AI・IoTが便利な暮らしを実現
近年のテクノロジー発展に伴い、住宅業界にもAIやIoTといった技術の導入が進んでいます。このようないわゆるスマートホームの気運が高まるきっかけとなった技術の一つは「5G」の本格普及です。5Gにより、通信速度が向上しただけでなく、Wi-Fiルーターなど基地局1台だけで100台以上のデバイスやセンサーがインターネットと接続できるようになりました。
住宅業界では「IoT住宅」という言葉も普及しました。外出中でもスマホでIoT家電を遠隔操作ができたり、スマートスピーカーで音声コントロールしたりと、生活利便性の高いライフスタイルも期待できます。今後期待されるのは「AI」です。既にAIの導入が進んでいる住設機器の一つがエアコンです。
例えば、「人の居場所」を解析して暑い夏に居住者が帰宅したときには人に向けて冷風を送ったり、部屋が涼しくなったらAIが自動で気流を切り替えたりするといった機能はその一つです。
冬であれば人のよくいるエリアを曜日ごとに学習し、人の活動量や日射に応じて暖房の設定を調整するといったことも既に可能です。
これらは事例の一部でありますが、将来的にはAIが住設機器のみならず、人々の暮らしそのものをコントロールする時代が到来するかもしれません。
今回は、大手ハウスメーカーのAIやIoTを切り口とする取組みや商品を取り上げていきます。
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旭化成ホームズの大型ストックスペース「スマートクローク・ゲートウェイ」
旭化成ホームズは2021年11月、AIを含むデータサイエンス技術を用い、暮らしに関する多角的なサービスを創出するデジタルサービスプラットフォームの構築を目指すと発表しました。
建物内に設置したIoT機器等で居住者の建物内部における生活記録を収集し、AIを活用して情報を解析することで、生活に関わるさまざまなサービスの創出を目指しています。
その第1弾として発表したのが「スマートクローク・ゲートウェイ」です。これは、宅配便の置き配に対応するスマートロック付きの大型ストックスペース「スマートクローク」と呼ばれる建物内部にまで宅配物を届けてもらうことを可能としたシステムです。
配達員はWEBアプリ上で事前に設定されたパスワードを入力することで、スマートクロークに入室することができます。クローク内は防犯カメラを設置する他、同社独自の盗難補償制度も用意するなど盗難対策も万全です。また、スマートクロークと室内をつなぐ扉には内鍵を設置し、生活スペースの安全も確保しています。
さらに専用アプリでは、「スマートクローク・ゲートウェイ」に持ち込まれた食品の栄養価を自動で算出して家族の栄養管理に活かせるという機能も開発しており、同社は今後も関連サービスを拡大していく計画です。
自宅の異常は検知して通知、積水ハウスの「プラットフォームハウスタッチ」
積水ハウスは住環境やライフスタイルに関連する住まいのビッグデータを活用して、「健康」、「つながり」、「学び」を軸にしたサービスを提供するという「プラットフォームハウス構想」を推進してきました。
そして2021年8月、この構想の第1弾として、外出先から住宅設備の遠隔操作を可能にする間取り連動スマートホームサービス 「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」をリリースしました。
「プラットフォームハウスタッチ」には、主に3つのサービスがあります。
①わが家リモコン
間取り図と連動し、視覚的に操作できるスマホアプリで、外出先からエアコンや照明、窓シャッター、床暖房、玄関ドア等の状況を確認し、遠隔で操作することができます。
②セルフホームセキュリティ
窓や玄関ドアが不正に開錠された場合や火災警報器が作動した場合、居住者のスマホにプッシュ通知が送られる機能です。外出時でもタイムリーに自宅の異常を把握することできます。また、家族の帰宅や外出時にもプッシュ通知が送られるため、常にスマホを通じて家族の行動を見守ることができます。
③住環境モニタリング
これは熱中症予防を目的としており、屋内外に設置する「温湿度センサー」がその役割を果たします。センサーが熱中症の危険性を察知すると、ユーザーのスマホにプッシュ通知を送ってくれる他、機器の操作履歴の確認や熱中症アラート等の通知を一覧で確認することができるとのことです。
このシステムの導入費用はセンサーの数や対応家電によって変動しますが、およそ50~80万円で、導入後は月額2,200円のクラウドサービスへの加入が必要です。初年度は販売目標を年間2,400棟に据えています。
災害時の生活にも配慮した「住友不動産のみらいの家」
不動産デベロッパーの住友不動産は2021年9月、設備パッケージ商品「住友不動産のみらいの家」を発売しました。
脱炭素社会の実現に向けた商品という位置づけで、そのための施策の一つが東京電力エナジーパートナー株式会社と共同開発した、初期費用ゼロ円で太陽光発電と蓄電池セットを導入できる定額サービス「すみふ×エネカリ」です。
AI-HEMSも導入し、AIが生活パターンに基づいた消費電力と、翌日の日射量予報値に基づいた発電量を推計、余剰電力を有効活用することで、電気料金の節約が期待できます。さらに業界初の「AI雷注意報連携」機能も特徴の一つです。
雷注意報が発令されている間、AI-HEMSが蓄電池残量をチェックして、もしもの停電に備えて必要な電力量を蓄電池に充電します。台風の際には充電と同時にシャッターも自動で閉めるなど災害対策を講じるなど、災害への備えを徹底しています。
災害時は電気だけでなく、生活水の確保も重要です。この商品では容量24Lの「飲料水貯留システム」と容量100L「雨水貯留タンク」を用意しました。
災害時に断水すると、タンク車や応急給水等の公共サービスの対応まで3日間程度時間を要するといわれており、それぞれタンクの容量は4人家族の飲料水・生活用水約3日間分に相当します。
「住友不動産のみらいの家」は災害時も安心できる生活をAIやIoTも活用して提供する商品といえそうです。