現場管理はリモートの時代へ
工事監督の業務改革待ったなし
住宅業界では近年、工事監督不足に悩む住宅会社が増えています。この背景には人材を募集しても監督志望者が集まりにくいだけでなく、住宅会社の経営層としても営業部門に可能な限り人材を投下したいという事情もあります。限られた人数で現場管理をこなす必要があり、そのためにテクノロジーの導入、活用は必須です。
まず、2010年代に登場したのが、現場管理の効率化を目的とするクラウド型施工管理アプリです。グループチャット機能で協力事業者との報・連・相が円滑になり、電話でのコミュニケーションが主流だった頃よりも「言った・言わない」のトラブルは少なくなったはずです。また、職方に現場写真をクラウド上に保存してもらうことで、現場監督は現場の状況を従来より把握しやすくなりました。
2020年代は現場管理をさらにアップデートしていきたいところです。この足掛かりとなるシステムが、株式会社log buildが開発した「Log Walk」と「Log Meet」。この2つのシステムに共通するのは「現場の可視化」です。
従来の現場管理は監督任せで、職方からアップされる現場写真も特定の場所のみで、現場全体の状況までは把握できません。つまり、工事現場はブラックボックス化していたともいえます。これは工事品質や現場の5Sが安定しない要因の一つでもあり、現場の可視化が急務でした。
360度カメラを活用して進捗管理と5S促進「Log Walk」
「Log Walk」は基礎工事から竣工まで、外まわりと各居室を撮影するというものです。360度カメラを使用することがポイントで、現場を隅々までチェックすることができます。撮影頻度は週に2回で、1回に要する時間は5~10分程度。施主共有機能も用意しています。
360度カメラのメリットは、第一に死角が少ないこと。着工時から段階的に撮影すれば引渡し時に覆われる部位もアーカイブに残るため、施主としても安心です。また、現場隅々まで画像に残るため、撮影に際して整理整頓が必須です。監督目線で言えば、5Sの促進が期待できます。この指導に苦労する監督は依然として多く、言葉で注意しても十分に改善せず、ゴミを放置する職方もいます。特に足場が設置されている間は外部が乱れやすく、施主だけでなく、近隣住民からクレームを受けることもあります。現場が乱れていると労災リスクも高くなるため、自らゴミ拾いをするという監督も少なくありません。「Log Walk」の導入は、現場の職方の5Sの意識を高める一助となるはずです。
また、360度画像を活用して、造作箇所を指示することも可能です。タブレットにて、該当箇所のスクリーンショット画像に寸法や素材といった施工指示を書き出します。導入会社の中には、離島の現場にてフルリモートで工事を進めるプロジェクトもあるとのことです。「Log Walk」は2021年6月にリリースし、2022年7月末時点で利用社数は150社、累計6,000現場に導入されてきました。大手ハウスメーカーや年間1,000棟規模のビッグビルダー、家族経営の小さな住宅会社と多様で、あらゆる住宅会社にフィットするシステムといえます。
現場打合せをリモートで実現「Log Meet」
現場管理の生産性をさらに向上させるためには、リモート管理の導入も検討するべきです。この精度を向上させるのが、この2022年8月に本格始動した「Log Meet」です。専用のスマホアプリを開発し、事務所にいる品質管理スタッフと現場にいる職方がリモートで打合せや品質チェックを行うというものです。アーカイブ情報という側面が強い「Log Walk」に比べ、「Log Meet」はリアルタイムで職方と現場打合せを行うため、施工基準を満たしていない箇所があれば、タイムリーに是正指示を出すことができます。
スマホを使用することのメリットは様々あります。一つは多くの職方が所有していることです。これまで住宅業界ではウェアラブルカメラをリモート管理に使用するケースがありましたが、機材のレンタル費などランニングコストが高いことや携帯性などに課題がありました。スマホであれば常時携帯でき、カメラ性能も申し分ありません。独自開発した専用アプリではポインタ機能で指示を出せたり、遠隔でカメラのシャッターを押すことも可能です。「Log Walk」で現場の状態を事前に確認できるため、リモートでも職方とのコミュニケーションは取りやすいはずです。通信という観点においても、スマホの方がウェアラブルカメラより安定するというメリットがあります。