【新着】災害に強い家への需要が高まる住宅業界。台風・洪水・地震・火災対策のポイントとは
日本では風雨災害や地震、火災などの被害が年間を通じて発生しており、災害に強い家づくりが住宅会社には求められています。安全性の高い住まいへのニーズは高まっており、それぞれの災害の特徴を踏まえたうえで、強固な家づくりを行っていく必要があります。
この記事では、台風・洪水・地震・火災といった災害に強い家づくりを行うにはどう対応していけばよいかを解説します。
目次[非表示]
- 1.自然災害によって被害件数・被害額は増加している
- 2.安全性が高い家が選ばれる可能性
- 2.1.災害に強い家とは
- 2.2.家を建てる土地選びも重要
- 3.台風と水害に対する対策
- 4.地震に対する対策
- 4.1.上下階が正方形の間取り
- 4.2.耐震等級3がもっとも高い
- 5.火災に対する対策
- 5.1.省令準耐火構造とは
- 5.2.火災保険料が割引になるメリットもある
自然災害によって被害件数・被害額は増加している
日本は地理的要因や気候の特性などから、台風・洪水・地震などの自然災害が多いといえます。経済産業省が公表している「我が国における自然災害の発生状況」という資料によれば、日本における自然災害の発生件数の割合と被害額の割合は、次のとおりです。
災害の種類 |
発生件数の割合 |
被害額の割合 |
---|---|---|
地震 |
17.9% |
82.8% |
台風 |
57.1% |
14.0% |
洪水 |
14.7% |
3.3% |
地すべり |
6.0% |
0.1% |
火山 |
4.3% |
0.002% |
※1985~2018年の自然災害による被害額を集計
上記の統計結果から分かることは、災害の発生件数の割合としては「台風」が57.1%ともっとも高く、次いで「地震」「洪水」の順となっています。また、被害額の割合については、「地震」が82.8%に及んでおり、次いで「台風」「洪水」の順となっていることが分かります。
大規模な地震としては、1995年に発生した阪神・淡路大震災や2011年に発生した東日本大震災のように、ひとたび発生すると甚大な被害をもたらす災害が起こっています。また、近年では豪雨による災害も頻発しており、1時間あたりの降水量が50ミリメートルを超える大雨の発生件数は、過去30年間で1.4倍に増加している状況です。
今後も気候変動の影響などによって、水害が頻発することが懸念されています。
安全性が高い家が選ばれる可能性
自然災害が頻発している日本において、生命や財産を守るために自然災害に対する安全性の高い家への需要は高まっているといえます。災害に強い家とはどのような特徴を備えているのかを解説します。
災害に強い家とは
災害に強い家とは、耐震構造・耐火構造がしっかりとしており、地盤が強く、定期的なメンテナンスが行われている住宅だといえます。災害に強い家について考えるときは、家の形状・構造・材質・外壁・屋根などをしっかりと考えて設計する必要があります。
地域によって、頻発しやすい自然災害の種類はさまざまなので、予算と照らし合わせながら災害に強い家づくりを進めていくことが大切です。施工予定地で想定される被害をハザードマップなどで事前に確認し、どのような家づくりを行うかを検討してみましょう。
家を建てる土地選びも重要
災害への強さは建物の頑丈さだけでなく、家を建てる土地の強さも大きな影響を与えます。国土交通省が公開している「重ねるハザードマップ」を活用すれば、地震による地盤の強さだけでなく、洪水や土砂災害に関する情報も把握できます。
また、防災科学技術研究所が公開している地震ハザードステーション「J-SHIS」を利用すれば、地震が発生したときの揺れやすさを確認できます。さらに、各自治体が公表しているハザードマップでは、津波や火山が噴火したときの影響などもチェックできます。
家を建てる予定の土地を現地確認し、道路の陥没や周辺地域の塀に亀裂が入っていないかなどの確認も必要だといえるでしょう。複数の情報源から得られる情報を照らし合わせることによって、災害に強い家づくりにつなげられるはずです。
台風と水害に対する対策
台風や豪雨による災害は毎年のように起こっており、風雨に強い家づくりが求められています。ここでは、屋根と立地の観点からポイントを解説します。
台風への強さは屋根の形状が関係している
台風に強い家は後述する地震に強い家の特徴と似ている部分がありますが、台風の場合は屋根の形状も関係してくるので注意が必要です。一般的に普及している屋根の形状は、寄棟(よせむね)・切妻屋根・片流れですが、この中でもっとも台風に強い屋根は「寄棟」だといわれています。
寄棟は頂上部から四方向に風が分散される構造なので、台風による被害を最小限に食い止められるでしょう。切妻屋根や片流れは、風を分散させる働きが限定的なので、台風による被害を抑えたいなら、寄棟を選択するのが無難です。
軒が狭いと雨漏りなどの被害に懸念がある
水害に強い家を建てるには、まず何よりも立地が重要です。河川や海に近い土地は水に関係した災害が多いので、高台に家を建てるといったことも検討する必要があるでしょう。
また、デザイン性を重視した住宅の場合、軒の広さには注意が必要です。軒とは、外壁からせり出した屋根の部分をいいます。雨が外壁に浸透するのを防ぐ役割があります。
デザイン性を重視するあまり、軒が狭すぎたり、そもそも軒を設けていなかったりする物件では雨漏りの被害が拡大する懸念があるでしょう。
地震に対する対策
先に述べたように、日本では大規模な地震が起こると甚大な被害が発生するため、地震に強い家づくりを行うことは欠かせません。どのような観点から考えればよいかを解説します。
上下階が正方形の間取り
地震に強い家づくりを目指すなら、上下階が正方形となる間取りがよいといえます。凹凸のある間取りや下階よりも上階が張り出している間取り(オーバーハング)は、地震に弱い間取りとなるので注意が必要です。
耐震等級3がもっとも高い
耐震等級とは住宅性能評価制度に基づいて、地震への強度を第三者である評価機関が判定した基準です。建築基準法上、最低限の基準を満たしている耐震等級1から、もっとも地震に強いとされる耐震等級3までの3段階があります。
火災に対する対策
火災に強い家を建てるには、耐火性の基準の1つである「省令準耐火構造」を重視する必要があります。どのような特徴があるのかを解説します。
省令準耐火構造とは
省令準耐火構造とは、建築基準法で定める準耐火構造に準じた防火性能を持つ住宅のことを指します。火災が発生した際に燃え広がらない構造になっており、大きく分けて「外部からの延焼防止」「各室の防火」「他室への延焼遅延」といった特徴を備えています。
外部からの延焼防止は、近隣の住宅で火災が起きたときに炎が燃え移らないための構造をしていることがあげられます。防火サイディング壁を使用したり、屋根や軒裏などに不燃材料を用いたりすることで防火性能を高めます。
各室の防火性能を高めるには、壁や天井に石膏(せっこう)ボードを使用するなどして、火元となる部屋から一定の時間、火を出さない構造にするのが特徴です。そして、他室への延焼遅延については、炎の通り道になる壁や天井、床内部などにファイヤーストップ材を使用して、他の部屋に燃え広がるのを防ぐ構造となっています。
火災保険料が割引になるメリットもある
防火性の高い建物であれば、火災によるリスクが低いと見なされて、火災保険料が割り引かれる場合があります。建物の構造によって火災保険料に違いがありますが、省令準耐火構造に当てはまると保険料を抑えられるメリットがあるのです。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:日本で一番多い災害は?
A:経済産業省が公表している資料によれば、1985~2018年の間で日本における災害の発生件数でもっとも多いものは「台風」となっています。また、被害額の面で見ると「地震」が大きな被害を与えていることが分かります。
Q:災害に強い家を建てるには?
A:災害に強い家は、耐震構造・耐火構造がしっかりとしており、地盤が強く、定期的なメンテナンスが行われている住宅です。家の形状や構造、材質などを考慮して設計する必要があります。
Q:災害に強い土地はどうやって調べる?
A:国土交通省が公開している「重ねるハザードマップ」を活用すれば、地震による地盤の強さや洪水などに関する情報を把握できます。地域によって起こりやすい災害の特徴は異なるので、各自治体が公表しているハザードマップなども参考にしてみましょう。