経営・マネジメント

《住宅建築業界で独立》工務店を開業する方法は?その種類と独立のメリット・デメリット

工務店は注文住宅の設計や建物の施工、リフォームなどの建築全般を手がける事業者のことをいい、街の小さな工務店から住宅展示場を設ける大規模な工務店までさまざまです。何を専門分野とするかで工務店の経営スタイルも違ってくるので、それぞれの特徴を踏まえたうえで検討する必要があります。

この記事では、工務店を開業する方法や種類、独立するメリット・デメリットなどを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.工務店を開業するにはどのような方法があるのか
  2. 2.工務店の種類を比較
    1. 2.1.工務店の種類
    2. 2.2.専門分野を決める
  3. 3.各開業方法の特徴と注意点
  4. 4.独立のメリットとデメリット
  5. 5.工務店を開業するための費用

工務店を開業するにはどのような方法があるのか

工務店とは、注文住宅の設計や建物の施工、リフォームなどの建築工事全般を手がける事業者のことをいいます。開業方法としては、法人化して工務店を開業する方法と、一人親方(個人事業主)として独立する方法に分けられます。

また、フランチャイズを募集している大手ハウスメーカーに加盟する形で、工務店を開業する方法もあります。基本的には建設工事にまつわる工程をすべて自店で対応するため、設計・営業・施工管理などの複数の業務を一人で兼任していることもめずらしくありません。

事業規模もさまざまであり、数名程度で営む地域密着型の小さな工務店から、フランチャイズとして加盟することで建築資材の仕入れコストを抑え、本部や他の加盟店と技術や経営に関する情報を共有するスタイルのものがあります。

着工棟数が多く、ハウスメーカーのようにモデルハウスや住宅展示場を設けるなどして積極的な営業活動を行い、近隣のエリアに支店や営業所を設けて幅広く事業展開を行っている工務店もあります。

工務店の種類を比較

一口に工務店と言っても、さまざまな経営形態があります。それぞれどのような違いがあるのかを解説します。


工務店の種類

工務店は業務内容や特徴ごとに、5つのタイプに分けられます。工務店の種類についてまとめると、次のとおりです。


独立自営型

施工特化型

下請け型

リフォーム特化型

不動産会社との連携型

業務内容

注文住宅の設計と施工

注文住宅の施工

ハウスメーカーなどからの下請け施工案件に特化

木造住宅のリフォームに特化

不動産会社が住宅を販売するときに、施工を担当

主な特徴
  • 各種保証に対応
  • 規格化や商品開発に積極的に取り組む
  • 既存顧客からの紹介がメイン
  • 顧客と契約する必要がないので、営業力や交渉力などに不安があっても開業できる
  • 安定したニーズがある
  • 顧客対応は不動産会社が行う
  • 営業力に強い会社と連携すれば、仕事量が安定する

上記のようにさまざまなタイプの工務店がありますが、経営の自由度で考えれば、独立自営型がおすすめです。営業や工事内容が自店で対応できる範囲で仕事を受けるため、経営目的に合わせた運営が行えます。

一方、顧客に対する営業力や交渉力などに不安がある場合は、ハウスメーカーや不動産会社と連携をしながら、下請けとして案件を獲得していくのも1つの方法です。顧客対応を他社に任せられるため、設計や施工に集中した経営を行えます。


専門分野を決める

工務店は産業分類としては「建設業」に該当しますが、細かく分けると「建築工事業
(木造建築工事業を除く)」「木造建築工事業」「建築リフォーム工事業」の3つがあります。工務店は基本的に、木造建築・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の建築物の新築やリフォームを行います。

一通りの工事は行えても、競合する工務店との差別化を図るには、どの分野で強みを出していくのかをきちんと決めておく方がよいといえます。開業にあたっては資格や免許は必要ではありませんが、一定額以上の工事になってくると建設業許可を受ける必要があります。

具体的には、建築一式工事で1,500万円以上、建築一式工事以外は500万円以上の工事は、建設業許可を受ける必要があります。建築一式工事とは、複数の下請け工事業者がそれぞれの専門工事を担当するもので、それらを取りまとめて監督の立場で工事を進めるものを指します。

一般的に、建築確認申請が必要な工事であり、建設業許可を取得するには建設業法が定めている要件を満たす必要があります。建設業許可の申請は自分で行うことも可能ですが、行政書士などに依頼をして手続きを行ってもらうこともできます。

各開業方法の特徴と注意点

工務店を開業する方法としては、「工務店の法人化」「一人親方」「ハウスメーカーのフランチャイズ」といった3つの方法が考えられます。それぞれの特徴と注意点を見ていきましょう。


工務店の法人化

一人親方

ハウスメーカーのフランチャイズ

特徴
  • 会社を設立して、工務店を始める方法
  • 金融機関から融資を受けやすい
  • 青色申告なら赤字を最長10年繰り越せ

  • 仕事を選べ、自由な働き方ができる
  • 技術があれば高い収入が期待できる
  • 人間関係を気    にせずに働ける
  • ハウスメーカーとフランチャイズ契約を結んで開業する方法
  • 営業力の強い会社と組めば、安定的に仕事を確保できる
  • 本部や他の工務店と技術や経営に関する情報を共有できる
注意点
  • 会社を設立するのに一定の費用が必要
  • 会計処理が複雑にな

  • 収入が不安定になりやすい
  • 社会的信用が低いので、融資を受けづらい
  • 長く続けると下請け体質から抜け出しづらくなる
  • 一定のロイヤリティを支払う必要がある

上記のように、どのような形で工務店を開業するかによって、経営のあり方は異なります。自分の向き・不向きや適性などを考慮したうえで、慎重に判断してみましょう。

独立のメリットとデメリット

工務店を独立開業することによって得られるメリット・デメリットは、どのような形態で開業するかで違ってきます。たとえば、工務店を法人化する形で独立する場合、金融機関からの融資や大手企業との取引に期待が持てる半面で、法人化するために一定の費用がかかります。

一方、一人親方として開業する場合は技術力や営業力次第で高収入が見込めるものの、収入が不安定になりやすい部分があります。また、法人と比較をすると社会的な信用に劣るため、融資を受けづらいといった点があげられるでしょう。

そして、ハウスメーカーのフランチャイズとして加盟すれば、大手企業の持つブランド力を使った営業が行えます。マーケティングや営業に関するフォローが受けられますが、一定のロイヤリティを支払う必要があるので負担になる部分もあるでしょう。

それぞれの特徴や注意点を踏まえたうえで、自分の強みを最大限に活かせる方法を選択してみましょう。

工務店を開業するための費用

工務店を開業するために必要な費用は、どのような形態で開業するかで異なります。ここでは、法人として工務店を設立する場合の費用の目安を解説します。

費用項目

金額の目安

ポイント

会社設立費用

30万


株式会社を設立する場合

事務所の取得費用

100万


家賃の6~12ヶ月分

事務所の備品類

50万円

パソコンやコピー機、机などの購入費

車両の取得費用

200万円

営業車両の購入

建設業許可申請

10万円

行政書士への委託報酬

運転資金

500万円

3~6ヶ月分の運転資金

その他の費用

110万円

広告宣伝費・ホームページ制作費・建設工事保険料など

合計

1,000万円


会社設立費用や事務所の取得費用、運転資金などを考えると、安定的な経営を行うためには1,000万円程度の資金は必要だといえるでしょう。また、建設業許可を取得する要件の1つとして、自己資本金または資金調達能力が500万円以上あることを証明する必要があります。

もちろん、建設業許可は後から取得することも可能なので、自己資金や融資で調達できるお金を計算しながら、どのような形態・規模で工務店を始めるのかを検討してみましょう。



●記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:工務店を開業するには?

A:工務店を開業する方法として、法人化・一人親方(個人事業主)・ハウスメーカーのフランチャイズといった方法があげられます。開業後の経営スタイルも意識しながら、自分に合った方法を選んでみましょう。

Q:独立開業するメリット・デメリットは?

A:独立開業することで、自分の考えに沿った形で事業を展開できます。信用が高まれば大きな案件に取り組める一方で、事業規模によっては多くの資金が必要になり、さまざまな経営リスクとも向き合っていく必要があります。

Q:開業にはいくら必要?

A:工務店を開業するために必要な資金は形態によって異なりますが、法人化するのであれば1,000万円程度の資金は必要だといえます。自己資金や借入金などに無理がないか、資金計画を念入りに立ててみましょう。

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監修者 三輪歩己
監修者 三輪歩己
不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)、 相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント。名古屋市立大学薬学部卒。 大学在学中に不動産鑑定士2次試験合格。日本土地建物株式会社にて、 不動産鑑定や不動産証券化業務に従事。その後外資系不動産ファンド等にて 物件購入・管理・経営企画等業務に従事。約20年間の鑑定・宅地建物取引業の 経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。 同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として 活動を行う。

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