【ウッドショック】住宅契約をスムーズに進める合意書の必要性と記載内容
新型コロナウイルス感染症拡大に伴うアメリカの住宅建築需要の高まりによって、建築用木材の供給が追い付かず、木材価格が高騰する“ウッドショック”が起きています。
そうしたなか、施主との住宅契約をスムーズに進めるために交わされているのが、ウッドショックに関する合意書です。
しかし、2021年7月時点では、ウッドショックの影響で工事が遅延している工務店・ビルダーのなかで、合意書を作成できた企業は38%に留まっています。
画像引用元:国土交通省『国土交通省における木材の価格高騰・ 需給逼迫への対応について』
ウッドショックが続くいま、工務店・ビルダーにおいても工事の延長や価格の変更を余儀なくされるケースが生じると考えられます。
施主とのトラブルを防ぎ、住宅建築をスムーズに進めるためにも、ウッドショックに関する内容を記載した合意書を締結することが重要です。
この記事では、ウッドショックにおける合意書の必要性と、記載する内容について解説します。
(出典:国土交通省『国土交通省における木材の価格高騰・需給逼迫への対応について』)
目次[非表示]
- 1.ウッドショックにおける合意書の必要性
- 2.合意書の記載内容
- 2.1.①工事の変更・追加
- 2.2.②工期の変更
- 2.3.③工事請負代金の変更
- 2.4.④規定外事項
- 3.ウッドショックのこれから
- 4.まとめ
ウッドショックにおける合意書の必要性
ウッドショックの合意書とは、木材調達の遅延や木材価格の高騰などによって、契約当初の工期・価格から変更が生じる可能性について、施主から合意を得るための書面です。
ウッドショックの影響で、従来の契約・見積もりとは異なる状況に至る可能性があります。その理由として、主に以下の3つが挙げられます。
▼従来の契約・見積もりから変更が生じる理由
- 建築用木材の調達に通常以上の時間がかかる
- 契約時に想定していた特定の木材の調達が困難になる
- 仕入れ先の木材価格が値上がりして、契約時に想定していた工事原価が高騰する
このように、木材の入手困難・価格高騰によって、施主に仕様変更や工期の延長、請負⼯事代⾦の増額を求めざるを得ないケースがあります。契約内容に変更が生じる可能性について施主に納得してもらい、後々のトラブルを防ぐためにも、合意書の締結が重要です。
なかには、ウッドショックの状況を把握していない施主がいることも考えられます。ウッドショックについて詳細な説明を行い、納得してもらえる合意書を作成して、サインをもらう必要があります。
一方的な合意書は、施主の不信感を招く可能性があるため、価格動向や仕入れ先企業の状況など、実情を踏まえた対応が欠かせません。
ウッドショックの詳しい内容については、こちらの記事をご確認ください。
≫ 2021年はウッドショックで木材が不足? 展望と工務店・ビルダーに求められる対応
合意書の記載内容
ウッドショックに関する合意書には、工期や部材・樹種、価格などの変更・調整が必要になる可能性について記載します。未契約の段階では、ウッドショックの内容を特約事項として契約書面に盛り込むことで対応が可能です。
また、合意の成立を証明するために、合意書は2通作成して記名押印のもと施主と工務店・ビルダーが1通ずつ保管しておきます。法令で定められた合意書の様式はありませんが、主に以下の内容について記載します。
①工事の変更・追加
施主に対して、工事内容の変更・追加を求められる内容を記載します。
木材の価格高騰や輸入量の減少、納品遅延などによって、仕様変更・追加の工事・設計変更が必要となった場合に、施主に対して工事内容の変更・追加を求められます。
工事内容の変更・追加を求める具体的なケースについても記載しておくことが重要です。
▼工事の変更・追加が必要なケース
- 木材の価格高騰によって、特定の部材が入手困難になった
- 木材の輸入量減少によって、使用予定だった樹種が入手困難になった
すでに契約を締結している場合には、変更前・変更後の設計図や見積もりを添付する必要があります。
②工期の変更
施主に対して、工期の変更を求められる内容を記載します。
木材の納品遅延や仕様変更などによって、工期内に工事を完成できなくなった場合、工務店・ビルダー側から工期の変更を求めることが可能です。
工期の変更が必要になるケースについて記載しておくと、施主との認識の相違を防げます。
▽工期の変更が必要なケース
- 使用木材の変更に伴い再設計を余儀なくされ、設計期間の延長が必要になった
- 納入予定だった木材の遅延が発生し、工事がストップしたため、完成時期の延長が必要になった
すでに契約を締結している場合は、変更前と変更後の工期についても記載します。
③工事請負代金の変更
工務店・ビルダー側から施主に対して、工事請負代金の変更を求められる内容を記載します。
ウッドショックによる木材価格の高騰に伴って、請負金額が適当でないと認められる場合に、請負代金の変更を求めることが可能です。
ただし、施主が変更後の請負代金が適当と判断できるように、木材価格の増減基準を定めておくことが大切です。
▼例:木材価格の15%の増額が目安
- 10%増額の場合には請負代金の変更が認められない
- 20%増額の場合には請負代金の変更が認められる
合意書を交わす際は、木材価格の増減基準について説明を行うとともに、合意書への記載だけでなく、打ち合わせ議事録などで記録化しておきます。
すでに契約済みの場合には、変更前と変更後の請負代金を記載する必要があります。
④規定外事項
ウッドショックに伴う工事内容・工期・請負代金の変更以外の内容については、契約に基づいて処理するという旨を記載します。
ウッドショックのこれから
住宅業界に影響を与えるウッドショックは、今後の見通しが立っていない状況です。工務店・ビルダーにおいては、木材の価格高騰や輸入状況を踏まえて、施主との契約を慎重に進めていくことが求められます。
現在、国内の住宅建築に使用される木材は7割弱が輸入材です。そのため、ウッドショックをきっかけに、新築一戸建て住宅売買業にも落ち込みが見られています。
経済産業省によると、2020年のコロナショックで落ち込んだ新築一戸建て住宅売買業は、同年8月には大きく回復を見せていました。しかし、ウッドショックによる価格上昇と連動して、2021年以降には新築一戸建て住宅売買業が低迷しています。
画像引用元:経済産業省『新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響』
画像引用元:経済産業省『新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響』
工務店・ビルダーは、国産木材の活用も含めて、サプライチェーン全体の強化に向けた対策が必要と考えられます。
また、施主とのトラブルをなくして、納得いただける住宅づくりを提案するためには、適切な説明と合意書の締結が重要です。
まとめ
この記事では、ウッドショックに関する合意書について、以下の内容を解説しました。
- ウッドショックにおける合意書の必要性
- 合意書の記載内容
- ウッドショックのこれからについて
現在、ウッドショックによって工事内容・樹種・価格の変更や、工期延長を余儀なくされるケースが発生しています。
契約当初・見積もり時の内容から変更が生じる可能性があるため、施主とのトラブルを防ぐための合意書の締結が必要といえます。
合意書を交わす際は、施主の不信感なく了承を得るために、ウッドショックや工事内容変更後の影響について適切な説明が欠かせません。世界経済や情勢に基づいた誠実な説明を行うことで、合意書締結の理解を得やすくなります。
今回紹介した合意書の内容を踏まえて、工務店・ビルダーの契約に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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