クリティカルシンキングとは? ロジカルシンキングとの違いと習得のコツ
クリティカルシンキングは、ビジネスにおいて役立つ思考方法の一つです。新たな視点から物事を考え、見落としていたチャンスや課題に気づきを得ることで適切な解決策を導き出します。
しかし、「具体的な考え方が分からない」「ロジカルシンキングとはどう違うのか」などの疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、クリティカルシンキングの基本的な考え方やロジカルシンキングとの違い、クリティカルシンキングを身につけるためのコツなどをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.クリティカルシンキングとは
- 2.ロジカルシンキングとの違い
- 3.クリティカルシンキングの3つの基本姿勢
- 3.1.基本姿勢①:つねに目的を意識する
- 3.2.基本姿勢②:考え方の癖があることを理解する
- 3.3.基本姿勢③:「なぜ?」を繰り返す
- 4.クリティカルシンキングを習得する4つのコツ
- 4.1.①課題を明確にする
- 4.2.②課題を分析し、現状を把握する
- 4.3.③さまざまな疑問を問いかける
- 4.4.④仮説を立てて検証・実践する
- 5.クリティカルシンキングの練習
- 6.まとめ
クリティカルシンキングとは
クリティカルシンキングとは、直訳すると“批判的思考”という意味です。物事を客観的に捉えて、自分の思い込みや前提条件に疑問を持って考えを進めていく思考方法を指します。
物事に対して「なぜそうなるのか」「事実なのか」と疑問や批判的な視点を持つことにより、適切な解決策を導き出すことが目的です。
客観性を持って多角的・論理的に考えることで、物事の本質を理解できるとされています。
営業活動においては、物事を客観的な視点から分析して成約につながらない原因や課題の解決策を導き出す際に役立てられます。
思考の範囲が広くなるため、顧客が気づいていない潜在的なニーズを掘り出し、新たな提案につなげることも可能です。
ロジカルシンキングとの違い
ロジカルシンキングとは、“論理的思考”という意味です。物事に対して筋道を立てて、相手に分かりやすく伝える思考方法を指します。
クリティカルシンキングが客観的な視点で考察する思考方法であるのに対して、ロジカルシンキングは合理性を重視する点が大きな違いです。
ロジカルシンキングの例
- 前提①:AはBである
- 前提②:BはCである
- 結論 :AはCである
ロジカルシンキングは、主張と根拠に筋道が立てられるため、説得力のある説明が可能になります。商談やプレゼンテーションの際に有効なスキルといえます。
ロジカルシンキングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▶ロジカルシンキングとは? 基本の考え方と身につけるためのコツ
クリティカルシンキングの例
- Aの根拠はBである
- Bならば、結論がCになるのは本当か?
- DやEになる可能性はないか?
- 結論がFになる可能性はあるか?
クリティカルシンキングでは、さまざまな視点・角度で掘り下げ、矛盾や漏れをなくします。つねにほかの選択肢を検討するため、適した答えに導くことが可能です。
クリティカルシンキングの3つの基本姿勢
以下では、クリティカルシンキングの基本となる3つの姿勢について見ていきましょう。
基本姿勢①:つねに目的を意識する
思考を深掘りする前に「何のために考えるのか」といった目的を意識することが重要です。
本質からそれた結論にたどり着くことを避けるために、つねにその目的を意識しながら物事の疑問点や矛盾などを漏れなく洗い出すことが大切です。
基本姿勢②:考え方の癖があることを理解する
人の思考には癖があります。自分の思考の癖を知ることも、クリティカルシンキングにおける基本姿勢の一つです。
思考の筋道を書き出したり、あるテーマで自分と他者の思考を比較したりして自分の思考の癖やパターンを理解します。自分を客観視することで無意識な癖によって思考が偏るのを防ぎます。
基本姿勢③:「なぜ?」を繰り返す
クリティカルシンキングでは、物事に対してつねに問い続ける姿勢が必要です。一つの物事に対して「なぜ?」「何が?」「本当に?」と疑問を重ね、本質を得ようとすることが大切です。
ただし、批判的な要素を見つけることがゴールではありません。疑問点を徹底的に洗い出すことで本質的な課題を見いだし、適切な意思決定を行うことが目的です。
クリティカルシンキングを習得する4つのコツ
クリティカルシンキングを身につけるためには、4つのコツを意識した考え方を実践しましょう。
①課題を明確にする
課題を明確にすることは、クリティカルシンキングの基本姿勢①に当たります。
「何のために考えるのか」「状況をどう変えたいのか」など、目的を意識した課題を設定することで、無関係な思考を排除できます。
②課題を分析し、現状を把握する
課題を明確にした後は分析が必要です。
目の前にある事実やデータを基に現状を把握し、物事の要素を整理します。課題の分析は普遍的な事実と根拠となる情報を基に、中立を保ちながら行うことが大切です。
③さまざまな疑問を問いかける
課題と現状を明確にした後は、あらゆる疑問を繰り返し問いかけます。
▼問いかけの例
だから何?(So what?)
現状から新しい結論や推論を見つけます。
なぜそうなのか?(Why so?)
なぜそういえるのか、具体的なデータや調査を基に結論を導き出します。
本当なのか?(True?)
問題に対する本質を問いかけます。原因として考えられる要素を洗い出します。
ほかには?(Anything else?)
すでに出そろった原因と根拠のほかに、何か関係する要素はないかを問いかけます。
④仮説を立てて検証・実践する
事象を深掘りするために、複数の仮説を立てます。
「◯◯の場合は?」「〇〇もあるのでは?」と根拠に基づいて仮説を立て、検証を行うことで物事の本質にたどり着けます。
仮説を実践する際は、「当初の課題を達成できるのか」「実行した解決策にデメリットやリスクはないのか」といった点も確認するのがポイントです。全体像を把握し、事実と照らし合わせて検証・実践することで、思考をブラッシュアップできます。
クリティカルシンキングの練習
「具体的にどのような思考方法をクリティカルシンキングと呼べるのか自信がない」という方は、以下の例を参考にクリティカルシンキングを練習してみてください。
【課題】
営業部門の売り上げ成績が低迷している。売り上げを伸ばすためにはシステムを導入したほうがよいのか。
【現状の把握】
- 営業部門の売り上げ成績が低迷している
- 商品やサービスは変えていない
- システムは導入していない
【仮説】
- 営業部門の成約数が低迷しているのはチーム内の連携がうまくいっていないからではないか
- 営業担当者間の連携がうまくいっていないのは体制が整っていないからではないか
- 部門内の連携強化のためにシステムを導入したほうがよいのではないか
- 新たな商品・サービスの展開が必要なのではないか
【仮説を基にした検証】
- そもそもチーム内の連携がうまくいっていないのは営業部門だけなのか? 他部門ではどうなのか
- 新たな商品・サービスの展開で本当に売り上げは伸びるのか
- 競合他社の商品・サービスが影響しているのではないか
- システムの導入によって売り上げ成績にどのような影響があるのか
【仮説の検証結果】
- システムの導入によってチーム内の連携が強化された部門もある
- 市場や競合他社による影響は考えられなかった
- 消費者がインターネットで情報を収集し、購買行動が変化していることが分かった
【導き出せる解決策】
- システムを導入して営業担当者のスキルの平準化と教育体制の強化を図る
- インターネットを活用したアプローチ手法を取り入れる
クリティカルシンキングのポイントは、仮説に対する疑問を問い続けることです。あらゆる視点から課題の原因を考えることで、思い込みや推論ではなく、より適した解決策を導き出せます。
まとめ
現状の課題を抽出し、適切な解決策を導き出すためにはクリティカルシンキングが役立ちます。
クリティカルシンキングを実践すると自分の考えや思考に対して、つねに疑問を持ち、客観的な視点で問いかけることで、物事の本質を理解したうえでの意思決定が可能です。
工務店・ビルダーの営業活動においても、商談やトラブルが起きた際にどのような思考回路で解決策を出すのかといったプロセスが必要です。
営業活動をより効果的に行うために、クリティカルシンキングの習得を図ってみてはいかがでしょうか。