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木造の耐火建築物は建てられる?3つの適合ルートとメリット

木造住宅を建てる際に気になるのが耐火性能です。

顧客から「万が一火災が起きた場合、木造だとすぐに延焼が広がってしまうのでは」と相談される工務店・ビルダー担当者の方もいるのではないでしょうか。

工務店・ビルダーでは、耐火建築物の定義や適合基準を正しく理解したうえで、施主へ適切な説明を行い、法令を遵守した建築計画を立てることが重要です。

この記事では、耐火建築物の定義をはじめ、木造における耐火建築物の適合ルート、メリットについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.耐火建築物の定義
  2. 2.耐火建築物と準耐火建築物の違い
  3. 3.木造における耐火建築物の適合ルート
    1. 3.1.①適合ルートA
    2. 3.2.②適合ルートB
    3. 3.3.③適合ルートC
  4. 4.木造の耐火建築物のメリット
  5. 5.まとめ

耐火建築物の定義

耐火建築物とは、法律で定められた耐火基準に適合する建築物のことです。

耐火基準は『建築基準法』第2条9項によって定められており、主要構造部が耐火構造であり、かつ扉や窓などの開口部に防火設備を設けた建築物を指します。

▼建築基準法第2条9項の2

九の二 耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。

(1) 耐火構造であること。

(2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。

(i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

(ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

引用元:e-Gov法令検索『建築基準法

ここでいう主要構造部とは、壁、柱、床、はり、屋根、階段を指します。

また、耐火構造は、火災発生から終了までの間、建築物の倒壊・延焼防止のために必要とされる性能のことです。

耐火建築物の技術的基準は、建築物の階数・構造によって異なりますが、一定時間、延焼による構造耐力に支障のある変形や溶解、破壊といった損傷を生じない性能が求められます。

建築基準法によって定められた特殊建築物や、都市計画法で防火地域と定められた地域では、耐火建築物とすることが必須とされています。

(出典:e-Gov法令検索『建築基準法』/国土交通省『建築基準法制度概要集』)

耐火建築物と準耐火建築物の違い

耐火建築物と準耐火建築物は、性能に違いがあります。

▼耐火建築物と準耐火建築物の違い

項目

耐火建築物

準耐火建築物

特徴

火災による建築物の倒壊と延焼を防止する性能を有する建築物

火災による建築物の延焼を抑制する性能を有する建築物

耐火建築物に適用される耐火構造では、主要構造部が火災終了まで、階数・主要構造の部位に応じて、おおむね1〜3時間の一定時間の間、倒壊・延焼を防止できる構造が求められます。

一方、準耐火建築物に適用される準耐火構造では、主要構造の部位に応じて、火熱が加えられている一定時間の間、倒壊・延焼を防止する構造が求められます。

このように、準耐火建築物はあくまでも延焼を抑制することを目的としており、火熱が加えられている間に耐えうる構造のため、火災終了後には建築物が倒壊するリスクがあります。

耐火建築物と準耐火建築物、それぞれの主要構造部に求められる技術的基準は、以下のとおりです。

▼耐火建築物(耐火性能に関する技術的基準)

画像引用元:e-Gov法令検索『建築基準法施行令

▼準耐火建築物

画像引用元:e-Gov法令検索『建築基準法施行令

(出典:e-Gov法令検索『建築基準法』『建築基準法施行令』/国土交通省『建築基準法制度概要集』)

木造における耐火建築物の適合ルート

主要構造部と外壁開口部における技術的基準を満たせば、木造であっても耐火建築物を建築することは可能です。

木造の耐火建築物を建てる際の技術的基準には以下の3つがあります。なお、木造住宅の場合、適合ルートAで設計されることが一般的です。


①適合ルートA

適合ルートAとは、国土交通大臣が定める告示の例示仕様または大臣認定を受けた3つの構造方式を用いる方法です。主に、住宅用建築物に採用されています。

▼大臣が定めた告示の仕様

木造耐火構造の外壁・間仕切り壁・柱・床・屋根・階段に、告示化されている工法を用いる

▼大臣認定を受けた構造方式

構造方式

内容

燃え止まり型

柱やはりなどの主要部分にモルタル材、難燃処理木材を用いて、燃え止まり層を形成して、耐火構造とする工法

木質ハイブリッド(鋼材内蔵)型

内部に鋼材を木材で被覆したものを柱やはりなどの主要部分に用いて、耐火構造とする工法
メンブレン型
柱やはりなどの主要部分に石こうボードなどで被覆した木材を用いて、メンブレン層を形成して、耐火構造とする工法

(出典:国土交通省『耐火構造の構造方法を定める件』『官庁施設における木造耐火建築物の整備手法に関する検討』『官庁施設における木造耐火建築物の整備指針』/e-Gov法令検索『建築基準法』)


②適合ルートB

適合ルートBは、耐火性能検証法(※)を用いて、主要構造部の非損傷性、遮熱性、遮炎性を確かめる方法です。

室面積を広く天井の高さを確保して、火災が起こった際に熱がこもりにくくすることで、耐火建築物とします。主に、天井の高いドーム建設や体育館などで採用されています。

▼木材を利用するときのポイント

  • 柱・はりの小径が20cm以上
  • 開放性が高く、火災温度が低い
  • 木造部材の使用が床面から高さ5.55m以上

※耐火性能検証法とは、建築物の主要構造部が耐火に関してどの程度の性能を有するか検証する方法のこと。

(出典:『官庁施設における木造耐火建築物の整備手法に関する検討』/e-Gov法令検索『建築基準法』『建築基準法施行令』)


③適合ルートC

適合ルートCは、国土交通省の指定機関において、高度かつ専門的な知識で性能を確認する方法です。

建築確認申請の前に、大臣の認可を受けた性能評価機関で高度な検証を行い、大臣の認めたものを耐火建築物とします。

室面積や天井の高さが必要になるほか、高度な工学的知識が求められます。適合ルートBと同様に、主に天井の高いドーム建設や体育館などで採用されています。

(出典:国土交通省『官庁施設における木造耐火建築物の整備手法に関する検討』/e-Gov法令検索『建築基準法施行令』)

木造の耐火建築物のメリット

木造の耐火建築物は、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造などと比較して、建築費を抑えやすいというメリットがあります。

2021年に国土交通省によって実施された『建築着工統計調査/住宅着工統計』によると、一戸建て住宅の1m2当たりの構造別の工事費用は、木造が最も低くなっています。

▼構造別:1m2当たりの工事費用

構造

全体工程表

木造

17万円

鉄骨鉄筋コンクリート造

27万円
鉄筋コンクリート造
26万円
鉄骨造
26万円
コンクリートブロック造
22万円

e-Stat政府統計の総合窓口『建築着工統計調査 / 住宅着工統計』を基に作成

また、木造の場合、比較的総重量を軽くできるため、基礎への負担が少なく、基礎工事の費用を抑えられる可能性もあります。

なお、火災保険料については建物の構造によって変動します。一般的に、木造建築物は火災保険料が高くなる傾向にありますが、木造であっても耐火構造の場合には、保険料が安くなることが多いです。

まとめ

この記事では、耐火建築物について以下の内容を解説しました。

  • 耐火建築物とは
  • 準耐火建築物との違い
  • 木造の耐火建築物を建てる適合ルート
  • 木造の耐火建築物のメリット

耐火建築物は、建築基準法によって定められた耐火構造を備えた建築物です。木造であっても、適合基準を満たせば耐火建築物とすることが可能です。

耐火建築物を建てるための適合ルートは3種類ありますが、一般的に木造住宅の場合には適合ルートAが採用されます。

工務店・ビルダーは、耐火建築物について正しく理解することで、施主に対して木造建築を含む幅広い工法を提案できるようになります。

LIFULL HOME'Sでは、工務店・ビルダーさまの業務にお役立ていただけるサービスや営業ノウハウを提供しております。ぜひご活用ください。

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なお、耐震基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

 ≫ 【建築基準法の耐震基準】旧耐震・新耐震の違いと支援制度を解説

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