.建築基準法22条指定区域とは
    1. 1.1.屋根の不燃化が義務付けられるエリア
    2. 1.2.指定される区域
  2. 2.建築基準法22条指定区域における制限
    1. 2.1.屋根に関する規定
  3. 3.外壁に関する規定(法23条区域)
  4. 4.建築予定地が複数の区域とまたがっている場合の注意点
  5. 5.増築・用途変更する場合
    1. 5.1.増築に関するルール
    2. 5.2.用途変更に関するルール
  6. 6.区域指定の調べ方を押さえておこう
  7. 7.この記事を監修した人

建築基準法22条指定区域とは

「建築基準法第22条指定区域」(法22条区域)とは、建築基準法(第22条第1項)によって指定された区域を指します。ここではまず、制度の概要について見ていきましょう。

屋根の不燃化が義務付けられるエリア

建築基準法第22条指定区域とは、「屋根不燃化区域(屋根不燃区域)」とも呼ばれており、火災による類焼(もらい火)・延焼を防ぐために屋根の不燃化が義務付けられたエリアのことです。別名が示すとおり、対象とされる区域においては、一部の例外を除いて屋根の不燃化を施さなければならないことが定められています。

屋根は火災時に火の粉が降りかかり、炎による上昇気流の影響を強く受けることから、特に類焼の原因になりやすい部位とされます。そこで、屋根の耐火性向上を優先的に進めるための決まりとして規定されたのが法22条区域です。

指定される区域

法22条区域は、防火地域・準防火地域以外の市街地において、火災による延焼を防ぐ目的があるエリアで指定される決まりです。防火地域や準防火地域は都市計画で指定される地域であり、平たく言えば、市街地のなかでも特に火災の防止が重要視されるエリアを指します。

これらの地域においては、火災防止に関して特に厳しい建築制限が行われており、そのなかには法22条区域の内容に該当する「屋根の不燃化」も含まれています。防火地域・準防火地域ではそもそも不燃化が前提となるため、それ以外の地域で特に必要なところを指定し、屋根の防火性を高めるというのがこの条文の基本的な目的です。

また、もっとも制限の厳しい防火地域は、中心的な商業地や住宅密集地、交通量の多い主要幹線道路沿いなどに指定されることが多いです。そして、一般的にはそのすぐ周りが準防火地域に指定され、さらにその外側を囲うようにして法22条区域が指定されるといった区割りが行われることが多いです。

建築基準法22条指定区域における制限

建築基準法第22条指定区域では、具体的にどのような制限を受けるのでしょうか。ここでは、屋根と外壁の2つの部位に分けて制限の内容を解説します。

屋根に関する規定

建築基準法第22条1項の条文は次のとおりです。

■第22条1項の条文

(屋根)
特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内にある建築物の屋根の構造は、通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

ただし、茶室、あずまやその他これらに類する建築物又は延べ面積が十平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類する建築物の屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分については、この限りでない。

引用:建築基準法第22条1項

条文によれば、指定された区域においては屋根を不燃材でつくるか、不燃材で葺き上げる必要があるとされています。不燃材とは以下の定義に当てはまる材料のことです。

■不燃材料の定義と具体例

定義

火災における20分以上の加熱においても以下の状態を生じないもの
1.燃焼
2.防火上有害な損傷

3.避難上有害な煙・ガスの発生

代表的な材料

  • コンクリート
  • れんが
  • 陶磁器質タイル
  • 金属板
  • モルタル
  • ロックウール
  • 厚さ5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
  • 厚さ12mm以上の石膏ボード 等


参照:国土交通省『建築基準法制度概要集』

外壁に関する規定(法23条区域)

法22条区域では、同時に建築基準法第23条による制限(法23条区域)も適用されるのが一般的です。法23条区域とは、対象エリアにおける木造建築物などの外壁について、「延焼のおそれのある部分」を「準防火性能を備えた構造」にしなければならないという決まりです。

延焼のおそれのある部分とは、近隣の火災時に影響を受ける範囲のことであり、具体的には以下のように隣り合った建築物の位置関係によって決められます。

■延焼のおそれのある部分

  • 隣地境界線・通路中心線・建築物相互の外壁間の中心線を基準線として、階数に応じた一定距離の範囲内に入る部分
  • 1階部分:基準線から3m以内の部分
  • 2階部分:基準線から5m以内の部分

また、準防火性能とは、外壁部分を土塗壁(つちぬりかべ)等の燃えにくい構造でつくり、通常の延焼を抑制するために必要な一定の性能をもつものです。具体的な技術的基準は、「耐力壁では20分間の非損傷性・遮熱性」「非耐力壁では20分間の遮熱性」とされています。

法22条区域では、これらの規定によって類焼と延焼が防止され、火災による被害拡大を抑制される仕組みになっています。

建築予定地が複数の区域とまたがっている場合の注意点

土地が複数の規制区域にまたがっているケースでは、規制がより厳しい区域の基準が適用されるのが一般的です。たとえば、準防火地域と建築基準法22条指定区域がまたがっているような土地では、すべての範囲においてより厳しい基準である準防火地域の規制が適用されることとなります。

この場合、木造の平屋や2階建てを建てる際には、準防火地域の規制を守って建物を「防火構造」にする必要があります。法22条区域の規制である準防火構造と比べて、より厳しい規制となるので、設計時には特に注意が必要です。

また、法22条区域と特に規制のない区域がまたがっている場合は、上記のルールに則り、法22条区域の規制が適用されることとなります。

増築・用途変更する場合

土地の区域によっては、増築や用途変更を行う際に異なるルールが適用されることもあるので注意が必要です。ここでは、増築・用途変更のそれぞれにおいて、指定区域ごとのルールを見ていきましょう。

増築に関するルール

建物の増築をする際、その土地が防火地域や準防火地域に指定されている場合は、たとえ増築範囲が1平米のみであっても建築確認申請をする必要があります。一方、防火地域や準防火地域に指定されていない地域については、法22条区域も含めて増築が「10平米以下」であれば確認申請の必要はありません。

ただし、増築部分の床面積が10平米を超える場合には、どの区域であっても確認申請が必要となるので注意しましょう。なお、増築には母屋の面積を拡大する行為だけでなく、離れやサンルームの設置、プレハブ製の物置やカーポートの設置なども含まれます。

そのため、増築に含まれる行為についても細かく調べておくとよいでしょう。

用途変更に関するルール

用途変更については、多くの場合は建築確認申請の必要がないものとされています。ただし、200平米を超える特殊建築物(飲食店やホテル、福祉施設など)は、どの区域であっても用途変更の際に確認申請が必要となります。

また、用途変更による建築確認が不要の場合であっても、建ぺい率や容積率といった建築基準法への適合は求められるので注意が必要です。

区域指定の調べ方を押さえておこう

対象の土地にどの区域指定が行われているかを知るには、自治体のホームページや役所の都市計画課の窓口などで「都市計画図」を見せてもらうのが近道です。都市計画課は、自治体によって建築指導課・土地計画課・まちづくり推進課などの名称になっている場合もあります。

正確に場所を把握するために、住宅地図も持っていくとよいでしょう。また、複数の区域にまたがっている場合は、念のために適用される建築規制の内容も詳しくチェックしてもらうことが大切です。

なお、なるべく時間をかけずに調べたい場合は、検索エンジンで「〇〇区 建築基準法22条指定区域」などのキーワードを入力してリサーチすることも可能です。ただし、地図の読み取り間違いなどが起こる可能性もあるので、利用にあたっては十分に注意しましょう。

●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建築基準法第22条指定区域とは?
A:
建築基準法第22条指定区域とは、「屋根不燃化区域(屋根不燃区域)」とも呼ばれており、一部の例外を除いて屋根の不燃化を施さなければならない地域のことです。防火地域・準防火地域以外のエリアで、火災の被害が大きくなりやすい区域に指定されることが多いです。

Q:屋根の不燃化とは?
A:
屋根の不燃化とは、不燃材料を用いて屋根の葺き上げなどを行うことを指します。不燃材料にはコンクリートや瓦、金属板、モルタルなどのさまざまな種類があります。

Q:複数の区域にまたがった土地の注意点は?
A:
防火地域や準防火地域と法22条区域にまたがった土地では、より厳しいルールである防火地域あるいは準防火地域の規制が適用されます。また、法22条区域と特に指定のない区域にまたがる土地は、法22条区域の制限が適用されます。

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この記事を監修した人

岩納 年成(一級建築士)

大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打ち合わせ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。


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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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