住宅省エネキャンペーンの継続が決定!? リフォーム・リノベーションの追い風が継続
持続可能な社会の実現に向けて、近年では住宅業界でも省エネに関する動きが積極的に見られるようになりました。国による代表的な取組みとして挙げられるのが、「住宅省エネキャンペーン」です。
これは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、家庭における省エネを推進することを目的に創設された制度であり、省エネ性能に優れた住宅の購入・改修を強く後押しする内容となっています。今回は住宅省エネキャンペーンの基本的な仕組みと、2024年以降の動きについて見ていきましょう。
目次[非表示]
3つの補助事業の総称「住宅省エネキャンペーン」とは?
「住宅省エネキャンペーン」は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた施策の一つであり、住宅の省エネ性向上を推進するために創設された以下3つの補助事業の総称です。
|
正式名称は「住宅省エネ2023キャンペーン」であり、2023年から新たに導入されました。ここではまず、それぞれの基本的な内容を確認しておきましょう。
こどもエコすまい支援事業
こどもエコ住まい支援事業とは、子育て世帯(申請時点で18歳未満の子を有する世帯)と若者夫婦世帯(申請時点においていずれかが39歳以下である夫婦世帯)に対し、以下の金額の補助を行うという制度です。
|
ただし、2023年分の申請受け付けはすでに終了しているため注意が必要です。
先進的窓リノベ事業
先進的窓リノベ事業とは、窓の断熱改修を行った場合に、補助対象工事の内容に応じて定額(一戸当たり5万~200万円まで)が補助される仕組みです。窓リノベ事業者が申請して交付を受け、その分を施工主と合意した方法で還元する決まりとなっており、基本的には工事の請負契約の代金に充当します。
給湯省エネ事業
給湯省エネ事業とは、高効率給湯器を設置する際に、導入する機器に応じた補助金が支給されるという制度です。
設置する給湯器 |
補助額 |
家庭用燃料電池(エネファーム) |
15万円/台 |
電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器(ハイブリッド給湯器) |
5万円/台 |
ヒートポンプ給湯器(エコキュート) |
リフォーム需要は追い風が継続
これから先、人口減少や高齢化の影響で、新築住宅の販売難易度はこれまでよりも高くなっていくと考えられています。物価高による消費の冷え込みや、建築業界における人材不足に伴う人件費の高騰など、新築住宅の売り上げについては向かい風となるような状態が続いています。
一方で、リフォーム市場に目を向けると、今後はますます需要が伸びていく可能性が秘められているのも確かです。もっとも大きなポイントは、住宅に対する価値観や制度の変化です。
従来と比べて新築至上主義のような価値観は落ち着きを見せており、国も「スクラップ&ビルド」方式から脱却するために、中古住宅の流通促進に力を入れています。それに伴って、住宅市場においては中古住宅の需要が増加傾向にあるのです。
また、超高齢化に伴うバリアフリー化の需要も上昇しています。こうした社会情勢によって、リフォームは今後も堅調な伸びを見せていくと考えられています。
カーボンニュートラルを目指し、国は引き続き省エネに注力する方針
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を実質的に「ゼロ」にする取組みのことです。2020年に政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」では、2050年までに脱炭素社会を実現することが目標とされました。
これに対応して、具体的な取組みの方向性として策定されたのが、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。グリーン成長戦略では、取組みが不可欠な分野として、次の14のテーマが設定されています。
|
30年計画で国を挙げて取り組む大規模な施策ということもあり、今後はあらゆる分野において省エネに対する積極的な働きかけが続けられていくと予想されています。14の分野には「住宅」も含まれており、人々の暮らしに密接な要素であることから、この先も国による支援や補助が大々的に行われていくと考えられるでしょう。
住宅会社としては、こうした動きを先取りして、リフォームや省エネに対する自社のアプローチを明確にしておくことが大切となります。
【最新】住宅省エネ2024キャンペーンの仕組み
住宅省エネキャンペーンは、「2023」が名称に含まれていたように、当初は1年間と期間を区切って導入されたものでした。しかし、こどもエコすまい支援事業の申請額が早々に予算上限に達するなど、施策が大きな効果につながっていたため、終了を前にして継続を望む声が強くありました。
そして、2023年11月10日、令和5年度補正予算案が閣議決定され、住宅省エネ2023キャンペーンの後継事業として、以下の4つの事業が盛り込まれました。これによって、「住宅省エネ2024キャンペーン」として引き続き実施される予定となっています。
1.子育てエコホーム支援事業 |
ここでは、新たに導入される子育てエコホーム支援事業の内容を中心に、住宅省エネ2024キャンペーンの仕組みについて解説します。
基本的な内容
基本的な施策の目的や方向性、運用の方法などは、住宅省エネ2023キャンペーンのものが引き継がれます。各後継事業の交付申請は「2024年3月以降」の受け付け開始が予定されているので、今後公開される情報をチェックしておきましょう。
なお、先進的窓リノベ事業や高効率給湯器の導入に関する補助金は、まだ2023年分のキャンペーンも受け付けが行われていますが、2024年のものと重複して申し込むことはできないので注意が必要です。
子育てエコホーム支援事業
子育てエコホーム支援事業とは、こどもエコすまい支援事業の後継事業として設計されている施策です。制度の基本条件は次のとおりです。
|
そのうえで、利用にあたって各種の細かな条件を満たすことで、以下の補助金が支給されるという仕組みです。
新築
住宅に関する条件 |
補助額 |
備考 |
|
注文住宅の新築・新築分譲住宅の購入 |
長期優良住宅 |
100万円 |
※1※2に該当する場合は補助額が50万円に減額される |
ZEH住宅 |
80万円 |
※1※2に該当する場合は補助額が40万円に減額される |
※1:市街化調整区域
※2:土砂災害警戒区域または浸水想定区域
リフォームについては、対象工事ごとに補助額が決められており、各補助額を合計して計算します。ただし、条件ごとに以下の上限額が設定されており、制限を超える部分については支給されないので注意が必要です。
リフォーム
世帯の属性 |
条件 |
1戸当たりの上限補助額 |
子育て世帯 |
既存住宅の購入+リフォーム(※) |
60万円 |
長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける |
45万円 |
|
上記以外のリフォーム |
30万円 |
|
その他の世帯 |
長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける |
30万円 |
上記以外のリフォーム |
20万円 |
※:売買契約締結から3ヶ月以内にリフォーム工事の請負契約を締結する場合に限る
制度の仕組みを正しく理解して住宅営業につなげよう!
住宅に関する制度は毎年細かく変化していますが、特に現在では「省エネ」に関する優遇政策が強く打ち出されている格好です。2023年に導入された「住宅省エネ2023キャンペーン」も、11月の閣議決定によって2024年も引き続き実施される流れとなりました。
また、全体を通して見れば、中古住宅の流通やバリアフリー化の促進により、リフォームの需要増も大きな傾向として見られます。住宅業界としては、こうした社会の動きに後れを取らないように、きちんと現行の制度をチェックしておくことが重要です。
住宅省エネ2024キャンペーンは、2024年3月から受け付けを開始する運びとなっているので、今後公開される情報を通して、登録事業者の基本的な要件や受け付けのタイミングなどを確認しておきましょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:住宅省エネ2023キャンペーンは継続される?
A:住宅省エネ2023キャンペーンの事業内容は、2023年の補正予算案にも盛り込まれており、11月の閣議決定により2024年も後継事業が行われる運びとなりました。
Q:住宅省エネ2024キャンペーンの内容は?
A:住宅省エネ2024キャンペーンは、こどもエコすまい事業の後継に当たる「子育てエコホーム支援事業」と「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」「既存賃貸集合住宅向けの省エネ化支援事業」の4本立てとなっています。
●関連コラムはこちら
≫ 介護・バリアフリーのリフォーム補助や制度は? 住宅営業の担当者が知っておきたい基礎知識