新築マンション価格の高騰で中古買取再販の需要高まる
不動産経済研究所が1月に発表した調査結果によると、2022年に首都圏で販売された新築マンションの平均価格は、前年比微増の6,288万円と2年連続で過去最高を更新しています。
さらに東京23区に限ると新築マンションの平均価格は、8,236万円と2年連続で8,000万円を超えています。
新築マンションの価格上昇が続く中、注目されているのが中古買取再販の物件です。「中古買取再販物件」とは、マンションや一戸建ての中古住宅を不動産会社や再販専業の事業者が買い取り、リノベーションをした後で販売するものです。
内装やインテリアの改修、水回り設備などの交換、間取り変更などを行うことで、居住者に室内の古さを感じさせずに新築と同様の設備や綺麗さで提供することができるため人気となっています。
今回は住宅業界で注目が高まっている中古買取再販事業の中で、独自の取り組みを実施している企業の事例を紹介します。
多様化する家族形態を反映
大和ハウスのグループ会社であり、新築マンション・一戸建住宅の分譲などの事業を展開するコスモスイニシアでは、近年、社会問題になるなど多様化する家族形態を反映したリノベーション済み物件を販売しています。
同社が発売した「センチュリー中野南台」は、LGBTsやDINKS世帯など「大人の二人世帯」をターゲットに設計されました。同社が社内のDINKSに実施したアンケートによると、「お互いを尊重し合えるプライバシー性も重視したい」という声が多かったことがわかりました。
そのため、洋室2部屋をそれぞれ独立した空間として分け、1室は寝室として、もう1室をワークスペースとして活用したり、それぞれを個別の寝室として使用したりすることも選択可能な間取りを採用しています。
また、洗面室には2人が同時に使用しやすいように2つのボウルがある洗面台を採用しました。鏡も2種類設置し、1つはIoT仕様で、スピーカー機能や調光機能を備えるなど、設備面にもこだわっています。
商品コンセプトを採用する物件の立地も重要ということで、LGBTsの顧客が共同名義での購入やペアローンを組むことができるように、パートナーシップ制度のある中野区の物件を選択しています。同商品の販売価格は6,180万円で、発売後2ヶ月以内に販売することができたということです。
同社では、今後も物件エリアやターゲット層、社会問題などを踏まえ、様々な企画やプランニングに挑戦していく計画です。
環境配慮型リノベーションを実施
中古買取再販事業の需要の高まりを受けて新規参入する事業者が増える中、新しい取り組みを行うことで競合他社との差別化を図る事業者も出てきています。
1995年に設立し中古買取再販事業者のパイオニアであるインテリックスは、17期連続で年間1,000件超の中古買取再販物件を販売しています。設立以来、業界を牽引し続けているインテリックスでは、2021年7月に、高気密高断熱で省エネルギーを実現するリノベーション商品「ECOCUBE(エコキューブ)」を発売し拡大を図っています。
「エコキューブ」は、中古マンションの各住戸において温熱計算を行い、その計算に基づいて断熱性と気密性を高めるリノベーションを実施することに加え、高性能な換気システムや高効率エアコンを設置することで、居住者の健康、省エネルギー、経済的メリットを提供するリノベーション商品となっています。
温熱計算、断熱材、高性能内窓、熱交換式第一種換気を標準仕様としており、温熱計算はインテリックスのグループ会社として2021年に設立した「TEI Japan」で実施しています。
またインテリックスでは、エコキューブのさらなる普及のため、2022年2月に新たにグループ会社である「リコシス」を設立しました。「リコシス」では、全国の工務店や中古買取再販事業者向けのフランチャイズ事業「エコキューブFC」の運営を開始しています。
さらに昨年末からはエコキューブをアピールするためのテレビCMを放映し、今後はYouTube動画などでも積極的にエコキューブを訴求していくということです。同商品の露出を増やすことで、エコキューブ搭載済みの中古買取再販物件の販売数を増やすとともに、FC加盟店を獲得していく計画です。
今期の目標は、インテリックスが販売する中古買取再販物件全体の40%でエコキューブを採用していくこととしています。また、「エコキューブFC」の加盟店は早期に100社の加盟を目標としており、エコキューブを普及させることで既存住宅ストックの断熱化・省エネ化の推進に貢献していきたいということです。
≫ 業務支援サービス