人材採用

建築業界の人材採用・人材不足問題が深刻化? 住宅会社が押さえておきたい対策案

建築業界の人材採用・人材不足問題が深刻化? 住宅会社が押さえておきたい対策案

労働人口の減少による人手不足は、国内のさまざまな業界で共通の課題となっています。なかでも、建築業界における人材難は顕著であり、安定的な人材の確保に多くの企業が頭を悩ませている状態です。

今回は建築業界が抱える課題を確認したうえで、個々の住宅会社がどのように対策を講じていくべきかについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.人材不足・育成における現状の課題
    1. 1.1.採用難による人材不足
    2. 1.2.不十分な育成環境
    3. 1.3.若手人材の離職率の高さ
  2. 2.採用にかかる費用は大きい
  3. 3.長く働いてもらうためには人事評価制度の見直しが肝心
    1. 3.1.課題:職種や働き方に合わせた評価ができていない
    2. 3.2.課題:評価がモチベーションにつながらない
    3. 3.3.課題:個々の評価が不透明になりやすい
  4. 4.工数削減と効率化を狙った業務マニュアルのデータベース化
  5. 5.派遣社員や代行サービスも検討してみよう
    1. 5.1.業務内容は限定される
  6. 6.代行サービスの活用も検討してみよう

人材不足・育成における現状の課題

現在の日本では労働人口の減少によって、さまざまな業界で人材不足による課題が発生しています。とりわけ建築業界における人材不足は深刻であり、未来を担うはずの若手の人材を確保することができていません。

ここではまず、現在の建築業界が抱える課題を改めて整理してみましょう。

採用難による人材不足

近年の建築業界では、有効求人倍率が高止まりしている状態であり、慢性的な人手不足が続いている状態です。特に建築業界は長時間労働などがピックアップされやすく、働き方改革が進む現代にあってはデメリットが強調されてしまう面もあります。

さらに、2024年からは建築業においても「時間外労働の上限規制」が適用されるため、ますます人材確保のハードルが高くなると考えられます。

不十分な育成環境

せっかく人材を採用できても、社内に育成環境が整っていなければ、若手の力を引き出すことはできません。建築業界では従業員の高齢化が進んでいることもあり、十分な教育システムを構築できないまま職人が引退し、技術や価値観が継承されないというケースもあります。

若手人材の離職率の高さ

厚生労働省が公表している「令和3年 雇用動向調査」によれば、建設業の離職率は9.3%となっています。全産業の離職率が13.9%であるため、比較的低い傾向が見られます。

しかし、年齢別に見ていく場合には「仕事での負担が大きい」「労働環境の整備が不十分」「育成システムが未成熟」といった性質が重なり、建築業界では若手の人材の離職率が高くなる傾向にあります。特に現代では、転職に対する心理的なハードルも以前と比べて低く、優秀な人材がステップアップのために他業界を志すというケースは少なくありません。

企業が明確な将来性やキャリアプランを示せなければ、優れた人材を流出させることにもつながるため、業界全体としてイメージアップを図る必要性が生まれています。

採用にかかる費用は大きい

離職率が高くなれば、企業としては大きなダメージを受けてしまいます。具体的には、「採用・教育コストの負担が増える」「自社にノウハウが蓄積されない」「企業全体のイメージダウンを招く」「既存の従業員の負荷が大きくなる」といったさまざまなデメリットがあります。

特に人材採用にかかるコストは大きく、決して軽視することはできません。転職サイトへの掲載費用、人材紹介会社の手数料、育成コストなどを踏まえると、少なくとも1人あたりに100万円以上の費用がかかっていると想定されます。

組織としての体力を保つには、人材を採用することだけでなく、早期離職を回避して定着率を高めることも重要といえるでしょう。

長く働いてもらうためには人事評価制度の見直しが肝心

これまで見てきたように、中長期的な視点に立てば、従業員には長く働き続けてもらったほうが採用コストは抑えられます。そのためには、「多様な働き方を実現する」「魅力的なキャリアパスを用意する」といった手段が考えられますが、まずは基本を見直すことが大切です。

待遇面に関する不満を解消するためには、人事評価制度を見直し、個人の能力や努力がきちんと収入に反映される仕組みをつくる必要があるのです。適切な人事評価を行うことができれば、従業員には「会社の制度が信頼できる」「自分を見てもらえている」という実感が生まれるため、会社への帰属意識が高まっていきます。

ここでは、建築業界における評価制度の課題と解決策について見ていきましょう。

課題:職種や働き方に合わせた評価ができていない

建築業では現場での作業から事務職まで幅広い職種が存在します。職種によって求められる能力や働き方は異なるため、それぞれの特性を考慮した評価基準を設定しなければなりません。

たとえば、現場の従業員であれば作業のスピードと効率性、安全に対する取組みなどを正しく評価する必要があります。一方、事務職であれば処理能力やコミュニケーションスキルなどが評価の対象となります。

課題:評価がモチベーションにつながらない

従業員からすれば、自身の成果や努力が正しく評価されているかどうかがモチベーションを大きく左右します。そこで、管理職者や現場のリーダーを対象にフィードバック研修を実施し、適切な方法を学んでもらうのも一つの方法です。

個別の従業員に対して効果的なフィードバックが行えるようになれば、自身の強みや弱みを把握し、仕事に対するモチベーションが高まり、組織の活性化につながります。

課題:個々の評価が不透明になりやすい

人事評価制度を運用する際には、適切な仕組みを用いるとともに、透明性を持たせることが重要となります。なぜなら、「どのような頑張りが評価の向上につながるか」が見えない状態では、従業員のモチベーションが引き出されないためです。

そのため、評価基準を明確にしたうえで、評価のプロセスも細かく共有しながら、透明性と公正性を保たせることが大切です。また、従業員にも広く意見を求め、評価制度の見直しを続けていくことも重要となります。

工数削減と効率化を狙った業務マニュアルのデータベース化

建築業界は他業界と比べてアナログな業務が多く、高齢化によってITに苦手意識を持つ人材も多いのが特徴です。たとえば、紙での資料管理から脱却できないまま、資材の無駄遣いや非効率的な情報共有を続けているケースも少なくありません。

しかし、若手の人材に残ってもらうためには、ITの活用による工数削減と業務効率化は避けて通れない課題といえます。まずは既存の業務マニュアルを整備し、データベース化して削減や簡略化ができるプロセスがないかをチェックしましょう。

そのうえで、業務の特性に合わせたITツールを導入し、業務の標準化やノウハウのスムーズな共有を行うことが大切です。なお、初めてITツールを導入する際には、使い道を明確にして、できるだけシンプルな設計のものを選ぶのがコツです。

多機能なITツールは便利である一方、操作を覚えるのが難しく、不慣れな従業員を混乱させてしまう面もあります。過不足のないシンプルなITツールを見極めるためにも、業務マニュアルは丁寧に見直しておきましょう。

派遣社員や代行サービスも検討してみよう

一時的に人手が必要なときは、派遣社員やスポット採用を検討してみることも重要です。ここでは、臨時的な人員補強を行う際の注意点を確認しておきましょう。

業務内容は限定される

建設業では、労働者の安全と雇用を守るために、「建設業務」の人材派遣が法律で禁止されています。建設業務とは、「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務」のことです。

つまり、現場でのほとんどの作業は禁止とされているため、実質的に人材派遣を利用できるのは以下の業務ということになります。

建設業で人材派遣を利用できる業務

  • 事務作業
  • CADオペレーション
  • 施工管理業務


派遣社員に禁止されている業務をさせた場合、派遣元と派遣先のそれぞれにペナルティが発生するので注意が必要です。

代行サービスの活用も検討してみよう

人材派遣では、人手不足を解消できる分野が限られてしまうのが現状であり、現場での業務負担を減らすにはそのほかの方法にも目を向ける必要があります。たとえば、現地調査を外部の企業が引き受ける「現調代行サービス」や、パイプや継手の加工を代行してもらえる「配管加工サービス」などを利用するのも一つの方法です。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建築業界が人手不足に陥りやすい原因は?
A:
さまざまな要因が考えられますが、業界全体として「仕事がキツい」「労働時間が長い」「育成システムが整っていない」という負のイメージがつきまとう点も大きく関係しています。また、職人の高齢化によって、技術や価値観の継承も難しいケースが増えています。

Q:建築業界の人事評価制度はどのように見直すべき?
A:
社内にさまざまな職種の従業員が存在するため、各職種に合わせた評価制度を丁寧に構築する必要があります。そのうえで、「透明性の確保」「効果的なフィードバック」などにより、評価がモチベーションにつながるような仕組みを整えることが大切です。


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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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