【建設業向け】独立開業の準備をスムーズに進める6つのポイント
現在、建設業に従事している方のなかには、これまでの経験や知識を生かして独立開業しようと検討している方もいるのではないでしょうか。
建設業で独立開業するには、資金の確保に加えて、事務所や備品の準備、建設業許可の取得、開業届などさまざまな準備が必要です。
開業にかかる業務を滞りなく進めるには、必要な準備や手続きについて確認したうえで、計画的に進めていくことが重要です。
この記事では、建設業で独立開業するまでの必要な準備について解説します。
目次[非表示]
- 1.建設業で独立開業するまでの準備
- 1.1.①開業資金の確保
- 1.2.②経営形態の決定
- 1.3.③専任技術者の資格取得
- 1.4.④事務所・備品の準備
- 1.5.⑤開業届・登記申請
- 1.6.⑥建設業許可の取得
- 2.まとめ
建設業で独立開業するまでの準備
建設業で独立開業する際に必要となる準備は、大きく6つに分けられます。ここからは、それら6つの準備について、詳しく解説します。
①開業資金の確保
建設業を営むには、事務所の準備や機械器具の購入、従業員の確保などに一定の資金が必要です。また、建設業許可を取得する要件の一つに“財産的基礎等”が定められており、一定の資金がなければ開業することはできません。
財産的基礎等の要件は、一般建設業と特定建設業で異なります。
▼建設業許可の要件(財産的基礎等)
区分 |
財産の要件 |
一般建設業 |
以下のいずれかに該当すること
|
特定建設業 |
以下のいずれかに該当すること
|
国土交通省『許可の要件』を基に作成
上記の開業資金のほかに、事務所の賃料や資材の調達費など、開業後の運転資金を十分に確保しておくことが重要です。
(出典:国土交通省『許可の要件』)
②経営形態の決定
建設業を独立開業するには、主に3つの経営形態があります。開業にかかる費用や手続き、開業後の運営にも関わるため、自身の技術・資金力・集客力などに応じて選定することが重要です。
▼建設業の主な経営形態
1.個人事業主
2.法人
3.フランチャイズ
▼各経営形態のメリット
1.個人事業主 |
|
2.法人 |
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3.フランチャイズ |
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各経営形態にメリットがありますが、新規顧客の獲得や事業規模の拡大を考えている方は、社会的信頼を得やすい法人での開業が適しているといえます。
また、個人での住宅商品開発やサービス開発に不安がある方は、ブランド化された住宅商品・技術・ノウハウを活用できるフランチャイズを選択するのも一つの方法です。
③専任技術者の資格取得
建設業を独立開業する際は、建設業の許可の取得が必要です。その要件の一つに専任技術者の設置があります。
工務店・ビルダーなどの建設業を営むには、建設工事に関する専門的な知識が求められます。建設工事の請負契約を適正に締結して履行するために、『建設業法』第7条第2号・第15条第2号では、一定の資格または経験を有した専任技術者の設置を義務づけています。
第七条 二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。 イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。第二十六条の七第一項第二号ロにおいて同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者 ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者 |
引用元:『建設業法』第7条第2号
第十五条 二 その営業所ごとに次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。ただし、施工技術(設計図書に従つて建設工事を適正に実施するために必要な専門の知識及びその応用能力をいう。以下同じ。)の総合性、施工技術の普及状況その他の事情を考慮して政令で定める建設業(以下「指定建設業」という。)の許可を受けようとする者にあつては、その営業所ごとに置くべき専任の者は、イに該当する者又はハの規定により国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者でなければならない。 |
引用元:『建設業法』第15条第2号
専任技術者になるための国家資格は業種によって異なり、建築士や施工管理技士などがあります。
なお、専任技術者の要件については、以下の記事で解説しています。
(出典:e-Gov法令検索『建設業法』/国土交通省『許可の要件』『建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者』)
④事務所・備品の準備
独立開業に必要な資金・資格について準備した後は、経営に必要な事務所と備品を準備します。
建設業の事務所には、オフィスやテナントを借りるだけでなく、自宅の一部で開業するという選択肢もあります。営業活動や建設工事に必要な場所・備品についても準備しておきます。
▼独立開業に必要な場所・備品
- オフィス家具
- 資材
- 車、駐車場
- OA機器(パソコン・電話・プリンターなど)
- 施工に必要な機械器具、資材、管理ツールなど
- 事務用品(筆記用具、印鑑、契約関連書類)
⑤開業届・登記申請
個人事業主として開業する場合は開業届、法人として開業する場合は登記申請を行います。それぞれの主な手続きの流れは、以下のとおりです。
▼個人事業主
1.税務署へ『個人事業の開業・廃業等届出書』を提出する
2.自治体へ『事業開始等申告書』を提出する
3.労働基準監督署・公共職業安定所で社会保険の加入手続きを行う
※従業員を雇用する場合
▼法人
1.基本事項を決定する(社名、事業内容、資本金の額、役員構成、持株比率など)
2.定款を作成して認証してもらう
3.資本金の払い込みを行う
4.法務局へ登記申請を行う
⑥建設業許可の取得
『建設業法』第3条では、請負金額が500万円以上の建設工事を行う場合には、個人・法人を問わず、建設業許可を取得することが義務づけられています。
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。 |
引用元:e-Gov法令検索『建設業法』第3条
また、『建設業法施行令』第1条の2において、建築一式工事であれば、1,500万円以上の建設工事、もしくは延べ面積150m2以上の木造住宅工事の場合に許可が必要であると記されています。
第一条の二 法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。 |
引用元:e-Gov法令検索『建設業法施行令』第1条の2
なお、建設業許可は2つの区分に分けられており、工事請負金額に応じて必要な許可が異なります。
▼建設業許可の区分
一般建設業許可 |
一次下請けとの下請契約の総額が4,000万円未満 ※建築一式工事の場合は6,000万円未満 |
特定建設業許可 |
一次下請けとの下請契約の総額が4,000万円以上 ※建築一式工事の場合は6,000万円以上 |
一般建設業許可と特定建設業許可の違いや取得要件については、こちらの記事をご確認ください。
(出典:e-Gov法令検索『建設業法』『建設業法施行令』/国土交通省『建設業許可制度(概要)』『建設業の許可とは』)
まとめ
この記事では、建設業を独立開業する際の準備について、6つに分けて解説しました。
- 開業資金の確保
- 経営形態の決定
- 専任技術者の資格取得
- 事務所・備品の準備
- 開業届・登記申請
- 建設業許可の取得
独立開業を滞りなく進めるには、経営形態や事業規模に応じた資金を確保するとともに、必要な資格取得・手続きを事前に確認しておくことが重要です。
また、開業後に事業を成功させるためには、資金計画の策定や集客施策を検討することも欠かせません。独立開業の主な失敗要因と改善策については、こちらの記事をご確認ください。
なお、建設業の開業に役立つ資格について、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
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