住宅の断熱性向上が令和の必須課題
窓リフォームの反響急増!手厚い補助金が後押し
サッシメーカーには、2023年に入ってから注文が殺到しています。あるメーカーによると内窓用のサッシは受注後の納期が従来1ヶ月ほどだったところが、2023年3月末時点で既に3ヶ月まで延びているとのことでした。
窓のリフォームに乗り出す顧客が急増しており、この背景には手厚い補助金があります。今年は国土交通省・経済産業省・環境省が3省連携の「住宅省エネ2023キャンペーン」を打ち出し、「こどもエコすまい支援事業」「先進的窓リノベ事業」「給湯省エネ事業」を展開しています。補助金予算は先述の3事業総額2,800億円に上り、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す政府肝入りの補助事業ともいえます。
申請が特に増えているのは、「こどもエコすまい支援事業」と「先進的窓リノベ事業」です。
前者は主にZEHクラスの新築住宅に対する補助制度であり、1件あたり最大100万円を補助します。
後者は名称の通り、窓の改修工事に対する補助制度であり、補助上限は原則200万円です。
一般的な30坪の一戸建て住宅の場合、開口部すべてのリフォームを行えば、補助額が100万円を超えるケースもあります。今年の補助事業はテーマを「省エネ」と銘打つように、新築住宅、住宅ストックの性能向上が最大の目的です。
高まる窓リノベ需要は、2022年~2023年冬、多くの人々を悩ませた光熱費の高騰も要因の一つです。総務省が発表した2023年1月の消費者物価指数によると、エネルギー関連は前年同月比で平均14.6%上昇しました。
都市ガスは同比35.2%、電気代は同比20.2%の上昇でした。電気やガスの請求金額を見て驚いたという方も多いはずです。政府は国民の負担軽減策ということで、2023年2月より電気代やガス代に対して補助金を出していますが、結局のところ一過性に過ぎません。抜本的な光熱費削減には住宅の高断熱化が不可欠です。
日本は先進国の中でも住宅の断熱性に対する意識が低く、取組みも遅れているといわれています。国土交通省は、平成30年時点における住宅ストックの断熱性に関する情報を出しています。
これによると、国内に現存する住宅ストック5,000万戸のうち、昭和55年基準にも満たず、断熱性能を有していないと見られる建物が、全体の29%を占めます。現行基準を満たす住宅も、13%程度に留まっています。ここでの現行基準とは、建築物省エネ法の平成28年省エネ基準の断熱基準を満たすものを指します。
ここで注意したいのは、築古の気密性が低い住宅です。窓リノベを行っても、建物の気密性が低いと壁の隙間から室内の空気が外に逃げてしまいます。結果として空調負荷が軽減されず、光熱費も期待ほどは削減されません。
そのため、物件によっては開口部だけでなく、外気と触れる部位全体を改修する必要があります。窓リノベさえ行えばよいと考えている顧客もいるかもしれませんが、物件によって必要なリフォーム内容は異なります。事業者としても詳細の解説が必須です。
居住者の「健康」にも直結する断熱リフォームで実現!
住宅の断熱性と気密性は居住者の「健康」に直結します。建物全体が高気密・高断熱であれば、部屋間の温度差の軽減が期待でき、例えば浴室で発生することの多いヒートショックの予防につながったり、コールドドラフトなどが発生しにくくなったりします。
寒い冬にリビングの扉を開けっぱなしにしたお子さんに対して、「閉めなさい!」と注意する機会も減少するはずです。細かいことではありますが、これが減るだけで多少ながらもストレス軽減につながることでしょう。
社歴の長い住宅会社であれば、これまで引き渡してきた自社オーナーの中に自宅の夏の暑さや冬の寒さに悩んでいる方がいるかもしれません。まずは、このような自社オーナー宅の性能向上から取り組んでいきたいところです。理想は建物全体を高断熱化することではありますが、予算の都合によって困難なケースももちろんあります。
そこで、例えば家族が過ごす時間の長いLDKを断熱化するなど、リフォーム箇所を絞るのも選択肢の一つです。積水ハウスのグループである積水ハウスリフォームでは、この部分的な断熱リフォームを「いどころ暖熱」という商品名で訴求してきました。
2023年の手厚い補助金も、数ヶ月先には予算額に達して終了となる見通しです。事業者にはその後、補助金に頼らない訴求方法が求められます。
そのためには顧客がより真剣に検討できるよう、窓リノベを実施することで期待できるコストメリットや効果を見える化するなどで見せ方を工夫しつつ、断熱リフォームを訴求していきたいものです。