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鉄骨造におけるブレース構造とは?ラーメン構造や壁式構造との違いと特徴を解説

鉄骨造におけるブレース構造とは?ラーメン構造や壁式構造との違いと特徴を解説

鉄骨造にはさまざまな構造・工法があり、それぞれに異なる特徴を持っています。「ブレース構造」とは、補強材を斜めにたすき掛けし、主に鉄骨造の建物の強度を高める手法です。

今回は鉄骨造の代表的な構造である「ラーメン構造」や「壁式構造」との違いを踏まえながら、ブレース構造の特徴や耐震性について解説します。また、ブレース構造で設計する際に重要となる3つの計算項目についても、基本的なポイントを確認しておきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.鉄骨造のブレース構造とは
    1. 1.1.ブレース構造の仕組み
    2. 1.2.ブレース構造のメリット
  2. 2.ブレースと筋交い(すじかい)に違いはある?
  3. 3.ラーメン構造との違い
    1. 3.1.ラーメン構造の仕組みと特徴
    2. 3.2.ブレース構造との違い
  4. 4.壁式構造との違い
    1. 4.1.壁式構造の仕組みと特徴
    2. 4.2.ブレース構造との違い
  5. 5.ブレース構造では3つの計算項目が重要
    1. 5.1.ブレース構造計算項目①:応力算定
    2. 5.2.ブレース構造計算項目②:断面算定
    3. 5.3.ブレース構造計算項目③:保有耐力接合
  6. 6.この記事を監修した人

鉄骨造のブレース構造とは

「ブレース」とは、建物を補強するための鉄骨などでできた部材の一つです。主に鉄骨造の建物などで用いられ、ブレースを用いた構造のことを「ブレース構造」と呼びます。

ここではまず、ブレース構造の基本的な仕組みや特徴について見ていきましょう。

ブレース構造の仕組み

ブレース構造は、対角線上にある2ヶ所の柱と梁の交点部に対しブレースを斜めに渡し強度を高める構造のことです。ブレースを入れることにより、水平方向からの外力を受けたときにブレースが荷重を受け止め、柱や梁などの主要部材が支えられます。

そのため、風や地震に対して強いのが特徴であり、建物だけでなく自動車や航空機などにも採用されています。また、たすき掛けされたブレースによって引張力が強くなるため、建物の変形も防止することができます。

ブレース構造のメリット

ブレース構造のもっとも大きなメリットは、前述のように水平方向への高い強度にあります。そのうえで、ブレースはボルトを締めるだけで接合できるため、取り付けが行いやすく、少ない工期・工程数で合理的に強度を向上させられるのもメリットです。

ブレースと筋交い(すじかい)に違いはある?

ブレースと類似した特徴を持つ部材に「筋交い(すじかい)」があります。どちらも柱と梁による(垂直・水平)軸組みに対し、斜め部材を入れることで建物の耐震性を高めるという特徴を持っていますが、両者は材料や用途が異なります。

ブレースは金属製の補強材であり、主に鉄骨造の建物の強度を高めるために用いられるものです。それに対して、筋交いは木造在来工法(軸組構造)の建物に古くから用いられてきたものであり、材料には木材が使用される点に違いがあります。

ただし、基本的な目的や仕組みは共通しているため、ブレースも筋交いも同様のものとして扱われるのが一般的です。

ラーメン構造との違い

鉄骨造の構造には、ブレース構造以外にも「ラーメン構造」や「壁式構造」などの種類があります。ここでは、ラーメン構造の特徴について、ブレース構造との違いを比較しながら見ていきましょう。

ラーメン構造の仕組みと特徴

ラーメン構造のラーメン(Rahmen)とは、「額縁」という意味を持つドイツ語です。柱と梁を剛接合して、両者を一体化するように接合させ、強力なフレームで建物を支えるのが特徴です。
剛接合された柱と梁によって接合部分の強度を高め、耐震性を向上させるという仕組みがとられています。

ブレース構造との違い

ラーメン構造とブレース構造の違いは斜め材の有無にあります。ラーメン構造はブレースによって構造を補強するのではなく、柱と梁の接合部そのものを強化するのが基本的な仕組みです。

そのため、両者を比べた場合は、ラーメン構造のほうが柱や梁などの部材は大きくなります。それにより、部材の容積が増えるため、ブレース構造に比べるとコストが高くなる傾向にあります。

一方、ラーメン構造は斜め材が不要な分だけ空間が広く取れるため、間取りの自由度が高まるのがメリットです。開放感のある空間づくりが行えるだけでなく、リノベーションがしやすいという強みも持っています。

壁式構造との違い

続いて、壁式構造の特徴やブレース構造との違いについて見ていきましょう。

壁式構造の仕組みと特徴

壁式構造とは、その名のとおり壁で建物を支える構造のことです。柱や梁を用いずに、ワンフロアずつを壁と天井で組み立て、それを何層にも組み上げて一つの建物を構成します。

壁式構造では「耐力壁」という鉄筋コンクリートでできた高強度の壁を用い、「面」で建物を支えるため、優れた耐震性を持つのが特徴です。また、分厚い壁を用いることで、高い防音性・断熱性を実現できるのも強みといえます。

ただし、重たい耐力壁の自重を支える必要があるため、あまり高層の建物に用いることはできません。

ブレース構造との違い

壁式構造はブレース構造と異なり、柱がないため空間を大きく取れるのが特徴です。しかし、構造上耐力壁を取り払うことはできないため、間取りの変更などは行いにくく、リノベーションの自由度は低いといえます。

ブレース構造では3つの計算項目が重要

ブレース構造を用いる際には、「応力算定」「断面算定」「保有耐力接合」の3つの計算項目が必要となります。ここでは、それぞれの計算項目について解説します。

ブレース構造計算項目①:応力算定

応力算定とは、荷重に対して発生する「応力」を算定するプロセスです。応力とは、力を受けた物体の内部に発生する力のことであり、外力や変形に抵抗する力と言い換えることも可能です。

応力は「荷重÷断面積」で求めるため、同じ荷重であれば「断面積が大きいほど応力が小さくなる」と考えます。応力が大きいほど、物体が受けてしまうストレスが強くなるため、基本的には断面積を大きくして応力を小さくすることが強度の向上につながります。

応力には圧縮された際に生じる「圧縮応力」、物体が曲がる際に生じる「曲げモーメント」、物体を逆向きの力で水平にスライドした際に生じる「せん断力」、外部から物体を引き伸ばした際に生じる「引張応力」などの種類があります。なお、ブレース構造におけるブレース部材の応力算定では、水平力がベクトル分だけ割り増しになる点に注意が必要です。

ブレースが斜め部材であるため、「斜め長さ÷水平長さ」の割り増し分を計算に入れる必要があります。

ブレース構造計算項目②:断面算定

断面算定とは、断面に作用する断面応力に基づき、柱や梁の断面寸法、配筋、断面の形状などを計算するプロセスです。ブレースの断面算定では、単純な断面積ではなく「有効断面積」を用いる点に注意しましょう。

有効断面積とは、外力の負担において実際に有効となる断面積のことであり、単純な断面積よりも小さい値になります。また、ブレースはボルトでプレートに接合するため、穴の欠損分だけさらに断面積は小さくなります。

ブレース構造計算項目③:保有耐力接合

保有耐力接合は、大地震などで部材よりも先に接合部が破壊されるのを防ぐために行われるプロセスです。通常、鉄骨構造では大地震などの強力な外力が発生した場合、部材が塑性変形することでエネルギーを吸収できるという特性があります。

しかし、接合部の耐力が不十分な強度であれば、部材の変形によってエネルギーが受け止められる前に、構造そのものが崩れてしまう恐れがあります。そこで、接合部の耐力は部材の耐力よりも高くなるように設計する必要があるのです。

ブレース構造の場合も、地震などに対してはブレースが水平力を負担することでエネルギーを軽減する仕組みとなっていますが、接合部が先に破壊されれば本来の機能が発揮されません。そのため、保有耐力接合の計算を行い、接合部の十分な強度を確保する必要があります。

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●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:ブレース構造とは?
A:
鉄骨などでできた補強材を柱と梁に囲まれた面に斜めに渡し、地震や風などの水平荷重を受け流すようにした構造のことです。ブレースによって引張応力が強くなるため、建物の変形も防止することができます。

Q:ラーメン構造とブレース構造の違いは?
A:
ラーメン構造とは太い柱と梁で強力なフレームをつくり、建物の荷重を支える構造のことです。ブレース構造と比べると空間を広く使えるため、間取りの自由度が高いのはメリットですが、コストはラーメン構造のほうが高くなる傾向にあります。

Q:壁式構造とブレース構造の違いは?
A:
壁式構造とは、天井と耐力壁のみで構成した構造のことです。「面」で建物を支えるため、強度に優れるとともに防音性も高いのがメリットである一方、耐力壁は省略できないためリノベーションの自由度は低くなります。また、自重があるため高層化は難しいとされます。

この記事を監修した人

岩納 年成(一級建築士)

大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。

土地の目利きや打合せ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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