省エネ基準の2つのポイントと改正建築物省エネ法による工務店・ビルダーの対応
2013年の『エネルギーの使用の合理化等に関する法律』(以下、省エネ法)の改正に伴い、建築物における省エネ基準が見直されています。
また、2022年6月17日には省エネ対策をさらに強化するために、『建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律』(以下、建築物省エネ法)が改正されました。
工務店・ビルダーにおいては、現行の省エネ基準の理解を深めるとともに、法改正の内容を踏まえて準備を進めることが重要です。
この記事では、省エネ基準の改正ポイントをはじめ、建築物省エネ法の改正における対応について解説します。
(出典:国土交通省『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について』)
目次[非表示]
- 1.省エネ基準とは
- 2.省エネ基準の2つのポイント
- 2.1.①一次エネルギーの消費量
- 2.2.②外皮の熱性能
- 3.改正建築物省エネ法における工務店・ビルダーの対応
- 4.まとめ
省エネ基準とは
省エネ基準とは、建築物のエネルギー消費性能を確保するために必要な建築物の構造や設備に関して定められている基準です。
省エネ基準の目的は、産業・運輸部門・建築物部門のエネルギー使用の合理化、電気需要の平準化を図り、国民経済の健全な発展に寄与することです。しかし、産業・運輸部門でのエネルギー消費量が減少するなかで、建築物部門においては著しく増加しているという問題が明らかになりました。
こうした背景から、建築物部門での省エネ対策を抜本強化するために、2015年7月8日に建築物省エネ法が公布されて、2016年4月1日から段階的に施行されています。
なお、建築物省エネ法では、住宅の省エネ基準として、現行の省エネ法に基づいた同じ基準が用いられています。
(出典:国土交通省『建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律』『建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の概要』/国土交通省住宅局『住宅・建築の省エネルギー基準』/経済産業省 資源エネルギー庁『省エネ法の概要』)
省エネ基準の2つのポイント
省エネ基準は、2013年の省エネ法改正によって見直されています。
住宅においては、一次エネルギーの消費量の評価基準が加えられて、従来の外皮の熱性能基準も変更されました。それぞれのポイントを解説します。
①一次エネルギーの消費量
省エネ基準として、冷暖房や照明などの一次エネルギーの消費量を評価する基準が加えられています。
地域区分や床面積などの条件のもと、実際の建物の設計仕様で算出した一次エネルギー消費量が、基準値(1999年基準相当の外皮と標準的な設備)以下になることが基本とされています。
一次エネルギー消費量は、以下のとおりです。
▼一次エネルギー消費量に算出される設備
- 空調・暖冷房設備
- 換気設備
- 照明設備
- 給湯設備 など
太陽光発電設備を導入する場合は、全発電量のうち、自家消費相当分の発電量をエネルギー削減量として差し引くことが可能です。
なお、一次エネルギー消費量は以下の計算式で算出できます。
▼住宅における一次エネルギー消費量の計算式
画像引用元:国土交通省『建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の概要』
(出典:国土交通省『建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の概要』/国土交通省住宅局『住宅・建築の省エネルギー基準』)
②外皮の熱性能
外皮の熱性能とは、一定条件の下で算出された、外壁や窓といった住宅の外皮による断熱性を評価する基準のことです。
2013年の省エネ法改正によって、以下のように基準が変更されました。
▼住宅における外皮の熱性能基準
改正前 |
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改正後 |
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外皮の熱性能は、以下改正後の計算式で算出できます。
▼改正前後の計算式
画像引用元:国土交通省住宅局『住宅・建築の省エネルギー基準』
改正前までは、床面積に対する数値を求めていましたが、改正後は外皮表面積に対しての数値に変更されました。
また、法改正後の外皮の熱性能に関する基準値は、以下のとおりです。
▼改正後の省エネ基準値
画像引用元:国土交通省住宅局『住宅・建築の省エネルギー基準』
なお、外皮の熱性能は、地域区分に応じた基準が用いられます。2013年と2019年の2回にわたって改正されているため、最新版を確認して計算することが大切です。
(出典:国土交通省『建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の概要』『改正建築物省エネ法の各措置の内容とポイント』/国土交通省住宅局『住宅・建築の省エネルギー基準』)
改正建築物省エネ法における工務店・ビルダーの対応
『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』が2022年6月17日に公布されて、建築物省エネ法の内容が見直されることとなり、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合義務がづけられました。
そのため、工務店・ビルダーでは、施行される2025年度までにすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準を適合させることが必要です。
また、改正前までは説明義務のみだった小規模の住宅・非住宅においても、2025年以降は省エネ基準適合義務の対象となります。
▼法改正に伴う省エネ基準適合の義務づけ
画像引用元:国土交通省 住宅局『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』
また、改正建築物省エネ法では、省エネ基準適合の義務化に加えて、以下の項目が設けられています。
▼法改正に伴う取組み
- 住宅トップランナー制度の対象拡充
- 省エネ性能表示の推進
- 再エネ導入効果の説明義務
- 形態規制の合理化
なお、省エネ対策の加速とともに木材利用の促進も行われていることから、今後は木材の需要も増すと考えられます。
しかし、木材需要の増加に伴い、建築資材の価格高騰・材料不足(ウッドショック)が続いているため、日ごろから木材需給の動向をチェックしておくことが重要です。
ウッドショックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
≫ 2021年はウッドショックで木材が不足? 展望と工務店・ビルダーに求められる対応
(出典:国土交通省『建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の概要』/国土交通省住宅局『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』)
まとめ
この記事では、住宅の省エネ基準について以下の項目を解説しました。
- 省エネ基準とは
- 省エネ基準の2つのポイント
- 2022年の改正建築物省エネ法における工務店・ビルダーの対応
住宅のエネルギー消費性能の基準を定めた省エネ基準は、2013年の省エネ法改正によって見直されました。
さらに2022年には建築物省エネ法が改正され、2025年度までにはすべての建築物に対して省エネ基準の適合が義務化されることとなります。
工務店・ビルダーでは、省エネ基準を満たした住宅設計を行うとともに、省エネ性能を備えた建築構造・設備に対応していくことが求められます。
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