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<新着>増加する災害…。住宅会社の最新の防災提案はどうなっている?

増加する災害…。住宅会社の最新の防災提案はどうなっている?

近年、日本各地で地震や豪雨、台風といった自然災害の頻度、猛威が増してきています。

地震で言えば、2024年の地震発生は3,633回。これは東日本大震災以降で最も多く、観測史上6番目の回数となっています。また、能登半島の震災、日向灘での大地震も記憶に強く残っているでしょう。

こういった災害の頻発は、住宅のあり方を見直すきっかけとなっており、住宅業界では災害に強い家づくりが進化しています。

今回は、住宅会社が提案する最新の防災対策について、実例を交えながら見ていきます。

目次[非表示]

  1. 1.耐震性能はもはや標準化されている
  2. 2.災害後の暮らしを支えるレジリエンス住宅
  3. 3.地域特性に応じた災害対策設計の工夫
  4. 4.日常に溶け込む「見えない防災」の工夫
  5. 5.被災後のネットワーク構築、防災教育などの建物以外の防災

耐震性能はもはや標準化されている

はじめに、世界有数の地震多発国である日本では、住宅における耐震性は基本となっています。現在では、ほとんどの住宅会社が最高等級である耐震等級3を標準仕様としており、地震エネルギーを吸収する制振システムや揺れを建物に伝えにくくする免震技術を組み合わせた住まいも多く見れます。

エースホームの運営など、工務店の課題解決のためにさまざまなノウハウ、システムを提供しているナックは、2024年12月、構造を見直すことで住宅のコストダウンを図るシステム「Logical and Simple System(LSS)」の提供を開始しました。

LSSを活用した住宅商品は、専用の制震ダンパーを採用し、耐震等級は3。地震や強風による揺れを吸収し、建物や構造体への損傷を軽減します。また、構造計算済みの規格住宅やプランのテンプレートを活用することで、申請に要する手間やコスト削減にも努めています。

2025年4月からは4号特例の縮小も実施され、より厳密に住宅の構造が審査されるようになりました。この法改正の影響もあり、耐震性能はもはや差別化要素ではなく、住宅選びの前提条件となっているといえるでしょう。

災害後の暮らしを支えるレジリエンス住宅

近年は、単に災害に「耐える」だけではなく、災害発生時やその後の生活まで視野に入れた提案が増えているのが特徴です。注目されているのが、電気や水道などのライフラインが止まっても暮らしを維持できるレジリエンス住宅です。

レジリエンス住宅に搭載される設備をいくつか挙げていきましょう。太陽光発電・蓄電池は今や珍しいものではなくなってきました。これらの組み合わせにより、自家発電を行い、発電した電力をためて停電時等にも普段どおりの暮らしが行えるという提案は定番となりつつあります。

加えて、電気自動車から住宅で電力を供給できるEVシステムや、断水時の対策として浄水装置・タンクを採用するという提案なども見ることができます。

レジリエンスに関する最新の例として紹介したいのが、クレバリーホームの「ライフライン維持パッケージ」です。災害時でも自宅で生活を継続できる、この防災住宅パッケージは、電気・水・情報・衛生・安心を確保するため、太陽光発電システム・蓄電池・エコワン(ハイブリッド給湯システム)・スマートエルラインライト・貯水タンク・止水板(防水板)の6点を標準装備したものです。

同パッケージは、「備える住宅」から「災害時に機能する住宅」へ進化した取り組みが高く評価され、第11回ジャパン・レジリエンス・アワードで優秀賞を受賞しています。また、こういったレジリエンス住宅は、災害時の安心感を高めるだけでなく、日常の光熱費の削減にもつながることからも関心を集めています。

地域特性に応じた災害対策設計の工夫

防災住宅の提案は全国一律ではなく、地域ごとの災害リスクに応じた設計が求められるようになっています。例えば浸水リスクのある地域では、住宅の基礎を高くしたり、1階部分を車庫や収納スペースとして、生活空間を上階に持ってきたりする提案が見られます。

神奈川県茅ヶ崎市のコンバート技建は、2024年11月に「百年コンフォート住宅」のモデルハウスをオープンしました。

この住宅は屋上に8トンもの津波シェルターを備え付け、その重量にも耐えうる頑丈なコンクリート造の工法で、強固な基礎の上にPC壁と床とが強力なボルトで組まれているため、家全体が耐震シェルターの強度となり、あらゆる災害から家族を守ってくれるというものです。海が近く、津波が起こる可能性もある茅ヶ崎では需要がある提案だといえるでしょう。

日常に溶け込む「見えない防災」の工夫

防災というと、特別な設備を設けるイメージが強いですが、最近では日常に自然に溶け込む防災の工夫が注目されています。

大東建託は、防災プロジェクト“防災と暮らし研究室「ぼ・く・ラボ」”の取り組みの一環として、日常生活が非常時の備えにもなるフェーズフリーな賃貸住宅の開発に取り組んでいます。フェーズフリーというのは、平常時と災害時のフェーズをなくし、「いつも」の暮らしを豊かにするものが、「もしも」のときも役立ち、支えてくれるという考え方です。

同社は、2022年からこの考え方を採用した賃貸住宅商品を開発していますが、2025年5月にはその第4弾である「ぼ・く・ラボ賃貸 FEEL」をリリース。同商品では、在宅避難に着目し、耐震等級3相当の耐震性や、普段の暮らしの中で非常時の備えができるゆとりある収納スペースを設けています。

また、オプションで太陽光パネルや蓄電池を設置した場合、停電発生時に携帯電話やラジオを充電できる非常用USBコンセントを、各住戸に設置するなど新たな工夫を取り入れています。

こうした、防災が見えない形で家に溶け込んでいる提案は、日々の暮らしに無理なく取り入れられるという点で、提案が行いやすいでしょう。

被災後のネットワーク構築、防災教育などの建物以外の防災

住宅会社の防災提案は、建物そのものだけにとどまりません。その一つが、被害度推定システムの導入です。

例えば、旭化成ホームズは地震被害推定システム「LONGLIFE AEDGiS」を導入しています。同システムは、地震発生時に外部からの地震動情報と建物の構造データを掛け合わせ、地震発生後10分~2時間程度で建物別に被害レベルや液状化発生状況を即時把握することができるというもので、早期の災害対応に役立つとしています。

こういった大規模なシステムというのは地場の工務店だとどうしても構築しづらい部分もありますが、例えばLINE等を活用してお客さまとの間に災害用のネットワークを構築しておき、有事には速やかに連絡が行えるようにしておくといったことなどでもいいでしょう。

建物以外に関する取り組みでいうと、お客さまに対して防災意識の教育をしておくことも大切なことでしょう。阪急阪神不動産は、2024年12月より、2023年以降に竣工するすべての新築分譲マンション「ジオ」において、入居者向けに防災イベントを実施するとしています。

このイベントでは、防災備蓄倉庫、備品の見学や防災備品の組み立て体験、専門家によるワークショップなどを行うことで、マンション防災や共助の大切さを実感する機会を提供しています。この取り組みはマンションにおけるものですが、分譲によるまちづくりなど、一戸建て住宅においても学ぶところはあるでしょう。

災害が常態化しつつある現代において、住宅はますます、安全と安心を提供する場としての役割を強めています。いまや防災に関する機能は、オプションではなくスタンダードだといえます。今後の家づくりは、そのことを踏まえて行っていくべきでしょう。

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住宅に求められる防災機能は時代とともに変化してきている


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株式会社住宅産業研究所(JSK)
株式会社住宅産業研究所(JSK)
1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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