建築物と工作物の違いとは?定義と建築時の注意点を解説
住宅を建てる際、建築物については建築基準法の規定が設けられています。この建築物と区別が必要な不動産として、“工作物”があります。
建築物と工作物のいずれかによって、建築確認申請の要否が変わるため、異なるものとして取り扱う必要があります。
工務店・ビルダーは、両方の定義や違いについて理解したうえで、施主に対しても適切に説明を行うことが重要です。
この記事では、建築物と工作物の定義と違いをはじめ、工作物を建築する際の注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.建築物と工作物の定義
- 2.建築物と工作物の違い
- 3.工作物を建築する際の注意点
- 3.1.①建築確認申請の要件
- 3.2.②設置・保存の瑕疵
- 4.まとめ
建築物と工作物の定義
建築物と工作物は、異なるものとして定義されています。ここでは、それぞれの定義について解説します。
建築物の定義
建築物とは、『建築基準法』で定められた建物や一定の工作物を指します。
建築基準法第2条1項では、建築物を以下のように定義しています。
▼建築基準法第2条1項
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
引用元:e-Gov法令検索『建築基準法』
このように、屋根・壁・柱のある住宅をはじめ、建物の土地に定着する門・塀、観覧のための工作物、店舗や倉庫などの施設が建築物に該当します。
(出典:e-Gov法令検索『建築基準法』)
工作物の定義
工作物とは、土地に定着させて設置した人工物を指します。
住宅や事務所、店舗などの建物だけでなく、前述した建築基準法上の建築物に該当しない人工物も工作物に分類されます。
工作物として扱われる人工物には以下が挙げられます。
▼工作物の例
- 道路
- 鉄道
- ゴルフコース
- 電柱
- 遊具 など
建築物と工作物の違い
不動産用語上、建築物と工作物は異なる意味として取り扱われています。
建築物は、建物と一定の工作物を含んでいるのに対して、工作物は建物以外の人工物を指します。
▼建築物と工作物の違い
項目 |
内容 |
---|---|
建築物 |
建物とそれに付随する一定の工作物(門や塀など) |
工作物 |
建物以外の人工物 |
ここでいう建物は、土地に定着した屋根や周壁がある建造物で、一定の用途が決まっているものを指します。不動産登記法における建物は、以下のように定義されています。
▼不動産登記法第111条
(建物)
第百十一条 建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『不動産登記法』
住宅や事務所などのように用途が決まっていない建築物については、建物以外の工作物として取り扱われます。
(出典:e-Gov法令検索『不動産登記法』)
工作物を建築する際の注意点
工作物を建築する際は、建築確認申請の要件と設置・保存の瑕疵(かし)について注意が必要です。
①建築確認申請の要件
建築基準法の定義から外れる建物以外の工作物を建築する際、一定規模を超える場合には、建築確認申請を行う必要があります。
建築確認申請とは、新たに建築物を建てたり修繕したりする際に、法令や各都道府県の条例を遵守しているか審査を受けるための手続きです。
建築基準法や各種条例に適合した建築物と判断された場合には、検査済証が発行されて、工事の着工が可能になります。
建築基準法上の建築物に該当しない“建物以外の工作物”であっても、一定規模以上の場合には、建築確認申請が必要です。
建築確認申請が必要になる工作物は、以下のとおりです。
▼建築確認申請が必要になる工作物
工作物の種類 |
用途・規模 |
---|---|
準用工作物 |
|
指定工作物 |
|
なお、擁壁の調査方法や検査済証については、こちらの記事をご確認ください。
②設置・保存の瑕疵
工作物の設置・保存に瑕疵があり、他人に障害が生じた場合には、所有者の賠償責任が問われる可能性があります。
『民法』第717条では、土地の工作物の占有者または所有者の責任として、以下のように定めています。
▼民法第717条第1項
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『民法』
建築の段階で建築基準法の規定に適合している場合でも、経年劣化によって工作物の破断や腐食が発生するおそれがあるため注意が必要です。
また、工作物の維持管理を適切に行わず、老朽化によって瑕疵が発生した場合には“保存の瑕疵”となり、所有者が損害賠償を負う可能性もあります。
このようなリスクを踏まえつつ、工務店・ビルダーでは、工作物の所有者責任についても詳しく説明を行うことが重要です。
(出典:e-Gov法令検索『民法』)
まとめ
この記事では、建築物と工作物について以下の内容を解説しました。
- 建築基準法上の建築物の定義
- 建築物と工作物の違い
- 工作物を建築する際の注意点
建築物は、建築基準法上で定義された建物とそれに付随する工作物を指し、工作物は建物以外のすべての人工物を指します。
一定規模以上の建物以外の工作物を建築する場合には、建築確認申請が必要になるため、事前に該当するものがないか確認しておく必要があります。
また、工作物の占有者または所有者は、設置・保存の瑕疵について賠償責任を負うことが定められています。建築後のトラブルを防ぐためにも、施主に対して適切な説明を行っておくことが重要です。
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