『商品企画』は『営業』と『設計』による『商品運用』の4ステップ
住宅会社/工務店の商品企画というと、従来は「性能」レベル設定の他では、「デザイン」と「プラン」に何か良いアイデアはないかといった程度で考えられていました。住宅を「モノ視点」で捉えた特徴づくりの商品企画というレベルでした。
結果として営業はこれを「営業提案」、設計も「設計提案」する場合が多くなり、押し付けられたというお客様の印象から「注文住宅なのに」という不満が出ていました。
また、逆に商品企画の内容は、それはそれとして「フリー設計ですから」と実際の営業や設計の場面では商品の影は薄いか「全く無い」といった運用状況に陥ってしまうというのが、これまでの実情でした。
注文住宅は「お客様の暮らしを中心に考える」視点で、「個々のお客様の暮らしに最適な住宅を提供する」ことが目的です。このような注文住宅の「本質」に基づく、これから先の未来に続く商品企画の機能は、自社が獲得したい客層への「自社の住まいづくりのポリシーの提示」と「お客様の新しい住まいづくりへの触発」がメイン機能です。
そして営業と設計がこの2つの機能を実戦で有効に使うための「商品運用」のしくみを共に活用して、初めて商品企画は機能できるようになります。
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「自社の住まいづくりのポリシー」の設定が商品企画の基盤
お客様に対しても、社内的にも自社としてどのような考え方で住まいづくりを進めるのかという「自社の住まいづくりポリシー」を鮮明化します。
自社の住まいづくりは「概ねこんな感じ」というレベルでは営業、設計、工事という住まいづくりの各部署全員へ会社の意思徹底ができないため、先ず住まいづくりの方向性を明確にする必要があります。
この「住まいづくりポリシーの軸」が曖昧ですと「A社がG2性能だから対抗のためにG3にしたい」とか「3間の大開口をB社が訴求してきたから同等以上で対応したい」とか他社に影響されて自社の立ち位置を見失い、商品企画の方向感を失って漂流してしまいます。
よくある商品企画の失敗です。どのような住まいづくりを目指すのかという「自社の考え方」が商品企画では最も重要です。
「商品企画8つのコンセプト」の設定は自社住まいづくりのポリシーの具現化
「住まいづくりのポリシーという軸」に基づいて「商品企画8つのコンセプト」を設定します。
- 外観コンセプト
- プラン空間コンセプト
- 構造/工法(性能)コンセプト
- 仕様(設備/部材)コンセプト
- 暮らしやすさコンセプト
- 住まいづくりプロセスコンセプト
- 価格コンセプト
- 企業コンセプト〈自社の住まいづくりポリシー〉
各コンセプトは、いくつかの「コンテンツ」で構成され、各コンテンツがもたらす「ユーザーメリット」を鮮明化させることで一貫した「自社の住まいづくりポリシーの提示」が可能になり、それを「8つのコンセプト」で構成することが商品企画です。
これまでにいくつかご紹介した商品企画要素例の「スーパーテーブル」「ゴロゴロリビング」「サンクンリビング」「2畳の子供部屋+プレイルーム」等はこのコンテンツに当たります。
アイデアとしてこうしたコンテンツを採用するのではなく「自社の住まいづくりポリシー」で採否を検討します。
社内での様々な商品企画に対する意見も同様に「自社の住まいづくりポリシー」判断します。
商品企画プロジェクトで「ポリシー設定」
商品企画は、会社のこれまでの歴史の中で培ってきた様々な積み重ねがあります。これをベースに未来に向けた「自社の住まいづくりポリシー」を明確にしていきます。社内各部のオピニオンリーダーにも参加してもらい、商品企画の専門家のコーディネートで商品企画プロジェクトを進めるのが最も確実で素早くまとまります。
取って付けたポリシーというのは自社で運用することはできませんので、内部にある住まいづくりの考え方の要素を集めて整理するところから始め、まとめ上げて行くというのが王道です。
「お客様の新しい住まいづくりへの触発」が商品企画の目的
注文住宅の商品企画内容である、各「コンテンツ」は営業や設計がお客様へ押し付けるものではなく、新しい住まいづくりを進めるにあたって「お客様の暮らしを中心に考える」中で、個々のお客様の暮らし、お考え、価値観に応じて、「新しい住まいで実現したい暮らしを触発」する場面で活用します。
商品企画は、個々のお客様の新しい住まいづくりへの触発場面で活かすことが主目的です。
これが注文住宅の商品企画であり商品開発です。
「営業」と「設計」で効果的に商品企画を活かす「商品運用」セオリーの設定
商品企画を活かすためには「営業」と「設計」がリンクした「商品運用」のしくみと運用時の考え方を統一する「セオリー化」が大切です。
- 気づき共感営業セオリー
- 暮らしフィット設計セオリー
この2つのセオリーは連動させて、初めて会社のしくみとして「商品運用」することができ、「受注棟数と金額アップ」を実現することに繋がります。
「商品企画+営業セオリー+設計セオリー+商品運用」の4ステップ
営業と設計が連携して商品を運用することができて初めて商品企画は有効になり、業績アップにつながりますから、商品企画という単独の分野ではなく運用面での営業と設計の連動を必ず商品企画に織り込んで進めることが必須です。
特に中高級住宅の客層で発展を考えておられる住宅会社/工務店では特に重要です。
人材育成と組織拡大には『商品企画』『営業セオリー』『設計セオリー』による『商品運用』の4ステップは特に有効
前回のコラムで商品企画での成功例として「受注棟数1.5倍、受注金額1.8倍、1棟単価1.2倍」の成功事例をご紹介しましたが、この4ステップを構築運用された事例です。
また、人材育成に重点を置かれる場合や、これから組織拡大を図ろうとされておられる住宅会社/工務店には、特にこの4ステップは有効です。
「商品企画」を軸として「営業セオリー」「設計セオリー」という営業と設計の人材を活かし、リンクさせるための「考え方」は、人材育成面でも、大きくなった組織で、まとまりある受注活動を実現させるためにも不可欠です。
別事例として営業拠点を2ヵ所から8ヵ所に拡大され、2年後の業績が棟数ベースで3.8倍、金額ベースで4.4倍という結果を残された会社はこの4ステップの成功例です。
また、同時に新卒新人の戦力化(直近の半年間で全社平均受注棟数/人の8割達成がこの会社の戦力化基準)に、3年半掛かっていたものが初年度で達成できた社員が7割、1.5年で全員達成。さらに初年度終了時の離職率が3割超えであったものが、ゼロと大幅に改善されました。
このように様々な角度で実績効果を上げることができた根底にあったのは、商品企画の4ステップです。
まとめ
4回に亘った商品企画に関してのコラムでしたが、住宅販売価格上昇局面の市況環境に於いて、自社の従来客層から自然に資金面で対応可能な上位客層へ変化していると思います。
このような客層の変化時にこそ商品企画は、重要な分野であり強化すべきです。
同時に商品企画単独ではなく営業と設計という前線で運用可能で業績に直結できる仕組みとして捉えていただくことがポイントです。
住宅市場はSNSでも顕著なようにユーザーが情報発信する時代です。そのユーザーをさらに触発してリードできる商品企画と運用へ進化させることを考える時期に来ています。