【建設業界・工務店向け】業務効率化を支援|IT導入補助金とは? 活用方法と申請手順
労働人口の減少に伴う人手不足は、多くの業界や企業にとって深刻な課題となっています。特に建設業界は2024年から時間外労働の上限規制が適用されることもあり、人材難がさらに深刻化すると考えられています。
こうした課題を解決する方法として、特に有力視されているのが「ITの活用による業務効率化」です。ITツールやサービスの導入時には、一定の要件を満たせば補助金を受け取ることもできるため、比較的に実現しやすい状況にあるといえるでしょう。
今回はIT導入補助金について、活用方法や申請の手順をご紹介します。
目次[非表示]
- 1.IT導入補助金とは?
- 1.1.対象となる企業の基本的な条件
- 2.IT導入補助金の活用方法
- 2.1.通常枠:A類型・B類型
- 2.2.セキュリティ対策推進枠
- 2.3.デジタル化基盤導入枠
- 3.IT導入補助金の申請手順
- 4.IT導入補助金の注意点
- 4.1.ITツール導入の目的を明確にする
- 4.2.現場と専門家の意見に耳を傾ける
- 4.3.補助対象期間終了後のランニングコストも考慮する
IT導入補助金とは?
「IT導入補助金」とは、「中小企業・小規模事業者」が一定の条件を満たした状態でITツール(サービス・ソフトウェア)などを導入した際に受け取れる補助金です。中小企業などの労働生産性を向上させるために、業務効率化やDXを推進するのが主な目的であり、相談対応などのサポート費用も補助対象に含まれています。
なお、ここでいう「中小企業・小規模事業者」とは、中小企業基本法の定義に則って判断され、建設業の条件は「資本金3億円以下または従業員数300人以下」です。さらに、そのうち生産性の向上を目的にITツールを導入し、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請したものが対象とされています。
また、補助の対象となるITツールも、事前に事務局の審査を受けたうえで、補助金ホームページに公開(登録)されているものに限定されています。
対象となる企業の基本的な条件
IT導入補助金を利用するためには、さまざまな要件を満たす必要があります。ここでは、代表的なものを確認しておきましょう。
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後ほど詳しくご紹介しますが、IT導入補助金にはさまざまな枠組みが設けられています。たとえば、通常枠という枠組みの補助金を利用する場合は、労働生産性の伸び率「1年後が3%以上」「3年後が9%以上」および、これらと同等以上の生産性向上を目的とした数値目標を設定し、計画書として作成する必要があります。
また、どの枠組みを利用する場合でも、生産性向上の成果を示した「事業実施効果報告」や、支払った金額などを記載した「事業実績報告」を行う必要がある点に注意が必要です。
IT導入補助金の活用方法
IT導入補助金は、枠や類型によって補助の対象や金額が異なります。ここでは、それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
通常枠:A類型・B類型
生産性向上に役立つ幅広いITツールの導入に利用できる枠です。具体的には、会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトなどのソフトウェア購入費・導入費用・クラウドサービスの利用料などが該当します。
ただし、ハードウェアは対象外なので注意しておきましょう。このうち、A類型では1つ以上のプロセス、B類型では4つ以上のプロセスを必要とします。
プロセスとは、「顧客対応」「決済」「供給・在庫・物流」「会計・財務」「総務・人事」などの具体的な機能のことです。B類型を利用するには、4つ以上の機能を保有したソフトウェアの導入・申請が必要なので注意しましょう。
なお、A類型・B類型のそれぞれの違いは以下のとおりです。
A類型 |
B類型 |
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必要なプロセス数 |
35歳 |
4以上 |
補助金額 |
5万~150万円未満 |
150万~450万円 |
補助率 |
1/2以内 |
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賃上げ目標 |
申請時の加点要素となる |
必須条件かつ未達の場合は補助金返還の必要あり |
セキュリティ対策推進枠
IT導入補助金は、セキュリティ対策にも活用することができます。「セキュリティ対策推進枠」では、「サイバーセキュリティお助け隊サービス利用料」が最大で2年分まで補助され、補助率1/2以内、補助金額5万~100万円を上限に利用可能です。
サイバーセキュリティお助け隊サービスとは、経済産業省および独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施するサービスです。中小企業のサイバーセキュリティに必要な各種サービスが、ワンパッケージで安価に提供されているので、比較的に導入しやすい仕組みとなっています。
デジタル化基盤導入枠
「デジタル化基盤導入枠」は、新型コロナウイルスやインボイスの影響を受けつつも生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者の支援を目的に、通常枠よりも補助率を引き下げて優先的な支援を行う枠です。単独申請が可能な「デジタル化基盤導入類型」と、10以上の事業者が共同申請する「複数社連携IT導入類型」の2種類があります。
デジタル化基盤導入枠では、会計・受発注・決済・ECなどのソフトウェア購入費、クラウド利用料のほか、PC・タブレット、レジ・券売機等のハードウェアも対象となるのが特徴です。
デジタル化基盤導入類型 | |
補助金額 |
ソフトウェア:50万円以下の部分は1プロセス以上、50万円超350万円以下の部分は2プロセス以上が対象 |
ハードウェア:導入設備に応じて10万円以下または20万円以下 |
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補助率 |
ソフトウェア:50万円以下部分は3/4以内、50万円超350万円以下の部分は2/3以内 |
ハードウェア:1/2以内 | |
賃上げ目標 |
申請時の加点要素 |
複数社連携IT導入類型 | |
補助金額 |
デジタル化基盤導入類型と同様のものに加えて、以下の金額が対象
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補助上限額 |
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補助率 |
デジタル化基盤導入類型と同様のものに加えて、デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費は2/3以内 |
IT導入補助金の申請手順
IT導入補助金の申請手順は次のとおりです。
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まずは、IT導入補助金の仕組みを各企業が理解し、情報収集を行ったうえで必要なITツールを選定します。このとき、パートナーとなるIT導入支援事業者からもITツールの提案を受け、一緒に手続きを進めていく必要があります。
その後、企業側は交付申請を行い、補助事業を実施します。このとき、IT導入支援事業者にはITツールの契約・納入を行ってもらい、スムーズな導入をサポートしてもらいましょう。
その後、事業実績の報告を行って補助金交付の手続きを受けたら、事業実施効果報告を実施します。この間も、IT導入支援事業者からはサポートやアフターフォローを受け、生産性向上の後押しをしてもらうこととなります。
このように、導入支援事業者の存在が大きな役割を果たすため、信頼のおける事業者を見極めることがとても重要です。「長い付き合いが可能」「導入実績が豊富」「事前の説明が明快で丁寧」といった観点から、最適なパートナーをじっくり見極めましょう。
IT導入補助金の注意点
最後に、IT導入補助金を活用する際の注意点を見ていきましょう。なお、IT導入補助金の公式ホームページで最新情報をチェックし、申請期日や要件などに問題がないかをしっかりと確認しておくことも大切です。
ITツール導入の目的を明確にする
制度をきちんと活用するためには、自社に必要なITツールを慎重に見極める必要があります。まずは、自社にITツールを導入することで、どのような業務改善につながるのかを数字で分析することが大切です。
そのうえで、本当に生産性が向上すると判断できた場合に、はじめて補助金の利用を考えるというのが正当な順序といえます。つまり、導入補助金をきちんと役立てるには、正確な現状分析と見通しが必要になるということです。
現場と専門家の意見に耳を傾ける
ITツールの選定にあたっては、実際に触れる機会が多い現場の従業員にも意見を聞くことが大切です。せっかく導入したシステムが形骸化してしまわないためにも、現場目線での使い勝手をきちんと確認しておきましょう。
また、専門家にもアドバイスを求め、自社にどのようなITツールが適しているかを相談することも大切です。いくら高性能なものをそろえても、必要以上の機能が搭載されている場合は、かえって利用者を混乱させてしまうこともあります。
効果的な導入を目指すためには、過不足のない機能と分かりやすいシステム、誰でも扱える操作性の高さを追求することが重要です。
補助対象期間終了後のランニングコストも考慮する
IT導入補助金は、補助対象期間が限られているため、その後のランニングコストをきちんと見積もっておく必要があります。クラウド利用料やシステムの管理料などは、補助期間後も定期的に発生するため、事前に確認しておくことが大切です。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:IT導入補助金とは?
A:中小企業・小規模事業者が一定の条件を満たしたうえでITツール(サービス・ソフトウェア)などを導入した際に受け取れる補助金です。関連する相談業務やセキュリティ対策などの費用捻出にも活用することができます。
Q:IT導入補助金の申請方法は?
A:申請は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで行う必要があります。労働生産性の目標計画を作成する(通常枠の場合)とともに、事業実績の報告や事業実施効果の報告が義務付けられています。
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