<新着>【2025年】変化する住宅市場で選ばれる工務店になるためのマーケティング戦略
住宅業界は、社会経済の動向や消費者のライフスタイルの変化にとても敏感に反応する分野です。
特に地域に根ざした工務店にとって、この変化を読み取り、適切に対応することは、今後さらなる事業成長のためには必要不可欠となります。2025年を迎えた今、デジタル技術の進化、気候の変化、AIの発達などにより、工務店のマーケティング戦略も大きな転換点を迎えています。
本記事では、変化する市場環境の中で工務店が成功するために押さえるべきマーケティングのポイントについて解説します。
2025年はどんな変化が起きている?
まずは、2025年にはどのような変化が起き、その変化が住宅購入を検討する人の心理にどのような影響を与えているのかを考えてみたいと思います。
金利上昇による住宅購入の優先順位の変化
2024年10月からの大手5行による既契約変動金利の0.15%引き上げにより、住宅購入を検討する消費者の優先順位に変化が見られています。
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2024年10月調査)」によると、住宅ローン利用者の約4割(39.1%)が「日本銀行の金融政策変更を受けて、住宅ローン選択に変化があった」と回答しており、「借入額を減らした」(5.4%)、「変動金利タイプから固定金利タイプへ見直した」(5.0%)などの対応が見られます。
また、同調査では住宅ローン利用者の62.9%が「今後1年間で住宅ローン金利は上昇する」と予想しており、将来の金利動向を見据えた住宅ローン選びが進んでいます。
参考資料:住宅ローン利用者の実態調査結果- 住宅金融支援機構 国際・調査部
SNS情報過多により「選べない」人が増えている
XやInstagramをはじめとする企業のSNSの活用は、いまや当たり前となっています。とくに画像と相性がよい住宅業界のInstagramを利用してる企業が多く、住宅購入者においても、Instagramで「施工実績」や「社員(=営業担当者)」「工務店・ハウスメーカーの雰囲気」などさまざまな情報が発信されています。
一方で、「物件見すぎて決められない」「情報が多すぎて混乱する」という声も増えています。住宅に限った調査ではありませんが、アクセンチュアが行った日本を含む世界12ヶ国1万9,000人の消費者を対象にした2024年にアクセンチュアの行った調査では、「情報過多」の問題が浮き彫りになりました。消費者の73%は選択肢が多すぎると思っており、74%の消費者が、商品を購入しようとしていたのにもかかわらず、途中で買うことをやめていたことがわかった。
このように情報が多すぎるという実態が、購入に対してネガティブに働き始めているのです。
参考資料:RESEARCH REPORT「The empowered consumer」
止まらない「多様化」。ライフスタイルと住宅ニーズの個別化
日本社会では働き方や家族形態、価値観の多様化が進み、それに伴い住宅に求められる機能やデザインも個別化・多様化しています。テレワークの定着により「仕事部屋」の需要が高まり、単身世帯や子どものいない夫婦、シングルペアレント、多世代同居など、従来の「標準的な家族」を前提としない住まいづくりの重要性が増しています。
分野 |
2023年 |
2024年 |
2023年 |
働き方 |
・ハイブリッドワークの一般化 |
・4日勤務制の試験導入 |
・AIとの共生による業務革新 |
住まい方 |
・郊外・地方移住の継続 ・在宅ワークスペースの確保 |
・スマートホーム技術の普及 |
・さらに個別化された住環境 ・多拠点生活の主流化 |
価値観 |
・健康志向の強化 ・デジタル活用の拡大 |
・ミニマリスト傾向 |
・サステナビリティ志向 |
【2025年】選ばれる工務店に必要な要素
金利上昇や建築コスト高騰が続く2025年の住宅市場において、工務店が顧客に選ばれるためには、どのような要素が重要となるのでしょうか。
住宅購入・建築検討者調査によると、注文住宅を検討している層のうち「工務店」を選んだ割合は約30.7%にとどまり、ハウスメーカーを選んだ約65.4%と比較して明確な差があります。工務店が市場で存在感を高め、顧客から「選ばれる存在」になるには、大手ハウスメーカーとは異なる独自の価値が不可欠です。
参考資料:『住宅購入・建築検討者』調査(2023年)- リクルートリサーチセンター
①「なぜこの工務店で建てるべきか」という明確な理由
大手ハウスメーカーのような圧倒的な知名度がある場合は別ですが、多くの工務店はそうした優位性を持ち合わせていないと思います。
2025年の住宅市場では、金利上昇や建築コスト高騰の中、顧客は「なぜこの工務店で建てるべきか」という明確な理由がなければ選ばれません。技術力や価格だけでなく、独自の設計哲学、長期的な満足度を高める工夫、そして金利変動時代に対応した資金計画のサポートなど、他社との差別化ポイントを明確に示すことが顧客獲得の鍵となります。
②顧客のライフスタイルに寄り添いすぎない姿勢
選ばれるの工務店になるためには、顧客のライフスタイルに寄り添いすぎないということも重要だと考えます。顧客のライフスタイル変化に合わせることは一見、顧客ファーストのよい戦略と思われがちですが、むしろ、独自の特色を薄めてそれこそ「選ぶ理由」がなくなってしまいます。日々変化するライフスタイルに合わせすぎず、工務店独自の色を前面に出していく必要があります。
また、顧客のライフスタイルに合わせて住宅をカスタマイズするという戦略は、豊富なリソース規模を持つ大手ハウスメーカーの得意分野です。その土俵で戦うことは中小工務店にとって不利な戦いとなります。
2025年の住宅市場では、「何でも対応します」という万能型アプローチより、「地域の気候に精通した高性能住宅」「自然素材にこだわった健康住宅」「伝統工法を現代に生かした住まい」など、特定の強みに特化した明確なコンセプトを持つ工務店が評価されるでしょう。
選ばれるのは「ストーリー」より「リアリティ」
住宅業界のマーケティングでは、魅力的なストーリーが注目されがちですが、実際に選ばれる決め手は「リアリティ」にあります。
購入検討者は感情に動かされつつも、最終的には生活の具体的なイメージが持てるかどうかを重視します。理想を語るよりも、現実的な情報提供が信頼獲得の鍵なのです。
たとえば、夏場の電気代が具体的にいくらになるか、雨の日の室内干しはどうしているか、収納は実際に充分か、こうした生活の"リアル"を伝えることで、検討者は自分の暮らしを具体的にイメージできます。「この家で私はどう暮らせるのか」が明確になったとき、人は決断するのです。
2025年に取り組むべきマーケティングのポイント
今起きている変化や、いま工務店に求められている要素を踏まえたうえで、マーケティング戦略へ落とし込んでいくことが大切です。
ここからは具体的なポイントについて解説します。
「等身大のリアリティ」を前面に出したSNS戦略
完璧な施工事例やスタイリッシュな写真一辺倒ではなく、工事中の様子や施主との打ち合わせ風景、完成後の実際の暮らしぶりなど、住まいづくりの「リアル」をInstagramやTikTokで発信するだけでも差別化となります。
昨今、住宅系のInstagramあるいはTikTokなどのSNSは、同じようなルームツアー動画であふれかえっており、同じような投稿をしても、購入はおろか、覚えてもらうことすらできません。そこで、あえて“おしゃれルームツアー”から離れ、「暮らしの一日」や「何げない生活風景」を見せることでリアリティが増し、生活のイメージが湧きます。
SNSは「見たことないけど、見たかった」「共感できる」という感情が生まれることにより、より多くのエンゲージメントが発生します。
住宅検討者を「迷わせない」コンセプト
住宅検討者が情報過多に悩む現代では、無数の選択肢を提示することがむしろ顧客の決断を妨げてしまう可能性があります。「迷わせない」コンセプトとは、工務店が顧客の意思決定負担を軽減するために選択肢をあえて絞り込み、明確なコンセプトを打ち出すことです。
間取りプランを3案に限定する、内装材を厳選して提案する、住宅ローンの「ベストプラン」を提示するなど、顧客が迷いやすいポイントで工務店側から最適解を提案します。
言うなれば「キュレーション型アプローチ」が、情報過多時代における新たな価値として選ばれる要因になるのです。
「リアル」×「具体」×「理想」を詰め込んだ施工事例
多くの住宅メーカーや工務店は、美しい完成写真だけの施工事例になっており、施工事例というよりは一種のギャラリーになっています。ギャラリー写真は憧れや感動を生みやすい半面、実際の生活イメージが湧きづらく「すてきだけど、自分が住むのは少し違うかも」と考え、離脱してしまうケースが多いです。
選ばれる工務店になるには、「リアル」な暮らしの様子(季節ごとの室内環境、1年後の経年変化など)、「具体」的な数字(光熱費、メンテナンス頻度など)、そして実現された「理想」(家族の行動変化、生活満足度など)を組み合わせた施工事例が効果的です。これにより顧客は自分の生活をより具体的にイメージでき、単なる「家」ではなく「幸せな暮らし」を提供する工務店としての価値を伝えることができます。
まとめ
2025年の住宅市場では、金利上昇や情報過多、ライフスタイルの多様化が進んでいます。この状況下で工務店が選ばれるには、ハウスメーカーとは違う独自の強みを打ち出すことが大切です。
選ばれる工務店になるためのポイントは、「なぜこの工務店を選ぶべきか」という明確な理由を示すこと、万能を目指すより特定分野に特化した独自色を出すこと、そして華やかなストーリーよりも生活実感が伝わるリアリティを提供することです。
これからのマーケティングでは、等身大の情報発信、顧客が迷わない選択肢の提示、そして実際の暮らしがイメージできる施工事例の紹介が効果的です。情報過多な時代だからこそ、本質的な価値を伝える工務店が選ばれるでしょう。
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