住宅営業を成功させる追客体制とは? 必要な要素とポイントを解説
不動産営業における「追客」とは、過去に接点を持った顧客に対して、再びアプローチをかける行為を指します。追客によって適切にきっかけをつくることができれば、来店や成約につながる可能性があるため、住宅の営業では重要な活動の一つです。
今回は住宅営業を成功させるうえで、追客で必要となる要素と押さえておくべきポイントをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.追客がうまくいかないパターン
- 1.1.迅速な接触ができていない
- 1.2.追客対応が属人化してしまう
- 1.3.顧客のニーズに合った対応ができない
- 2.理想の追客体制の構築に必要なポイント
- 2.1.顧客管理
- 2.2.定期的な接触
- 2.3.事務作業の効率化
- 2.4.インサイドセールスによる効率的な分担
- 3.注力すべきは「育客」
- 4.追客を上手に行うコツ
- 4.1.ITツールをうまく使いこなしそう
- 4.2.外部のサービスも有効に活用しよう
- 5.ロイヤリティーを高めるためにもいま一度追客体制の見直しを!
- 6.この記事を監修した人
- 6.1.三輪 歩己
追客がうまくいかないパターン
まずは、住宅営業の追客でありがちな失敗パターンについて確認しておきましょう。
迅速な接触ができていない
追客においては、顧客の興味・関心が冷めないうちに適切なアプローチを行うことが重要です。タイミングを逃せば効果が大きく弱まってしまいます。メールなどを送ってもなかなか返信がこない場合は、初動対応が遅れている可能性に目を向ける必要があります。
営業担当者の業務が多すぎるあまり、顧客への迅速な対応ができない状態が続けば、追客をしても期待したような成果を得るのは難しくなるでしょう。
追客対応が属人化してしまう
住宅営業においては、顧客との一対一でのやりとりが多くなるため、どうしても活動が属人化しやすい面があります。実際に顧客対応した担当者以外のメンバーが、まったく状況を把握できていないというケースもめずらしくありません。
属人化している状態が続けば、人員が欠けたときに引継ぎが行えず、せっかく得られた顧客データを活用できなくなってしまいます。また、成功体験や失敗事例なども共有されないため、組織内にノウハウが蓄積されず、成長の機会を逃すことにもつながります。
追客体制を整えるのであれば、具体的な方法やタイミングをきちんとマニュアルとして残し、適宜アップデートしていく作業が必要です。
顧客のニーズに合った対応ができない
追客は顧客を来店や成約につなげるための活動であり、幅広いターゲットを集める「集客」とは目的が異なります。顧客1人ひとりのニーズをしっかりと把握し、相手に合わせた方法で適切なアプローチを行う必要があるのです。
しかし、実際にはデータの収集や分析が間に合わず、顧客のニーズに合った対応ができていないというケースも少なくありません。その結果、せっかく追客活動を行っても成果につながらず、リソースを非効率的に消費してしまうのもよくある失敗パターンです。
理想の追客体制の構築に必要なポイント
効率的に追客を行うためには、営業活動の延長線として取り組むのではなく、会社としてきちんと追客体制を構築することが大切です。ここでは、追客を行える組織づくりにおいて必要なポイントを解説します。
顧客管理
1人ひとりに合ったアプローチを実現するには、顧客データを適切に収集・管理し、分析したうえで活用できる仕組みを整えることが大切です。そのために役立つのが、「顧客管理システム」(CRM)の導入です。
近年では、顧客管理を目的としたツールが次々と開発されており、不動産業界でのサービスに特化したものも取り扱われています。たとえば、「膨大な顧客データの一元管理」「見込み客への自動送信機能」「コミュニケーションツールとの連携」などにより、顧客管理業務の効率を向上させてくれるのが利点です。
定期的な接触
追客においては、良い感触のある顧客と定期的に接触し、接点が途切れないようにすることも重要です。取り扱う顧客数が多い場合は、定期的にやりとりを続けるだけでも大きな負担が発生するため、十分な人的リソースを割く必要があります。
事務作業の効率化
効果的に追客を行うためには、力を入れるべきコア業務と、効率的に片づけるべき事務作業とをしっかりと区別し、人材や時間の節約をすることも大切です。顧客を直接相手する業務や、最終的な後押しをする業務には、できるだけ時間や資源のゆとりを持たせて臨む必要があります。
そのため、ルーティンワークになりやすい事務作業はできるだけ効率化して、全体としての負荷が増えないように工夫することが大切です。
インサイドセールスによる効率的な分担
「インサイドセールス」とは、顧客訪問や対面によらず、電話やメールなどを活用して行われる営業のことです。住宅営業においては、購入・契約につながる可能性が高い見込み客に絞り込んで、重点的にアプローチをかけることも必要となります。
一方で、潜在的なニーズを持つ顧客も放置することはできないため、どのようにリソースを分配すればよいかが悩ましいところです。そこで重要となるのが、インサイドセールスの考え方です。
インサイドセールスでは、「初回対応からアポイントメント獲得まで」のプロセスを内勤型営業チームが担うことで、訪問型営業チームには購買意欲の高い見込み客に専念してもらいます。それによって、限られたリソースを効率的に活用するのが狙いです。
注力すべきは「育客」
住宅業界においては、既存顧客との信頼関係を深める「育客」の重要性に注目が集まっています。育客のポイントは大きく分けて2つがあります。
一つは「目の前の顧客を成約に結び付ける」という点であり、もう一つは「口コミや紹介などにより新たな顧客につなげる」というものです。育客によって自社のファンになってもらうことができれば、「知人を紹介してもらえる」「OB顧客として住宅展示会などに協力してもらえる」「将来的にリフォームも任せてもらえる」などのさまざまなメリットが生まれます。
そのため、長期的な利益を考えるのであれば、育客によって1人の顧客と深い信頼関係を築くことも重要な取組みといえるでしょう。育客を行ううえでも、まずはきちんと組織の体制を構築することが大切です。
初回対応は事務的処理、定期追客はインサイドセールス、トスアップ後は営業が手厚くフォローなど、顧客対応を段階別に分けて効率化するのが基本となります。
追客を上手に行うコツ
中小規模の住宅会社では、限られたリソースをいかにして効率的に活用するかが成功のカギとなります。追客がうまくいっている会社では、外部のリソースを上手に活用し、自社の従業員はコア業務に専念させているというケースも多いです。
どのようにリソースを最適化し、追客を行えばよいか、上手に取り組むためのコツを紹介します。
ITツールをうまく使いこなしそう
顧客管理や顧客対応をスムーズに進めるために、ITツールをうまく使いこなすことも大切です。たとえば、MAツールを活用することで、追客業務にまつわる様々な作業を省力化できます。
MAとは「マーケティングオートメーション」の略語であり、マーケティング業務の自動化を指します。MAツールでは、「顧客データの管理」「データの高度な分析」「有望な顧客リストの抽出」「自動によるメルマガ配信」「各種テンプレートの用意」といったさまざまな業務の自動化が可能です。
追客業務の工数が削減されるとともに、分析によって効果的な施策を立案することもでき、マーケティング活動の効率が大幅に向上します。多くの顧客を相手にする不動産業界との相性もよいため、必要に応じて導入を検討しましょう。
外部のサービスも有効に活用しよう
追客の効率性を高めるには、前述のようにインサイドセールスによる分担が重要なカギを握ります。自社のリソースに限りがある場合は、インサイドセールスの業務を外部のサービスに委託するのも一つの方法です。
たとえば、潜在顧客へのアプローチなどのトスアップまでをアウトソーシングし、自社の営業担当はその後のフォローに注力するといった具合です。見込み顧客にしっかりとコストや人手を割くことで、手厚いサービスの提供が可能となり、顧客満足度を高めることにつながるでしょう。
ロイヤリティーを高めるためにもいま一度追客体制の見直しを!
販売単価の小さな業界と比べて、住宅営業では新規顧客を獲得するハードルが高いため、1人ひとりに対するきめ細やかなアプローチが特に重要となります。売上を向上させるには、新規顧客を増やすだけでなく、追客への注力が欠かせない課題となるのです。
まずは自社の人員配置や管理システムを見直し、丁寧に追客体制を構築することから力を入れる必要があります。そのうえで、必要に応じてMAツールや外部のインサイドセールスサービスを活用し、リソースを効率的に配分することにも目を向けてみるとよいでしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:住宅営業における追客の課題とは?
A:住宅営業では、営業活動が属人化しやすい面があり、ノウハウの蓄積や情報共有が不十分になりがちなのが大きな課題といえます。また、営業担当に負荷が集中して「迅速な対応ができない」「1人ひとりに合った対応ができない」などの課題も解消する必要があります。
Q:住宅営業の追客体制はどのように構築すべき?
A:まずはスムーズな顧客管理を行うために、MAツールやCRMなどの導入を検討してみましょう。また、自社の人材をコア業務に専念させるために、インサイドセールスを外部サービスに委託するのも一つの方法です。
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この記事を監修した人
三輪 歩己
不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)、 相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント
名古屋市立大学薬学部卒。 大学在学中に不動産鑑定士2次試験合格。日本土地建物株式会社にて、 不動産鑑定や不動産証券化業務に従事。その後外資系不動産ファンド等にて 物件購入・管理・経営企画等業務に従事。約20年間の鑑定・宅地建物取引業の 経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。 同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として 活動を行う。