モデル住宅を『見せる』ことから『暮らしが見える』情報発信へと視点を変える集客策を
コロナ禍の2年半の間にお客様の住まいづくり行動が大きく変化しました。
例えばコロナ禍以前は総合住宅展示場を訪れる場合、事前にネットで予約するお客様は15%(増加傾向にはありましたが)程度であったものが60%程度にまで上昇しました。また、総合住宅展示場訪問時に、観て回るモデル住宅数は3.5棟から、1.3棟へ減少しました(ハウジングラボ調査データ)。
このことはお客様が事前に訪問するモデル住宅を「審査して絞っている」ことを物語っています。このような傾向から集客策を考える場合には先ず、ホームページやSNS等を使った情報発信力を高めておく必要があります。
集客系の情報発信の「量と質」について、「量」は何とか努力で対応できると思いますが、発信する情報の「質」がポイントになってきます。
お客様視点で考えると実物の住宅を観に行く場合、「総合住宅展示場のモデル住宅」、「単独住宅展示場のモデル住宅」、「完成住まいの現場見学会」等の中から選択して見学に行くとして、どこで何が「体感体験」できて、自身の住まいづくりにどのような「メリット」があるのかという具体的な情報が欲しいということになります。
多くの会社では集客時に、住宅のハードとプラン、デザイン等で自社住宅を訴求(ローコスト住宅では価格も)しようとしています。実はこの視点では他社と決定的な差別化した内容がお客様へ伝わるとは考えにくく「行ってみたい」1社に選ばれる確率はさほど高くはありません。
従来とは発想を変えて「モノからコトへ」という視点で考えれば「モデル住宅」という「モノを見せる」という発想から、そこでのお客様ご自身の新しい「暮らしが見える」という、暮らし視点の情報提供で「何が手の入るのか」というお客様メリットを具体的に提示できます。
「モノ視点」の他社と「暮らしのコト視点」の自社との差は大きく、見学したい先として選ばれる確率は高くなります。「暮らしのコト視点」よって触発されて、ご来場される方の住まいづくりモチベーションは高く、結果として「集客の質」が上がります。さらにご来場時に異なる視点で他社との差別化を受注活動面で進めることも可能になります。
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集客企画は「量から質」への発想転換がおすすめ
持家着工数の推移(グラフ)を見ても着工数が1970年代にピークアウトして以降、棟数的には漸減傾向が続いています。さらに空家率も13.6%(2021年)と高まり、量的には充足している市場です。
2021年の持家着工数は1960年代前半の水準にまで下がっています。経済の要因で着工数はある程度の範囲で増減はしますが漸減傾向というトレンドは変わらないと思われます。
このような持家市場での集客は従来のように、できるだけ多くのお客様の集客という「量の確保」を追い求める集客の考え方から、自社の受注に直接つながる「質の高い見込客」の集客へとシフトを進めることが求められます。
「モノからコトへ」という発想の集客策
モノづくりをしている住宅会社/工務店はどうしても「モノ」視点に集客策も陥りがちです。
例えば大開口を確保できる構造を有している会社の場合は「リビングに大開口」が設けられることを訴求して集客しようという発想になると思います。
つまり「リビングの大開口」と、それを実現している「構造」というモノ視点です。
お客様は「リビングの大開口」「構造」を手に入れたかったのではなく、「リビングの大開口」「構造」が生み出す「楽しいコト」という「自身と家族の幸せな時間を手に入れた」というのが結果こそが、住まいづくりの本質的な部分です。
このような「コト視点」での集客企画を進めるためには「リビングの大開口」⇒「テラスorウッドデッキ」⇒「バーベキュー」というワンパターンの発想をブレークスルーして、こんなコトも、あんなコトもできるというバリエーション豊かな「楽しいコト」「幸せな時間」もお見せするようにして、お客様ご自身ならどうしたいのか、是非「体感体験」していただきたいというように「お客様の暮らしを中心に考える視点」が必要不可欠です。
このような考え方で集客広告内容も「コト視点」で企画するとお客様が大きく反応します。
「モノからコトへ」の視点で考えるということは、住宅建築の場合、新しい暮らしでは、先ず、どのような「コト」を実現したいのかを考えれば、必然的にこういう「モノ(住宅)」になりましたという自然な流れで住宅受注へ向かうことができます。
「楽しいコト」が外からでも見える集客イベントを
戸建住宅の魅力の一つは「敷地があること」ですから、例えば集客の場のモデル住宅を外から観るだけで「リビングと一体になった外部空間でこんなに『楽しいコト』ができる」と具体的に見て取れる演出はワクワクする暮らしを「モデル住宅」自体から発信させることが可能です。
「楽しいコト」を「モデル住宅自ら発信させる」ことも集客吸引効果としては有効です。
そのためには内外部の家具や、グリーン(鉢植でも可能)、小物/小道具などで十分に設えて「楽しいコトが見える演出」が重要です。
「内外部一体空間で『光と風と緑』を楽しむ暮らし」という質の高い集客事例
EL様は週末開催の完成住まいの現場見学会で、施主のM様のご協力もいただいて「光と風と緑」を楽しむ集客イベントを開催されました。新しい住まいでM様が「実現したいコト」と願っていた「テラスで家族とブランチを楽しむ暮らし」を具体的にお見せし、「体感体験」もしていただくことで「自分ならこうしたい」を触発することができ、実現したい暮らしの重心づくりを来場時の初期段階からお客様とご一緒に具体的に考えていただくことができ、住まいづくりを自然に進めることにもつながりました。
土日の2日間で事前ご予約の9組のご来場者様の内、2カ月以内に3組が受注になり、2組が造成等の土地の手続完了次第契約予定です。また、当日通りがかりで、「楽しそうな暮らし」が見えたため飛び込みで6組がご来場されましたが、当日はご予約のお客様への丹念な応対を営業が行っていたため、手一杯で翌週(M様のご協力のおかげで)に再来場(5組)され、1組が受注、1組が大型増改築受注という成果でした。
集客媒体はSNSとホームページ記事のみです。
集客イベントを実施されたEL様の営業責任者は本気で「テラスで家族とブランチを楽しむ暮らし」を作り込んで外部からも「楽しい暮らし」を観えるようにすることがポイントだったと話されていました。また、「従来の完成住まいの現場見学会に比べて、来場者数は同程度だったが、これほど受注につながるとは思わなかった。営業以外の社員も知恵を出して手伝ってくれて、M様の『実現したいコト』を具体的にお見せすることができ、体感体験していただけたので結果が出たのだと思う」とのご感想でした。
まとめ
「モノが充足した社会」で住宅事業を成功させるためには、「住宅のハード性能や仕様、デザイン、プランの訴求」というモノの売り込みではなく、「新しい住宅がもたらす暮らしの楽しいコト」としてお客様メリットが伝わるように明示する必要があります。「モノからコトへ」の発想の転換です。
従って、これからの集客策は集客組数を追い求める集客企画内容から、集客組数は少なくても確実に受注につながる「集客の質」、つまり新しい住まいで手に入る「暮らしの楽しいコト」が伝わり、住まいづくりのモチベーションを触発されたお客様を吸引する集客策を企画した方が効果的だということです。是非試してみてください。