<新着>建設ディレクターとは?導入によって生まれる効果について解説
働き方改革やDXの推進などにより、建設業のあり方は目まぐるしく変化しています。「建設ディレクター」は、こうした変化を背景に生まれた新たな職種です。
今回は、社内に建設ディレクター職を設置することでどのような効果が生まれるのか、基本的な役割や業務内容、導入するメリットを解説します。また、建設ディレクターに関連する資格の仕組みや取得方法についても見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.建設ディレクターとは
- 1.1.建設ディレクターの役割
- 1.2.時間外労働上限規制の影響
- 2.建設ディレクターの主な業務内容
- 3.建設ディレクターの職種を導入する3つのメリット
- 3.1.1.現場の技術者の負担軽減
- 3.2.2.女性・若手人材の活躍推進
- 3.3.3.社内のDX促進
- 4.建設ディレクターの資格
建設ディレクターとは
「建設ディレクター」とは、建設現場のバックオフィス業務を担う職種のことです。「一般社団法人 建設ディレクター協会」によって商標登録された名称であり、同協会によって2017年に創出されたものです。
比較的に新しく生まれた職種であり、近年重視されている建設DXとも深い関連性を持つことから、建設ディレクターへの注目度も高まっています。
建設ディレクターの役割
建設ディレクターの役割は、ITスキルと綿密なコミュニケーションにより、建設現場とバックオフィスの連携をスムーズ化することにあります。従来の業務システムでは、技術者が工事に必要な書類を作成したり、写真データを管理したりと、事務作業の一部も担っていました。
こうした業務には建設に関する一定の知識も求められることから、なかなか分業が難しいのが実情です。その結果、現場での作業が増え、技術者にとっては業務過多の要因となってきました。
そこで、技術者の業務を支援し、建設現場とバックオフィスの橋渡しを行うスペシャリストとして生まれたのが建設ディレクターという職域です。
時間外労働上限規制の影響
建設ディレクターの重要性が高まっている理由として、建設DXとともに挙げられるのが時間外労働の上限規制です。2024年より、建設業においても時間外労働の上限規制が適用されたことで、人手不足に関する問題が浮き彫りになりました。
特に施工管理などの業務は、個人の長時間労働に依存していた部分も大きく、規制の適用によって大幅な改善が求められていました。建設ディレクターを配置すれば、現場の業務を分業し、個人の負担を軽減することができます。
そのため、業務フローを改善する有効打として、建設ディレクターの活用が注目されているのです。
建設ディレクターの主な業務内容
建設ディレクターの業務内容は多岐にわたります。
■主な業務内容
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メイン業務は工事に必要な書類作成です。書類作成には申請書類の作成や施工計画書の補助、施工体制台帳作成、安全書類、竣工書類の検査・立ち会いなどの業務があります。
また、写真や図面などのデータ管理も建設ディレクターの重要な業務の1つです。そのうえで、3Dデータの作成、ドローン/レーザー測量、BIM/CIM(建設プロジェクトの効率化と生産性の向上のための取り組み)といったICTに関する業務も担います。
幅広い事務作業とICT業務を担当することから、建設ディレクターには高度な事務処理能力とITスキルが求められます。さらに、各所とのやりとりが必要であることから、コミュニケーション能力の高い人材に適した職種といえるでしょう。
建設ディレクターの職種を導入する3つのメリット
建設ディレクターを導入するメリットは、大きく分けて3つあります。
1.現場の技術者の負担軽減
先にも触れたように、建設ディレクターを採用することによって、現場の業務効率化が進みます。現場監督や職人といった技術者が担っていた事務作業も、建設ディレクターに一任できるため、現場の負担を大幅に軽減させることが可能です。
建設ディレクター協会の試算によれば、建設ディレクターを登用すれば書類作成業務の6割を移管することができ、1月当たり35時間ものも残業時間を削減できるとされています。分業化により、現場の技術者の肉体的・心理的な負担が軽減されることで、「人材の定着率向上」「技術継承の活性化」といった効果も期待できるでしょう。
2.女性・若手人材の活躍推進
現在、建設ディレクターを育成する講座の参加者の約7割は女性人材とされています。高いITスキルとコミュニケーション能力が求められる建設ディレクターは、建設業のなかでも多様な経験・スキルを活かしやすく、幅広い人材に開かれた職種といえるでしょう。
また、ICTなどのスキルは、建設業に限らずさまざまな現場で活かせる武器となります。育児・介護による休業、配偶者の転勤にともなう転職でキャリアの中断・変更が行われても、身につけたスキルがなくなることはありません。
さらに、リモートワークなどにも柔軟に対応できるため、キャリアプランを構築するうえでも有力な選択肢です。そのため、ライフステージの変化を控える若手人材からも、注目度の高い職種となっています。
実際のところ、建設ディレクター育成講座の参加者の約7割は20代・30代となっており、女性とともに若手が多いのが特徴です。社内に建設ディレクター職を設ければ、女性人材や若手人材の採用に前向きな効果をもたらすでしょう。
3.社内のDX促進
建設ディレクターの仕事は、基本的なPCスキルに加えて、3Dデータの作成やドローンの操作といったICTに関するスキル・知識が求められます。そのため、建設ディレクターの活用を積極的に進めれば、デジタル人材の育成につながるのも大きなメリットです。
そして、「ITに強い人材が増える」「若手の人材が増える」といった効果により、社内のDXにもプラスの影響をもたらすと考えられます。また、業務に建設ディレクターを仲介させることで、現場とバックオフィスのそれぞれでITに触れる機会が増えるため、全体としてのリテラシーの底上げにもつながるでしょう。
建設ディレクターの資格
建設ディレクターの資格は、一般社団法人建設ディレクター協会による「建設ディレクター育成講座」によって認定されます。ここでは、資格を取得するための流れや要件について見ていきましょう。
資格取得の流れ
資格を取得するためには、受講生は全9回(44時間)の講座を受講し、修了テストを受ける必要があります。まずホームページから申し込みを行い、受講料を入金してから事前説明を受け、「KDN(建設ディレクターネットワーク)」の利用手続きを行います。
KDNは建設ディレクターのサポート機関であり、オンライン勉強会や交流会を通じた情報発信が行われる場です。その後、約7週にわたって講座を受け、最後に試験を受けると資格が認定されるという流れです。
受講内容
講座はZoomによるオンライン形式で行われ、オンデマンド配信とライブ講座のハイブリット型になっています。講座の内容は、建設業におけるマネジメントや施工管理、書類に関する事柄、入札・積算、建設ICTの活用といった多岐にわたり、実践的なものが多いのが特徴です。
ライブ講座では、講師である専門家とコミュニケーションを図りながら、受講生同士によるグループディスカッションも行われるなど、双方向でのやりとりが重視されています。
受験資格・受講料
建設ディレクターは民間資格であるため、特に受験要件はありません。また、すべての講座がオンラインで行われるため、年齢や学歴・職歴、エリアを問わず、幅広い人が受験できるのが特徴です。
ただし、受講対象は「建設業の基礎知識を学びたい建設会社所属の従業員」とされており、経営層や管理者、技術者向けの講習ではないとされています。講座の受講料は33万円(税込)ですが、条件に当てはまる場合は、厚生労働省が扱う「人材開発支援助成金」の利用が可能です。
人材開発支援助成金を建設ディレクター育成講座に活用する場合、以下の2つの助成金コースを選択することができます。
■人材開発支援助成金のコース(中小企業の場合)
<人材育成支援>
<事業展開等リスキリング支援>
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■受給要件
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(出典:厚生労働省『人材開発支援助成金』)
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建設ディレクターとはどんな職業?
A:ITとコミュニケーションのスキルによって、建設現場とオフィスの橋渡しをする職業です。書類作成やデータ管理、ICT業務といった幅広い業務を担い、建設DXを進める重要なポジションとして注目されています。
Q:建設ディレクターになるには?
A:一般社団法人建設ディレクター協会が扱う「建設ディレクター育成講座」を受けて、資格認定される必要があります。講座の受講料については、厚生労働省の「人材開発支援助成金」を活用することに、負担の一部を軽減することができます。
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