【一人親方の法人化】メリットとデメリットを解説
一人親方とは、従業員を雇用せずに、個人事業主として建設業で働くことを指します。なかには、今後の事業拡大を視野に入れて法人化する方もいます。
一方、法人化を検討しながら、「どのようなメリットがあるのだろうか」「きちんと経営していけるのだろうか」などと不安を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、法人化の概要や、一人親方が法人化するメリット・デメリットについて解説します。
なお、一人親方が活用すると便利な建設キャリアアップシステムについては、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
≫ 【一人親方必見】建設キャリアアップシステムの登録方法を解説
目次[非表示]
- 1.法人化とは
- 2.一人親方が法人化するメリット
- 2.1.①税制面の優遇
- 2.2.②社会保険への加入
- 2.3.③社会的信用度の向上
- 3.一人親方が法人化するデメリット
- 3.1.①法人税の負担
- 3.2.②事務処理の複雑化
- 3.3.③設立に手間がかかる
- 4.まとめ
法人化とは
法人化とは、個人事業主が会社を設立して、個人で行っていた事業を法人で行うことです。“法人成り”とも呼ばれます。
2006年5月1日に『会社法』が施行され、法人化のハードルが下がったことで、一人親方が法人化しやすくなりました。
▼会社法施行前・施行後の資本金の違い
会社法の施行前 |
会社法の施行後 |
|
株式会社 |
|
|
経済産業省 新規産業室『Q&A最低資本金規制特例』/法務省『会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A』を基に作成
このように、資本金や役員の選定の要件が緩和されたことで、建設業においても一人親方が法人化しやすい状況になったといえます。
(出典:経済産業省 新規産業室『Q&A最低資本金規制特例』/法務省『会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A』)
一人親方が法人化するメリット
一人親方が法人化することで、税制面の優遇を受けられるほか、福利厚生面の拡充や社会的信頼度の向上などのメリットも期待できます。ここでは、主なメリットを3つご紹介します。
①税制面の優遇
一人親方が法人化した場合、個人事業主と比べて税制面の優遇を受けられることがあります。
個人事業主の場合、所得に応じて税率が変化する所得税が適用されます。所得税の税率は5〜45%となっており、所得が増えるほど税率が高くなります。
一方、法人化すると法人税が適用されます。普通法人税の場合、所得の800万円を基準として、15%と23.2%の2段階の税率が適用されます。
▼個人事業主(所得税)と法人(法人税)の税率
事業形態 |
所得 |
税率 |
個人事業主(所得税) |
1,000円~194万9,000円 |
5% |
195万円~329万9,000円 |
10% |
|
330万円~694万9,000円 |
20% |
|
695万円~899万9,000円 |
23% |
|
900万円~1,799万9,000円 |
33% |
|
1,800万円~3,999万9,000円 |
40% |
|
4,000万円以上 |
45% |
|
法人(法人税) |
800万円以下の部分 |
15% |
800万円超の部分 |
23.2% |
法人税は、所得が一定額を超えた場合、所得税よりも法人税の税率が低くなるため、法人化によって税金の負担を抑えられることがあります。
たとえば、所得額が以下の場合、所得税よりも法人税のほうが税率が低くなります。
▼例:700万円の所得に対してかかる税率
- 所得税:23%
- 法人税:15%
▼例:1,000万円の所得に対してかかる税率
- 所得税:33%
- 法人税
- 800万円にかかる税率:23.2%
- 200万円にかかる税率:15%
(出典:国税庁『No.2260 所得税の税率』『No.5759 法人税の税率』)
②社会保険への加入
法人化することで、厚生年金・医療保険などの社会保険に加入できるメリットもあります。
個人事業主の場合、国民年金と国民健康保険に加入します。一方、法人の場合、社会保険への加入が義務づけられているため、厚生年金・医療保険に加入する仕組みです。
一般的に、厚生年金の保険料は国民年金の保険料よりも高額です。そのため、会社側が負担する保険料は増加しますが、将来受け取る年金支給額が増える可能性が高くなります。
なお、個人事業主の場合でも、常時使用する従業員が5人以上の事業所は、社会保険へ加入する必要がある点には注意が必要です。
③社会的信用度の向上
社会的信用度が向上することも、一人親方が法人化するメリットの一つです。
法人として建設業を営む場合、登記簿に会社の情報や事業目的などを明示します。これにより、事業の実態を客観的に判断する材料となるため、外部からの信用を獲得しやすくなります。
社会的な信用度が高まることで、金融機関からの融資や採用活動などで有利になることが期待できます。
一人親方が法人化するデメリット
一人親方の法人化には、税金の負担や事務処理、開業・閉鎖手続きなど、把握しておきたいデメリットもいくつかあります。ここでは、3つのデメリットをご紹介します。
①法人税の負担
先述のとおり、法人税の税率は、800万円を基準として2段階に固定されています。そのため、所得の少ない状態で法人化した場合、税金の負担が増えてしまう可能性があります。
個人事業主の場合は、所得が329万9,000円以下であれば、課税される所得税の税率は10%となり、法人税の最低税率である15%より低くなります。
(出典:国税庁『No.2260 所得税の税率』『No.5759 法人税の税率』)
②事務処理の複雑化
会計処理や税金申告などの事務処理が複雑化するというデメリットがあります。
個人事業主の場合は、経営者自身で記帳・確定申告をしている方が多く見られるほか、給与計算のような事務作業も発生しません。
一方、法人化した場合、以下のような業務が発生するため、個人事業主と比べて事務処理の負担が増えやすくなります。
▼法人化で発生する事務作業
- 帳簿への記帳
- 法人税申告書の作成
- 給与計算
- 年末調整 など
経営者一人でこれらの業務に対応できない場合には、税理士や公認会計士などの専門家に委託したり、事務スタッフの雇用を検討したりする必要があります。
③設立に手間がかかる
法人として会社を設立する際は、さまざまな手続きが発生します。
個人事業主の場合、税務署や都道府県税事務所などに開業届を提出するだけで開業することが可能です。
しかし、法人の場合は、会社の設立にあたって以下のような手続きが発生するため、設立に数週間かかります。
▼会社設立時の手続き
- 定款の作成・認証
- 資本金の準備
- 法人登記の申請
法人化する際は、事前に必要な手続きや流れについて把握したうえで、計画的なスケジュールを立てることが重要です。
まとめ
この記事では、一人親方の法人化について以下の内容を解説しました。
- 法人化とは
- 一人親方が法人化するメリット
- 一人親方が法人化するデメリット
一人親方が法人化する際は、メリットだけに目を向けるのではなく、所得税の負担や設立時に発生する事務処理など、デメリットも把握しておくことが大切です。
法人化後の負担を軽減するためには、個人事業主が軌道に乗ってから法人化する、事務処理を外部に依頼する、などの対策も求められます。
なお、一人親方が法人化して建設業を行う場合、処遇の改善や現場管理の効率化などのために、建設キャリアアップシステムに登録することが有効です。建設技能者の資格や技能レベルの証明になるため、顧客・取引先からの信用度、契約数の向上が期待できます。
なお、一人親方の問題については、こちらの記事で解説しています。ぜひご一読ください。
≫ 従業員の“一人親方問題”とは? 注意したい3つのリスクと今後の方向性について
建設キャリアアップシステムの詳細については、こちらの記事をご確認ください。