人材採用

住宅業界で深刻化する人材不足と人材育成|「人財」確保の対策を紹介

高齢化に伴う労働力の減少は、多くの業界における主要な問題となっています。住宅業界においても例外ではなく、多くの企業が若手の人材を確保することに悩みを抱えています。

とりわけ、建設業界では現場を担う職人を中心に高齢化が進んでおり、担い手不足が深刻化している状況です。今回は、建設業における「人財」確保の対策と解決策について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.業界のイメージアップに取り組む
  2. 2.DXを推進して業務の効率化を図る
  3. 3.人材確保・人材採用方法の見直し
    1. 3.1.待遇面の改善
    2. 3.2.多様なキャリアを持つ人材の受け入れ
  4. 4.人材育成の仕組みを整える
    1. 4.1.公的な支援制度を利用する
    2. 4.2.人材育成に向けた人的リソースを確保する
  5. 5.キャリア・スキルアップ支援を進めていく
    1. 5.1.建設業における中高年人材の現状
    2. 5.2.中長期的なキャリア支援が必要

業界のイメージアップに取り組む

建設業界では、古くから「きつい」「汚い」「危険」というマイナスイメージが蔓延しており、現在でも完全に払拭されているわけではありません。法令の改正や技術の進歩により、着実に改善が進んでいるものの、外部の人材が持つ印象を変えられるほどの変化は起こっていません。

現代においては、特に「長時間労働」や「職人気質なイメージ」が人材の確保を妨げているといえます。建設業は全産業の平均と比べても、年間労働時間や年間出勤数が多い傾向にあり、長時間労働を前提としているビジネスモデルも少なくありません。

また、現場においては厳しい上下関係や不十分な教育システムなど、職人気質のマイナスイメージが先行してしまう部分もあります。若手の人材を確保していくには、業界全体としてこうした現状を払拭するために、建設業の魅力を積極的に発信していくことが大切です。

たとえば、国土交通省では、建設現場のイメージ映像を発信したり、SNSを用いた情報発信を行ったりと、積極的なイメージアップに取り組んでいます。個々の企業としても、採用サイトなどで自社の魅力を幅広く発信し、地道にリブランディングを図ることが重要といえるでしょう。

DXを推進して業務の効率化を図る

業務の効率化は、人手不足による問題を解決するために重要な施策となります。すでに建設現場においては、ドローンを用いた測量やBMIツールを使ったデータ管理などが行われており、企業によってはデジタル化が進んでいるケースもあります。

一方で、中小の企業においては大掛かりなシステムを導入するのが難しく、デジタル技術を活用した経営革新がなかなか行えないのが現状です。人手不足により通常業務に追われ、新たな技術やシステムに適応する余裕がなく、ますますデジタル化が進んでいかないという悪循環に陥ってしまうのです。

そのため、いきなり全面的な改革を行うのではなく、ICT施工の導入やペーパーレス化といったできるものから戦略的にデジタル技術を活用していく必要があります。たとえば、多数の顧客を相手に取引を行っている企業であれば、まずは顧客管理システムの導入に力を入れるのが妥当です。

管理システムによって情報の一元管理が行われれば、データの共有や引継ぎがスムーズになり、業務負担の大幅な軽減につながります。

人材確保・人材採用方法の見直し

安定した人材確保を行うためには、定着率の向上にも目を向ける必要があります。ここでは、人材確保・人材採用方法の見直しについて、力を入れるべきポイントを見ていきましょう。


待遇面の改善

人材の定着率を向上させるには、給与や労働時間といった待遇面での改善は必要不可欠となります。2024年の4月1日からは、それまで猶予されていた建設業界における時間外労働の上限規制が適用されるため、労働時間については自然に解消されていく面もあるでしょう。

しかし、それによって「給与が上がっていかない」「業務が回らない」という状況が続けば、やはり新しい人材を確保するのは難しくなってしまいます。生産性の向上により、労働時間が短くなっても十分な給与水準を維持できるだけの仕組みを構築することが重要です。


多様なキャリアを持つ人材の受け入れ

中途採用においては、多様なキャリアを持つ人材を幅広く受け入れる体制づくりを行う ことも大切です。DXの推進や社会の急速な変化に対応していくためには、ITに強い人材の確保も急務といえるでしょう。

建設業以外の経験者も活躍できる仕組みをつくり、多様な人材を受け入れることで、組織としての競争力を高めていく必要があるのです。

人材育成の仕組みを整える

せっかく建設業界で働いてくれる人材を確保できても、人材育成の仕組みが整っていなければ早期離職につながる恐れがあります。反対に、人材育成にしっかりと力を入れると、競合他社との差別化が実現できるため、採用市場では優位に立ち回ることが可能です。


公的な支援制度を利用する

厚生労働省では、建設業の人材育成に向けた施策としてさまざまな取り組みが行われています。「工業高校等への出前講座」「現場見学会にかかる経費の助成」「技能訓練や訓練期間中の賃金助成」といった制度を活用することで、中小の企業でも人材育成にしっかりと力点を置けるようになるでしょう。

また、「賃金体系や研修制度等の雇用管理制度を導入した場合に対する助成」など、システム上の改革においても一定の支援制度を活用することができます。事業主としては、こうした公的な制度にアンテナを張っておくことも重要な責務といえるでしょう。


人材育成に向けた人的リソースを確保する

人材育成には、育成を担当する管理者のリソースも必要となります。管理者が現場の業務に追われてしまえば、育成に手が回らないという事態が生じ、組織の未来に十分な投資をすることができません。

そのため、工期の調整なども含めて、組織全体で人材を育成していく環境を整えることが重要です。

キャリア・スキルアップ支援を進めていく

建設業の大きな課題となっているのが、体力的なピークを越えた中高年人材の活用です。ここでは、中高年人材のキャリアの課題と、打開策について詳しく見ていきましょう。


建設業における中高年人材の現状

建設業界においては、中高年人材の活用が特に難しいとされています。実際のところ、現場仕事における給与体系は、体力の限界を迎える40代がピークとなるケースが多いです。

つまり、「現場で稼働できるかどうか」が給与を決める基準となってしまい、個人の技能やマネジメント能力といった経験値が反映されにくいということです。この状態では、中高年人材のスキルが宝の持ち腐れとなってしまい、組織力の強化に生かすことができません。

さらに、そうした先輩従業員のキャリアを見て、若手の人材が将来性を見出せなくなってしまう場合もあるでしょう。その結果、若い従業員の離職につながるという悪循環が生じるリスクもあるのです。

新たな人材を受け入れるという点でも、中高年人材のキャリア形成は重要な課題といえるでしょう。


中長期的なキャリア支援が必要

人材のキャリア形成については、場当たり的な施策ではなく、中長期的な視点に立った支援が求められます。一人の人材が入社してから退職するまで、しっかりと具体的なキャリア形成を描けるように制度を整えることが、企業に求められる役割といえるでしょう。

国土交通省が推進している「建設キャリアアップシステム」は、工事に関わる技能者の資格やスキル、就業履歴などのデータを収集・蓄積できる仕組みです。このシステムにより、データのうえから人材の客観的な評価や給与待遇の判断、スキルアップ計画などが行えるようになります。

キャリアアップシステムの導入を実現すれば、キャリア形成を前向きに描きやすくなり、若手の人材に魅力を感じてもらえるきっかけとなるでしょう。


●記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建築業界のDXはどのように進めていくべき?

A:急進的な改革を推し進めるよりも、実現可能な施策から丁寧に取り組み、現場の従業員の理解を得ていくことが大切です。自社の実情に合わせて「顧客管理システムの導入」「資料のペーパーレス化」など、実現性と効果の高い取り組みを見極めましょう。

Q:建設業界が抱えるキャリア形成の課題は?

A:現場の業務では、体力的なピークを越えた中高年人材のキャリア形成が大きな課題となっています。若手の人材に将来性を感じてもらうためにも、中高年人材の経験を生かせる場を構築し、組織力の強化につなげていくことが大切です。

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