新人営業担当者や施主にも分かりやすい! 耐震住宅のメリット・デメリット
地震大国の日本では、地震による建物の倒壊・損壊を防ぐために、住宅を建てる際に“耐震”への対応が求められています。
1981年6月1日からは改正建築基準法の施行によって新耐震基準が設けられており、新たに住宅を建てる際には、この基準を満たすことが義務づけられています。
工務店・ビルダーにおいては、顧客から耐震住宅について説明を求められた際に正しい情報提供を行うために、耐震基準や耐震構造、耐震住宅を建てるメリット・デメリットについて理解しておくことが重要です。
この記事では、耐震基準の基礎知識をはじめ、制震や免震との違い、耐震性能の高い住宅を建てるメリット・デメリットについて解説します。
(出典:国土交通省『住宅・建築物の耐震化について』)
目次[非表示]
- 1.新耐震基準とは
- 2.耐震・制震・免震の違い
- 3.耐震性能の高い住宅を建てるメリット・デメリット
- 3.1.メリット
- 3.1.1.①住宅の安全性を高められる
- 3.1.2.②設計の自由度が高い
- 3.1.3.③資産価値を高められる
- 3.2.デメリット
- 3.2.1.①耐震性能だけでは揺れが伝わりやすい
- 3.2.2.②追加コストが発生する可能性がある
- 4.まとめ
新耐震基準とは
耐震基準とは、一定規模の地震が起きた際に建物が倒壊・損壊しないように建築基準法で定められている構造基準のことです。
1981年6月1日の改正建築基準法によって旧耐震基準が見直され、より厳しい新耐震基準が設けられました。新築住宅を建築する際は、新耐震基準での構造設計が義務づけられています。
なお、2000年4月1日に施行された『住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)』では、耐震性を含む住宅性能を評価する“住宅性能評価制度”が設けられました。住宅性能表示基準の1つに“構造の安定に関すること”が含まれており、そのなかに耐震等級の項目が設けられています。
住宅性能評価制度の耐震等級と耐震強度は、以下のとおりです。
▼耐震等級と耐震強度
耐震等級 |
耐震強度 |
---|---|
耐震等級3 |
耐震等級1の1.5倍の耐震強度 |
耐震等級2 |
耐震等級1の1.25倍の耐震強度 |
耐震等級1 |
極めてまれに(数百年に一度程度)発生する大地震による力に対して、倒壊、崩壊しない程度 |
現行の耐震基準は、上記のうち“等級1”に該当しており、震度5強程度の中規模の地震に対してほとんど損傷が生じません。震度6強~7程度の極めてまれにしか発生しない大規模の地震に対して、人命に危害を及ぼすような倒壊の被害が生じない建築物が目安になっています。
(出典:国土交通省『住宅・建築物の耐震化について』『新築住宅の 住宅性能表示制度 住宅性能表示制度ガイド』/内閣府『4-1 震災対策(3)地震に強い国土の形成』/林野庁『木造住宅の耐震性について』)
耐震・制震・免震の違い
住宅建築における地震対策には、耐震のほかに制震・免震があります。それぞれの特徴をまとめると、以下のようになります。
▼耐震・制震・免震の特徴
特徴 |
地震への強度 |
|
---|---|---|
耐震 |
建物の構造部分の強度を高めて、地震の揺れに耐える |
地震の揺れによる建物の倒壊を防ぐ |
制震 |
建物の構造部分に制震装置を設置して、地震の揺れを抑制する |
地震の揺れによる建物の倒壊・損壊、家具の転倒を防ぐ |
免震 |
建物の基礎と構造部分の間に免震装置を設置して、地震の揺れを吸収する |
建物の倒壊だけでなく、建物内部の損壊も防ぐ |
耐震と制震、免震を組み合わせることで、より地震に強い住宅づくりが可能となります。工務店・ビルダーにおいては、耐震に加えて制震・免震構造を取り入れることによって、住宅性能のアピールや競合他社との差別化につながります。
耐震性能の高い住宅を建てるメリット・デメリット
耐震性能の高い住宅は、そこで暮らす人にとってさまざまなメリットがあります。ただし、建築にはデメリットもあるため、施主の理解を得るための正しい説明が求められます。
メリット
耐震性能の高い住宅を建てることで、以下のメリットが期待できます。
①住宅の安全性を高められる
耐震等級の高い住宅を建てることで、地震によって建物が倒壊・損壊するリスクを減らせるため、住宅の安全性を高められます。
また、耐震性能の高い住宅構造は、地震への対策だけでなく、強風や台風などの影響も受けにくくなります。災害が発生した際に、人命や住宅、家財を守ることにつながるため、安心した暮らしに欠かせない対策といえます。
②設計の自由度が高い
土地の広さや地盤による設置制限がなく、設計の自由度を保ちやすいことも耐震住宅のメリットの一つです。
耐震住宅は、住宅の構造部分を強化する設計のため、土地の広さや地盤の状態によって制約が生まれることはありません。地震に強い住宅設計に加えて、間取りや形状などを柔軟に設計できることは、施主にとって大きなメリットといえます。
③資産価値を高められる
建築基準法の耐震基準以上(等級2・等級3)の耐震性能を持つ住宅は、資産価値が高くなりやすいといったメリットもあります。
長期優良住宅(※)に認定されると、一般的な住宅と比べて、長く安全に使用できる住宅としてアピールすることが可能です。このような住宅は、長期的な需要が見込まれるため、将来売却するときに評価額が高くなることが期待できます。
※長期優良住宅とは、国が定める長期優良住宅認定制度の基準をクリアした、長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のこと。
(出典:国土交通省『長期優良住宅のページ』)
デメリット
耐震住宅には、注意しておきたいデメリットもあります。
①耐震性能だけでは揺れが伝わりやすい
耐震住宅では、地震による建物の倒壊・損傷を抑えやすくなりますが、耐震性能だけでは揺れが伝わりやすくなります。そのため、家具の転倒によって二次被害が起こる可能性があります。
地震対策を強化するためには、家具の転倒への対策を実施するとともに、揺れを抑えるための制震や免震と組み合わせた住宅構造を取り入れることが望まれます。
②追加コストが発生する可能性がある
耐震性能の高い住宅を建てるには、構造部分の強化や特殊な装置を設置する必要があり、追加コストが発生する場合があります。
また、耐震性能のみの構造では繰り返しの地震に弱いため、定期的な修繕が必要となり、継続的にコストが発生するケースも考えられます。
このようなコストの負担を抑えるために、政府は耐震住宅に活用できる補助金や優遇制度を設けています。工務店・ビルダーでは、活用できる制度がないかを確認して、施主に提案することも重要です。
まとめ
この記事では、耐震住宅について以下の内容を解説しました。
- 新耐震基準の概要
- 耐震・制震・免震の違い
- 耐震性能の高い住宅を建てるメリット・デメリット
建築基準法では、一定規模の地震が起きた際に建物が倒壊・損壊しないように一定の構造基準が定められています。現行の耐震基準は耐震等級1に該当しますが、強度の高い等級2・等級3に適合させたり、耐震に加えて制震・免震を取り入れたりすることで、より地震に強い住宅づくりが可能になります。
住宅の安全性を高めることで、長く安心して暮らせる、将来にわたって資産価値を維持しやすいといったメリットがあります。工務店・ビルダーにおいては、耐震住宅のメリット・デメリットを正しく説明できるように知識を身につけておくことが重要です。
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また、旧耐震と新耐震の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。