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2024年問題だけじゃない!来たる2025年問題|住宅業界が抱える課題は「人材不足」と「働き方」

2024年問題とは、働き方改革に伴う「長時間労働の制限」によって、主に運送業や建築業における深刻な人手不足がもたらす諸課題の総称です。そのうえで、続く2025年には、「2025年問題」と呼ばれる大きな課題が日本全体を待ち受けています。
 
今回は、「住宅業界から見た2025年問題」をテーマに、具体的に直面する課題の内容と、とるべき対策について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.人材不足が深刻化?住宅業界が直面する2025年の課題
  2. 2.超高齢社会による人口減少
  3. 3.長時間労働などの労働環境による影響
    1. 3.1.課題:長時間労働が前提のため人材が集まりにくい
    2. 3.2.解決方法:住宅業界のイメージアップがカギ
    3. 3.3.若い人材をきちんと育成する時間を確保できない
    4. 3.4.課題:定着率の低下
    5. 3.5.解決方法1:待遇の改善
    6. 3.6.解決方法2:労働生産性の向上
  4. 4.デジタル化が思うように進んでいない
    1. 4.1.課題:事務処理におけるデジタル化の遅れ
    2. 4.2.シンプルなITツールを用いて現場の抵抗感をなくす

人材不足が深刻化?住宅業界が直面する2025年の課題

2023年現在、住宅業界においては建設業における時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」が注目を集めています。2024年4月1日には、建設業をはじめとするいくつかの業界で、それまで猶予されていた時間外労働の上限規制が適用されます。

それによって、人手不足や人件費の高騰が主要な課題となっているのです。そのうえで、さらに日本を待ち受けているのが、「2025年問題」という大きな壁です。

2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者となることで、労働人口の減少や社会保障費の負担増が深刻化する問題のことです。2025年問題は特定の業界に限られた話題ではなく、社会や経済のあらゆる分野に影響を及ぼすテーマとされています。

そのなかでも、住宅業界においては、慢性的な人手不足や長時間労働といった人材の面で課題が大きくのしかかってくると考えられています。

超高齢社会による人口減少

2025年は約800万人と言われる団塊の世代が75歳以上となり、多くの地域で大幅に労働人口が減少するとされています。超高齢化社会の到来により、膨れ上がる社会保障費を確保するのがますます難しくなり、限られた現役世代に大きな負担がのしかかるなどの懸念が生じています。

一方で、老朽化や自然災害による建物やインフラへの被害は増加しており、メンテナンスや修繕工事に必要な人材は慢性的に不足しがちです。2025年を迎えるころには、建設業においても、ベテランの職人が大量に退職することが見込まれるため、人手不足はますます深刻化していくといえるでしょう。

こうした課題に対応するためには、2025年を迎えるまでに、しっかりと担い手の確保を実現する以外にありません。それには、建設業界全体のイメージアップを図り、多様なキャリアを形成できる仕組みづくりが必要といえます。

長時間労働などの労働環境による影響

建設業が大きな課題として抱えるのが、「長時間労働に頼った労働力の確保」という現状です。ここでは、建設業における労働環境の課題と、解決方法について見ていきましょう。


課題:長時間労働が前提のため人材が集まりにくい

国土交通省の『最近の建設業を巡る状況について』という資料によれば、建設業は他の業種と比べて労働時間が長く、休暇も少ない傾向にあります。

たとえば、令和3年時点のデータでは、全産業の平均よりも年間実労働時間で346時間、年間出勤日数で30日も上回っていることが明らかにされています。労働環境が改善されなければ、若手の人材が集まりにくくなり、人手不足がますます加速してしまうといえるでしょう。

特に現在では、仕事選びの基準も多様化しています。「給与・待遇や将来性」といった基本的な項目だけでなく、「休日・休暇の多さ」「職場の雰囲気・人間関係」などが重視されるケースも増えているのです。

そのため、長時間労働は大幅なマイナスイメージにつながる原因となります。


解決方法:住宅業界のイメージアップがカギ

こうした課題を解決するためには、求職者に対して住宅業界全体のイメージアップを図る必要があります。「きつい」「プレッシャーが大きい」というマイナスイメージとともに、長時間労働による過酷な環境も改善していくことで、若い人材からの信頼度を高めていかなければなりません。

個々の事業者としてできることは限られていますが、給与体系の改善や自社の労働環境の改善を行ったうえで、自社の採用サイトなどでしっかりと社内の状況をアピールしていくといいでしょう。


若い人材をきちんと育成する時間を確保できない

建設業界においては、職人たちの高齢化が進んでおり、若手を育成するだけの時間的な余裕を十分に確保できないのも大きな課題となっています。専門的な職種であるほど、一人前の人材を育てるには時間がかかってしまうため、担い手不足はより深刻化していくと考えられています。


課題:定着率の低下

建設業界では、前述のように長時間勤務などによる労働環境が、若手の人材を集まりにくくさせている原因と考えられます。そのうえで、建設業界では離職率の高さも懸念されているポイントです。

職人の定着率が低くなると、せっかく育成コストを割いても思うような成果につながらず、企業はますます疲弊していってしまうという悪循環が生じます。


解決方法1:待遇の改善

定着率の向上に向けて、やはり重要となるのは待遇の改善です。休憩時間や休日の確保、福利厚生の充実、仕事に見合った賃金の制定を行うなど、基本的な事柄から着手していく必要があります。

特に労働時間や休暇については、業界の慣習にとらわれないためにも、現場で働く従業員の声に耳を傾けることが大切です。


解決方法2:労働生産性の向上

労働生産性の向上は、人手不足を直接的に解消する重要な観点といえます。業務のムダを徹底的に省き、労働生産性を向上させることで、人材育成に傾けられる余力が生まれます。

そのためには、工期設定の適正化やIT技術の活用が有効な方法です。たとえば、ドローンを活用した3Dでの測量やBIMツールの活用により、生産性の向上を実現する企業も増えてきています。

デジタル化が思うように進んでいない

建設業界における重要な課題の一つに、「デジタル化への適応」が挙げられます。建設業界においても、主に測量や設計といった分野ではデジタル化が進められているものの、その他の部門についてはなかなか実現が進んでいかないのが現状です。


課題:事務処理におけるデジタル化の遅れ

たとえば、事務処理では許可申請をはじめとした各種申請書や設計図などの膨大な書類が必要であるため、なかなかペーパーレス化が進んでいきません。連絡手段も電話やメールが主流であり、資料の送付にはFAXが使われているなど、大量のアナログ業務が存在している状態です。

生産性を向上させるには、これらの業務をデジタル化し、効率的に処理できる状態を実現するのが近道といえるでしょう。しかし、業界全体としてはITを苦手とする人材も多く、アナログ業務の入れ替えに苦労している企業が多いのも現状です。


シンプルなITツールを用いて現場の抵抗感をなくす

ITツールを導入する際には、現場の心理的な抵抗感を軽減させることが重要です。そこで、必要な機能だけが搭載されたシンプルなITツールを選定し、誰でも簡単に操作できることを体感してもらうのがポイントとなります。

ツールによっては、高齢者人材でも抵抗なく扱えることを強みにしたものもあるため、自社の実情に応じて適したものを選ぶといいでしょう。ITツールの導入が成功し、社内にデジタル化への意識が浸透していけば、着実に生産性の向上にもつながっていくはずです。


●記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:2025年問題とは?

A:2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者になることで生じるさまざまな問題の総称です。主な課題としては、「増加する社会保障費の負担」や「労働人口の減少」が挙げられます。

Q:建設業界における2025年問題の課題は?

A:建設業界全体としては、長時間労働などのマイナスイメージを払拭し、多様な人材に関心を持ってもらうことが重要な前提となります。そのうえで、個々の企業は待遇の改善や生産性の向上に努め、働きやすい環境を整備していくことが重要です。

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