住宅トレンド

省エネ住宅とは?施主にアピールできる5つのメリット

環境問題やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への意識が高まるなか、人々が暮らす住宅についても省エネ化が推進されています。

2025年4月からは、改正建築物省エネ法(2022年6月17日公布)に基づき、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務化されます。

施主から省エネ基準適合に関する義務や、省エネ住宅のメリットについての問合せに対応している工務店・ビルダーもあるのではないでしょうか。

施主に省エネ住宅の魅力を理解してもらうために、省エネ住宅について正しい知識を身につけておくことが重要です。

この記事では、省エネ住宅の基礎知識と、施主にアピールできるメリットについて解説します。

出典:国土交通省『2025年4月(予定)から全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます

目次[非表示]

  1. 1.省エネ住宅とは
    1. 1.1.省エネ住宅の3つの性能
    2. 1.2.住宅の省エネルギー基準
  2. 2.省エネ住宅のメリット
    1. 2.1.①一年中快適に過ごせる
    2. 2.2.②光熱費を削減できる
    3. 2.3.③健康リスクを低減できる
    4. 2.4.④環境にやさしい
    5. 2.5.⑤税金面の優遇を受けられる
  3. 3.省エネ住宅を提案する際の注意点
  4. 4.まとめ

省エネ住宅とは

省エネ住宅とは、住宅内部の熱をコントロールするとともに、冷暖房や給湯、照明などのエネルギー消費を抑えることができる住宅を指します。


省エネ住宅の3つの性能

省エネ住宅は、断熱・日射・気密といった3つの性能を備えていることが特徴です。

▼省エネ住宅が備える3つの性能

性能

特徴

断熱
屋根や壁、窓などを通して住宅内外へと熱が移動する量を少なくして、冷暖房効率を高める
日射
外部からの日射を遮蔽して室温の上昇を抑えることで、夏の冷房に必要なエネルギー消費を抑える
気密
住宅の隙間から出入りする熱の移動を少なくして、住宅内部の温度差の均一化、快適性の向上を図る

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト『省エネ住宅』)


住宅の省エネルギー基準

省エネ性能を評価する基準として、“住宅の省エネルギー基準”が設けられており、外皮基準と一次エネルギー消費量基準の2つで構成されています。

現行の省エネ基準では、断熱性能等級が4、一次エネルギー消費量等級が4と定められています。

▼住宅の省エネルギー基準

画像引用元:経済産業省『【参考】住宅における外皮性能

なお、2025年4月からは、すべての新築住宅・非住宅で省エネ基準の適合が義務化される予定です。

省エネ基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。

 ≫ 省エネ基準の2つのポイントと改正建築物省エネ法による工務店・ビルダーの対応

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト『省エネ住宅』/経済産業省『【参考】住宅における外皮性能』/国土交通省『快適・安心に暮らす省エネ住宅のススメ』『2025年4月(予定)から全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます』)

省エネ住宅のメリット

改正建築物省エネ法では、建築士が建築主に対して省エネ性能についての適切な説明を行うことが新たに義務づけられています。

省エネ住宅性能に関する適合義務や魅力を伝えるために、以下のメリットについても説明できるようにしておくことが大切です。

(出典:国土交通省『建築物省エネ法が改正されました』)


①一年中快適に過ごせる

1つ目は、一年を通して快適に過ごせることです。

断熱性能や日射遮蔽性能が高い住宅では、以下のように住宅内外の空気の出入りを少なくできます。

▼断熱性能・日射遮蔽性能が高い住宅の特徴

  • 冬:室内の暖かい空気を外に逃がさない
  • 夏:外からの日射による熱の侵入を防ぐ

これにより、冬は暖かく、夏は涼しい快適な室内環境を実現できます。

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト『住宅による省エネ』/国土交通省『快適・安心に暮らす省エネ住宅のススメ』)


②光熱費を削減できる

2つ目は、光熱費を削減できることです。

断熱性や気密性の高い省エネ住宅では、冷暖房の使用量を減らせるほか、少ないエネルギーでも冷暖房できるため、光熱費を抑えられます。

また、エネルギー効率のよい給湯器や換気設備などの機器・設備を導入すれば、住宅全体のエネルギー消費量を抑えることも可能です。

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト『住宅による省エネ』/国土交通省『快適・安心に暮らす省エネ住宅のススメ』)


③健康リスクを低減できる

3つ目は、健康リスクを低減できることです。

断熱性や気密性に優れた省エネ住宅では、室内の温度を均一に保てるため、ヒートショック(※)の防止につながります。

また、断熱性・気密性に加えて、通風・換気を確保することで、住宅内の空気が入れ換わり、シックハウスや結露によるカビ・ダニの発生を抑制できます。

※ヒートショックとは、急激な温度変化が身体に及ぼす悪影響のこと。冬に暖房のないトイレや浴室で、心筋梗塞や脳血管障害を引き起こすおそれがある。

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト『住宅による省エネ』/国土交通省『快適・安心に暮らす省エネ住宅のススメ』)


④環境にやさしい

4つ目は、環境にやさしいことです。

省エネ住宅では、冷暖房設備の使用量を減らせるほか、高効率な設備・システムによってエネルギー消費量を抑えられます。

これにより、地球温暖化の要因となる二酸化炭素の排出量を減らすことに貢献できます。

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト『住宅による省エネ』)


⑤税金面の優遇を受けられる

5つ目は、省エネ住宅の建築にあたって、一定の条件を満たせば税金面の優遇を受けられる場合があることです。

省エネ住宅に関する税金の優遇制度には、以下が挙げられます。

▼省エネ住宅に関する税金の優遇制度

  • 住宅ローン控除
  • 住宅特定改修特別税額控除
  • 認定住宅等新築等特別税額控除

これらの優遇制度を利用できれば、無理のない負担で省エネ住宅を提供することが可能です。

優遇制度についての詳細は、政府の公式Webサイトをご確認ください。

(出典:国土交通省『住宅ローン減税』/国税庁『No.1219 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)』『No.1221 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)』)

省エネ住宅を提案する際の注意点

省エネ住宅を提案する際は、初期費用が高くなる可能性があることに注意が必要です。断熱性や気密性に優れた建築資材や、高効率の設備・システムを導入する必要があるため、一般的な住宅と比べて高くなりやすいのです。

国土交通省によると、省エネ基準に適合させるために必要となる追加コストは、建設費の約1.3〜4.0%とされています。たとえば、120m2の小規模住宅に天井・外壁・床・開口部の追加措置を行った場合、建設費の約4.0%となり、約87万円のコストが発生する計算になります。

また、省エネ基準に適合した一戸建て住宅(120m2)における年間光熱費の低減額は約2.5万円で、回収期間は約35年となります。

工務店・ビルダーは、施主が希望する予算や追加コストの回収期間を踏まえたうえで、建設費のシミュレーションを行い、施主との予算調整を行う必要があります。

なお、建設費の負担を抑えるには、省エネ住宅に関する補助金制度を活用することも有効です。

住宅購入時に活用できる補助金や優遇制度については、こちらの記事をご確認ください。

 ≫ 住宅購入時に活用したい補助金や税金、優遇制度について

(出典:国土交通省『省エネ基準への適合のための追加コスト等の試算例について(住宅)』)

まとめ

この記事では、省エネ住宅について以下の内容を解説しました。

  • 省エネ住宅とは
  • 省エネ住宅の5つのメリット
  • 施主に提案する際の注意点

省エネ住宅は、断熱性や気密性に優れており、住宅内の熱の流れをコントロールしたり、エネルギー消費量を抑えたりする効果があります。

一年中快適に過ごせる、光熱費を抑えられる、健康リスクを低減できるなど、居住者にとってのさまざまなメリットがあります。

また、2025年4月からは、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準の適合が義務づけられます。工務店・ビルダーでは、省エネ基準の理解を深めるとともに、基準に適合する住宅設計への対応が求められます。

省エネ基準の適合義務化については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご一読ください。

 ≫ 【改正建築物省エネ法】省エネ基準の適合義務化と新たな断熱等級について解説

  【改正建築物省エネ法】省エネ基準の適合義務化と新たな断熱等級について解説 | LIFULL HOME’S Business 注文・分譲一戸建て 改正建築物省エネ法の内容や新設される断熱等級について解説します。 LIFULL HOME'S Business 注文・分譲一戸建て


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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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