成約数0→6棟も実現した住宅営業改善例!プロが教える中・長期的な実践的指導論とは?ロープレと検証の重要性
私の本職は工務店やパワービルダーへの営業コンサルティングです。その傍らこのような Web 記事を工務店向けに書いたり、一般エンドユーザー向けに書いたりしています。
2023年現在、本業のコンサルティングでは、最も小規模な企業で一人親方の工務店、一番大きな企業で従業員1000人超えのパワービルダーに関わっています。そして、規模の大小にかかわらず、コンサルティングの結果、成約率をアップさせてさまざまな面で改善させていくことが私の使命です…
こう前置きをしたうえで、私が日々行っている指導現場での話を題材にしていきましょう。
筆者に寄せられるよくある質問や相談
数ある相談事の中から今日はひとつだけ取り上げてご説明をしていきたいと思います。
・「若手の力がつかない」
これが一番多い相談事項です。
一人親方の会社はさすがに関係ありませんが、営業担当者と名の付く社員が一人でもいればこれに該当します。
例えば8人の営業がいる会社があるとしましょう。ベテランといえる営業担当者が3人いて、残りの5人は新入社員から3年目までの社員と仮定します。
この場合、ベテラン勢は社長があれこれ言わなくても数字はしっかり揃えてくるものでしょう。ところが新卒を含めた若手がなかなか売れないので、社長や幹部社員が頭を抱えてしまうのです。
【下の5人が年間あと1棟だけ余分に売ってくれれば万々歳なのだけどね】
社長によく言われるのがこれです。スーパー営業マンは要りません。若手営業があと1棟だけ上積みしてくれれば、会社全体として年間でプラス5棟です。
利益率を考えれば、受注単価一棟2,000万円としても2,500万円から3,000万円の利益が増える計算になります。
最初にチェックすべきこと
私がコンサルティング先で真っ先に手を付けることをご紹介しましょう。
住宅展示場でも現場見学会でもいいのですが、実際の接客を観察するのです。直に見られなくても今はさまざまな手法がありますので、私のような部外者でも簡単にチェックすることが可能です。
チェック項目のひとつをお話しします。
会社紹介をしっかりやっているか。
重要視していない会社がかなりあるのが気になるのですが、どんな会社か?どんな方針なのか? どんな家づくりをしているのか?など、会社のことをしっかりとお客さんに伝えなくては話になりません。
会社の規模は関係ありません。
これをやってないのを確認したら、社長に対して「次回からは全員に必ずやらせてください」と進言しますし、接客が終わった後には営業担当者に対して、会社のことをあれこれと説明できるかどうかを確認します。
これが基本中の基本事項なのですが、この他のことはお客さんとの会話の中から現状の問題点を探っていきます。耐震性の話をお客さんから切り出されたとしましょうか。
これに応じて何らかの答えを営業担当者はするわけですが、内容を確認すると、なんとなくごまかしたような答えをしているケースもあれば、説明自体は間違っていないもののお客さんは納得していないだろうなというケースが次々と出てくるのです。
これらを集約した上で問題点を俎上に上げ、しっかり説明できるまでロープレを徹底的に行います。だまされたと思ってやってみてください。
23年間にわたって住宅営業の現場でコンサルをしてきた人間が自信を持って言い切るチェックポイントです。
※現場で筆者相手にロープレをする1年生営業社員
短期的にはどう対応するか
①ロールプレイングを定期的に行う
これは欠かせないと思います。社員数が少ないとロープレをなかなか行えないという問題点はありますが、それでも時間を工面しながらやっていただきたいと私は思います。
お客さん役を先輩が演じ、若手営業担当者と耐震性について話をするロープレを設定してください。頭の中では説明できても、ロープレ形式をとると話は全く異なります。
実際の場面を想定したやり取りをすることで、力がだんだんとついていきます。
②実際の接客を映像で記録し検証する
中長期ではこれを地道に行っていきます。最近の住宅展示場では録画機能を兼ね備えたカメラを展示場内につけるのが当たり前になってきたので、お客さんとの接客を記録するのは容易だと思います。
その映像を上司がチェックしておかしなところを見つけ出し、そして接客した若手営業担当者と一緒に映像を見ながらおかしなところを直していくのです。これを中長期で繰り返してください。
私が今のコンサルティングで実践していることですが、 確実に若手営業の実力は上がっていきます。
※ZOOMによる多人数参加のロープレ研修
実際のコンサルティング現場で成果が出たこと
A社とさせていただきますが、私のコンサルティング先であったことをそのままご紹介します。
A社に勤務する若手営業担当者の H君は入社2年目。
1年目の成績はゼロ、2年目の夏になっても契約はやはりゼロ。
つまり入社以来1年半経過しても、契約が取れずに苦闘を続けていたのがH君です。
前述したようにいろいろと私がチェックをしたのですが、会社のアフターサービスをはじめとして構造の説明や耐震性の説明、その他の仕様に関してもほぼ頭に入っていたので、ペーパーテストは簡単にクリアしました。
となると、問題は実際の接客です。
展示場で直接見聞きもしましたし、カメラを通じてチェックも行いました。ひとまず7件の接客シーンを確認したのですが、問題点はすぐに浮上したのです。
①雑談ベタ
雑談が実にぎこちなく、お客さんとの間で雑談に持ち込む格好の話題が出たときでも、話をつなげることができずに会話が途切れてしまうのです。
②一方的に説明する
極端というほどではないのですが、説明をするシーンになるとスイッチが入ってしまい、立て板に水のごとくH君は話を続けてしまうのです。
③説明が回りくどい
建物の仕様やアフターサービスなどの知識は問題なかったのですが、実際の接客現場を見て驚いたのが、その回りくどい説明にありました。
二言三言でケリがつくような話を、あれこれと回りくどく話をし続けるのです。私から見ているとお客さんは心の中で「その話はもういいよ」と感じているとしか思えませんでした。
④話をスムーズに前進させられない
説明が回りくどいことも影響しているのでしょうが、展示場を案内するだけで接客が終わってしまうのです。
通常であれば、説明をしながら話をそれとなく前に進めて「プランを書いてみませんか」「現場見学会があるのですがどうですか」「資金計画をしませんか」などと持っていくのが一般的でしょう。
ところがなかなかそういう話になりません。
挙げ句の果てには、何のつなぎもなく唐突に「ところで無料プラン提案を行っているのですがいかがでしょうか」と繰り出すのです。
ひとまずこの4点に気づきました。問題が分かれば、後はロープレや個人面談でこの問題を潰していくだけの話です。
H君のその後の成績は以下の通り。
1年目・・・0棟
2年目・・・9月に1棟、12月に1棟、3月に1棟、5月に2棟、8月に1棟と推移して今に至っています。
大満足とまではいきませんが、以前のひどい成績を考えれば、急成長した彼を褒めてあげていい数字だと私は思っています。
まとめ
最後にご紹介したA社のH君は、入社後17ヶ月間にわたって成績が0だったわけですから、初契約をした9月から翌年の8月までで6棟を契約したことは、飛躍的に実力が伸びたと言ってもいいでしょう。
0を基準にしていますので〇〇%アップという計算はできないのですが、とにかく力がついたというのは間違いない事実です。
今回は、私がコンサルティングで実際に行っている現場の話をしました。
記事ではご紹介していませんが、この他にも接客数目標や接客時間などの目標なども設定していろいろと行っています。
すべてをご紹介しきれなかったので、機会があればその他の数値目標やコンサルティング事例をご紹介していきます。
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