不動産会社を一人で起業する流れとメリット・デメリット
現在、不動産会社や工務店・ビルダーで営業活動を行っている方で、不動産会社を一人で起業しようと検討している方もいるのではないでしょうか。
不動産会社の起業にはさまざまな手続きがあるほか、業種によって必要な資格が異なります。また、起業する際のメリット・デメリットについては、法人と個人事業主で違いがあるため、それぞれ理解しておくことが重要です。
この記事では、不動産会社を一人で起業する流れとともに、一人で起業するメリット・デメリットについて解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産会社を起業するまでの7つの流れ
- 1.1.①経営形態・業種形態の選択
- 1.2.②開業資金の準備
- 1.3.③事務所の設置
- 1.4.④会社の設立
- 1.5.⑤宅地建物取引士の設置
- 1.6.⑥宅地建物取引業免許の申請
- 1.7.⑦各都道府県宅建協会への加入
- 2.不動産会社を一人で起業するメリット・デメリット
- 3.一人で起業した不動産会社を長く経営するための取組み
- 4.まとめ
不動産会社を起業するまでの7つの流れ
不動産会社を起業するには、開業前の準備や免許の申請手続き、協会への加入手続きなど、さまざまな手続きが必要です。
ここでは、不動産会社を起業する際の主な流れについて解説します。
①経営形態・業種形態の選択
不動産会社を起業する際、経営形態と業種形態を選択します。
経営形態には、個人経営・法人経営の2つがあり、開業時にかかる手続きの内容や資金、支払いの税率などが異なります。
また、個人経営と比較すると法人経営のほうが社会的な信用が高く、税制上で有利になるメリットもあります。実際に、全国の宅地建物取引業を行う経営者のうち約8割が法人で不動産業を営んでいます。
個人経営と法人経営のメリット・デメリットは以下のとおりです。
▽個人経営
メリット |
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デメリット |
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▽法人経営
メリット |
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デメリット |
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(出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会『入会をお考えの方へ宅建業開業の流れ』)
②開業資金の準備
不動産会社を起業する場合、事務所の賃料や免許申請料などの費用が発生します。
必要な開業資金は協会加入の有無、事務所の規模によって異なりますが、目安は約400万〜1,000万円といわれます。
(出典:公益社団法人 全日本不動産協会 埼玉県本部『不動産で独立するときに資金はいくら必要?』)
③事務所の設置
不動産業を営む際には、事務所の設置が必要です。理由は、宅地建物取引業免許の取得要件として事務所の設置が義務づけられているためです。
事務所は集客にも影響するため、人通りの多さやアクセスのしやすさなども考慮します。また、設置する事務所には、出入り口の独立性をはじめ、他社と区分されたスペースが必要とされています。
(出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会『入会をお考えの方へ宅建業開業の流れ』/公益社団法人 全日本不動産協会『開業までの流れ』)
④会社の設立
法人として起業する場合、『会社法』に基づいて会社を設立します。
会社の設立には、行政書士や司法書士などの専門家に手続きを委託するのが一般的です。そのため、資本金に加えて定款認証の収入印紙、設立登記の登録免許税、行政書士や司法書士への報酬などの費用が発生します。
▼会社設立の主な流れ
①会社の基本事項の決定 |
|
②定款の作成・認証 |
定款を作成して、公証人役場にて認証を受ける |
③資本金の払い込み |
指定の金融機関に資本金を払い込み、残高証明書を発行してもらう |
④登記申請 |
申請に必要な書類を準備して、法務局へ登記申請を行う |
(出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会『入会をお考えの方へ宅建業開業の流れ』/公益社団法人 全日本不動産協会『開業までの流れ』)
⑤宅地建物取引士の設置
『宅地建物取引業法』第31条の3では、不動産業を営む事務所において、専任の宅地建物取引士(以下、宅建士)を置くことが義務付けられています。
不動産会社を起業する本人が宅建士の場合、自らが業務に従事する事務所であれば、専任の宅建士であるとみなされます。
なお、起業して工務店・ビルダーのような建設業を営む場合、請負工事の規模に応じて建設業の許可を取得する必要があります。建設業の許可や要件については、こちらの記事をご確認ください。
(出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会『入会をお考えの方へ宅建業開業の流れ』/公益社団法人 全日本不動産協会『開業までの流れ』/e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』)
⑥宅地建物取引業免許の申請
個人・法人を問わず、不動産業を営む場合には、宅地建物取引業免許の取得が必要です。事務所の規模に応じて、国土交通大臣または都道府県知事に申請します。
免許の取得が必要な業務には、以下が挙げられます。
▼宅地建物取引業免許が必要な業務
- 土地または建物の売買または交換
- 土地または建物の売買・交換・貸借の代理
- 土地または建物の売買・交換・貸借の媒介
ただし、宅地建物取引業免許は申請してすぐに取得できるものではありません。厳重な審査を経て受理されることで免許の登録を受けられます。
(出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会『入会をお考えの方へ宅建業開業の流れ』/公営社団法人 全日本不動産協会『開業までの流れ』/国土交通省『宅地建物取引の免許について』)
⑦各都道府県宅建協会への加入
不動産会社を起業する際、各都道府県が運営する宅地建物取引業協会(以下、宅建協会)に加入することが可能です。
宅建協会に加入すると、実務支援やセミナーの実施、弁護士による法律相談など、不動産業を営むうえで役立つさまざまなサービスを利用できます。
また、レインズも利用できるため、物件情報の収集や開業後の集客にも役立てられます。
なお、宅建協会に加入する場合は、営業保証金の供託が免除される代わりに、弁済業務保証金分担金の納付が必要です。
(出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会『入会をお考えの方へ宅建業開業の流れ』/公益社団法人 全日本不動産協会『開業までの流れ』)
不動産会社を一人で起業するメリット・デメリット
不動産会社を一人で起業したい方は、自分に合った働き方ができるか、運用体制や資金に問題がないかなどを確認してから、起業を検討することが大切です。ここでは、不動産会社を一人で起業するメリット・デメリットを紹介します。
メリット
不動産会社を一人で起業するメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 業務内容を選べる
- スピーディな対応ができる
- 人件費を抑えられる
自分自身で案件を獲得するため、仕事内容や進め方を自由に選択できるメリットがあります。たとえば、オフィスの賃貸や中古マンションの売買など、得意分野に絞って営業することも可能です。
また、上司や管理者の承認・確認が不要になるため、お客さまへの対応を迅速に行うことも可能です。組織としてのルールにとらわれることなく、自身のノウハウやスキルを最大限に活用したい方に適しています。
なお、従業員を雇用しない場合は、人件費もかかりません。
デメリット
一方、不動産会社を一人で起業するうえではデメリットもあります。主に挙げられるのが以下の3つです。
- 集客が難しい
- 売り上げに限界がある
- 働き手の代替がきかない
一人で起業する場合、これまで働いていた不動産会社、工務店・ビルダーの知名度や取引先とのつながりを利用できなくなります。そのため、開業後は新たに集客する必要があります。
また、不動産取引を行ううえでは、媒介契約の締結や広告の出稿、商談など、さまざまな手続きを行います。一人で対応できる案件数には限りがあるため、目指せる売り上げにも限界があります。
そのほか、代わりに対応してくれる人材がいないため、急用・急病の際、業務遂行や事業継続に影響が出る可能性があることにも考慮が必要です。
一人で起業した不動産会社を長く経営するための取組み
一人で起業した不動産会社を長く経営していくためには、事業が軌道に乗るまでの運転資金を確保する必要があります。また、経営ノウハウの習得や案件紹介・物件情報を得るための人脈形成も欠かせません。
一人で起業する場合、お客さまに認知してもらうところからスタートします。十分に集客の成果が得られない時期は収入が不安定になるため、事業が軌道に乗るまでに必要な運転資金を準備しておくことが重要です。
また、経営戦略や資金計画など、経営に関する知識・ノウハウも必要です。たとえば、宅建協会主催のセミナーや教育研修、業務支援サービスなどを活用できます。
さらに、各都道府県にある宅建協会で、会員同士が交流できる親睦会や納涼会などを実施しているところもあります。不動産関連の会社や営業担当者との人脈形成のために、こうした機会を積極的に利用することも大切です。
宅建協会が提供している会員向けサービスには、以下が挙げられます。
▼会員向けサービスの一例
- Web書式作成システムの利用、各種書式のダウンロード
- 税務・法務の無料相談
- キャリアサポート研修制度
- 実務セミナー、Web研修
(出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会『ハトマークグループ5つの入会メリット』)
まとめ
この記事では、一人で不動産会社を起業したい方に向けて、以下の内容を解説しました。
- 不動産会社を起業するまでの7つの流れ
- 不動産会社を一人で起業するメリット・デメリット
- 一人で起業した不動産会社を長く経営するためのポイント
不動産会社を一人で起業するには、経営形態・業種の選択や開業資金の準備、事務所の設置、協会への加入など、さまざまな手続きが必要です。
一人で起業するうえでは、業務内容や進め方を自分で決められることや人件費を抑えられるといったメリットがあります。一方で、売り上げが安定しないリスクがあること、働き手の代わりがいないことにより業務や経営に影響が出る可能性があるなどのデメリットも挙げられます。
起業後に安定した収益を得て長く経営を続けるためには、経営が軌道に乗るまでの十分な運転資金を確保するとともに、経営ノウハウの習得、人脈形成といった取組みを行うことが重要です。
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