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第8回【ターゲットを意識した工務店のカタログ・パンフレット制作】既存のお施主様のことをベースに考えれば、打ち出し方が見えてくる

今回は、地域に根差した工務店様の「顧客ターゲット」はどのように設定したらいいのか、を考えたうえで、カタログ・パンフレットをつくっていく方法を考察していきたいと思います。

本稿でいう「顧客ターゲット」とは、「工務店様との相性がよく見込みの高い顧客層」と設定します(以降「ターゲット」と表記します)。ここを明確にすることで、カタログ・パンフレットに掲載する情報の優先順位が明確となり、打ち出し方が見えてくるのではないか、という視点です。

目次[非表示]

  1. 1.【ターゲット設定】既存のお施主様は、どんな方が多いですか?
  2. 2.【ターゲット設定】自社のどこを気に入られたか、知っていますか?
  3. 3.【ターゲット設定】自社の強みは、なんでしょうか
  4. 4.【カタログ・パンフレット制作】ターゲットに響くよう、掲載情報に優先順位をつける
  5. 5.【カタログ・パンフレット制作】「ターゲットキラー」の施工事例は常に前面へ
  6. 6.【カタログ・パンフレット制作】カタログ・パンフレットはかっこつけなくていい

【ターゲット設定】既存のお施主様は、どんな方が多いですか?

地域の工務店様のターゲット設定において、まず目を向けてほしいのは既存のお施主様です。

どんな方が多いでしょうか?いま一度よく思い出してみてください。
年齢、家族構成、仕事、趣味・嗜好、などはもちろん、「以前はどんな家にお住まいでどんな不満があったか」「どうして注文住宅を建てようと思ったか」「初回におっしゃっていた要望内容」「新居で思い描いていた暮らし方」など、どんなことをおっしゃっていたでしょうか。

■例「既存のお施主様はどんな方?」

T様 30代夫婦共働き 子ども1人
夫:自動車メーカー工場勤務
妻:アパレル系ショップ店員


アウトドアに興味があるが夫婦揃っての休みがとりづらいため、休日は家で過ごすことが多い。そのため家族が集まるリビングを中心とした間取りで家時間を充実させたい。庭でBBQやガーデニングをしたい(ご主人)。室内のインテリアにも興味があり、お気に入りのビンテージアイテムを自分で購入していろいろ飾りたい(奥様)。


夫婦の休みが合ったら家族揃ってお買い物。お洒落タウンのインテリアショップや100円ショップ、コストコもよく行く。間取りや内装の壁紙などにこだわりがあったので、注文住宅じゃないと叶わないと思った。

【ターゲット設定】自社のどこを気に入られたか、知っていますか?

次に自社を選んでいただいた決め手を思い出してください。「どこと競合していてどんな点が競合よりよかったと思われたのか」「何が気に入ってご依頼を決めたのか」など。ここはとてもたいせつなポイントですので、もし知らなかったらぜひ直接聞いてみてください。


もし、「人柄がいい」や「価格が適正」など、ざっくりとした内容しか知らなかったら、この機会にもう少し深掘りして聞いてみたいですね。人柄だったら「どんなやり取りの時にイイナと感じたのか」、価格だったら「何と比べて適正だと思ったのか」などですね。

■例「自社を選んでいただいた決め手は?」

大手メーカーと競合していたが、間取りの自由度が高いのがよかった。特に水回りの細かい位置や動線に配慮してくれて、間取りを何度も修正してくれたのはうれしかった。


また、初めは要望としていなかったが、高断熱仕様で家中の温度が一定というのも、家時間を充実させたい私たちにはぴったり。その割に大手より低価格だったので納得感があった。贈与や補助金のことなど、お金の話に詳しい担当者さんがとても頼りになり、詳しく教えてくれながら進めてくれる姿勢にすごく信頼が持てた。


ただ、深掘りして聞くとなると、ヒアリングに不安を持たれる工務店様もいるかもしれません。そんな時は、「施工事例集に掲載用の取材・撮影」として、お施主様に依頼されてはいかがでしょうか。

第三者であるライターなら詳しいお話を聞きやすいですし、プロカメラマンの撮影画像をお施主様にプレゼントすることもできます。聞きたかった情報を得られるうえに、実例紹介として施工事例集やホームページに掲載できるので、一石二鳥です

【ターゲット設定】自社の強みは、なんでしょうか

1と2の情報をとりまとめていくと、「どんなお施主様が自社のどこをいいと思ったのか」が複数見えてきます。それを書き出して一覧できるようにします。そしてまずは「自社のどこをいいと思ったのか」だけを見てみます。

工務店様自身が考えていた「強み」と照らし合わせてどうでしょうか?合っているところ、違っているところ、それぞれあるかもしれませんが、合っているところが多くのお施主様のニーズにはまったわけですから、現状の「強み」といえます。


次に「どんなお施主様が」を見てみます。先ほど出てきた「強み」と照らし合わせて合致する属性を抽出します。そこを「ターゲット」に設定します。

■例「ターゲット設定」

  • 30・40代の若い夫婦 お子様あり
  • 家族で一緒に過ごす時間をたいせつにしている
  • インテリアデザインの感度が高く、SNSなどもチェックしている
  • すべてにこだわりたいわけではないが、壁紙や設備は自分で選びたい
  • 性能面はあまりよくわからないので提案してほしい
  • 資金面の不安があるのでいろいろサポートしてほしい
  • 建売住宅も考えてはいるが、いいと思える間取りに出合えない
  • 地域の工務店はよくわからないのでとりあえず大手に相談している


ターゲット設定は自社の中だけで考えて設定するのではなく、既存のお施主様のことを知り、お言葉を聞き、そこから強みを抽出し、照合して設定する、というのがおすすめです。

なぜなら既存のお施主様をベースに考えているわけですから、実際に工務店様が対応してきたことばかり。実績があるのですから自信を持って打ち出せるポイントです。そのため相性がいいといえます。

【カタログ・パンフレット制作】ターゲットに響くよう、掲載情報に優先順位をつける

ターゲットが明確になったら、カタログ・パンフレットに掲載する情報を具体的にしていきます。自社の強みも明確になっていますので、ターゲットに響くよう、打ち出す強みに優先順位をつけていきましょう。

基本的には、1番見てもらいたい情報を「前に」「大きく」掲載してパッと目に入るようにします。その後、2番目・3番目に見てもらいたい情報へ目がいくようにする、というイメージです。

また、優先順位が低い情報は思い切って割愛してその分、優先順位が高い情報を大きく扱う、といったメリハリをつけるのもおすすめ。見ているほうはスッと頭に入ってきて、記憶に残りやすくなります。

■例「掲載情報の優先順位(施工事例集の場合)」

1 インテリアアイテムもセンス良くまとまっている事例写真
  (できれば家族みんなでくつろいでいるシーンなどで)
 
2 間取り図(畳数・延床面積・本体価格入り)
 
3 親身な対応をアピールするキャッチコピーと文章
 
4 各種サポートサービス
 
5 掲載するかどうか検討事項(性能・スタッフ)


また、サービスの拡充を考えている場合も、ターゲットと強みを明確にしておくと役に立ちます。本稿の例で示したターゲットなら、好きなアイテムを飾れるオープン棚やTVボードがあると喜びそうです。それならオリジナル収納の造作サービスが響くかもしれません。

家時間を充実させたいということに紐づけて、動線のよい間取りや外とつながる大きな窓提案などもよさそうです。また、プロならではの視点として、断熱性能のグレードアップや省エネ対策の提案もいいかもしれません。サービス展開もターゲットを意識することで「強みの拡大になる」といった視点で考えれば、今あるリソースでいろいろできそうです。

【カタログ・パンフレット制作】「ターゲットキラー」の施工事例は常に前面へ

取材時によく聞くのですが、「この家みたいにしてほしいとオーダーしました」とおっしゃるお施主様が多いこと。お施主様はまず、施工事例の写真を見てイメージを掴みます。気に入った写真をピックアップしておいて、自分のプランニング時に工務店に伝えるわけですね。吹抜けのリビングやグレーのキッチン、中庭とウッドデッキ、キッチンの飾り棚、床の素材や色合い、壁紙、造作洗面台、など。けっこう細かく写真を見て、これだ!と思ったところを真似したいと思っています。

そこで、ターゲットにぴったりな施工事例が完成したら、その写真を最前面に押しだしてアピールしましょう。ここは必ずプロカメラマンによる撮影を行い、施工事例集、ホームページのトップ画像、ポータルサイトのメイン画像、各種ツールの表紙、など、工務店の顔事例としてあらゆる媒体のトップに掲載し、ターゲットの目が届きやすいようにしておきます。

そしてそれを見た新たなお施主様から「この家みたいにしてほしい」というオーダーをいただけたら、またプロカメラマンによる撮影をし、最前面へ。それを見た別のお施主様が「この家みたいにしてほしい」ときたら、撮影して最前面へ。

こうなるとターゲットに響き続ける施工事例のサイクルが生まれます。このサイクルを「ターゲットスパイラル」と勝手に名付けて呼んでいますが、実際に複数の工務店様で発生したことのある事象です。もちろんサイクルが生まれるまで時間はかかりますがその分、強力なターゲット戦略となります。このサイクルが発生すると、ターゲットが勝手に集まってくるようになり、工務店の立ち位置も決まってきます。

したがって、初めの「ターゲットにぴったりな施工事例」、名付けて「ターゲットキラー」の施工事例が完成したら、最前面に押しだしてアピールしましょう。

【カタログ・パンフレット制作】カタログ・パンフレットはかっこつけなくていい

ターゲットを意識すると、カタログ・パンフレットに何を載せたらいいのかの指針ができるので、掲載情報の取捨選択がしやすくなります。ターゲットがどう感じるのか、好きになってくれそうか、という軸で決めればいいからです。

そのため、時代のトレンドを意識した「かっこよさ」を考える必要がありません(紙面デザインの要素としては加味すべきですが)。ターゲットを意識したカタログ・パンフレット制作をするなら、時流に乗らず、背伸びせず、ブレずにターゲットのことだけを考えて進めるのがいいと思います。

また、カタログ・パンフレットができたら、既存のお施主様にプレゼントしてはいかがでしょうか。ターゲット設定で参考にさせていただいたわけですし、お礼の意味も込めて。顔を出すいいきっかけにもなりますし、近況をおしゃべりできたりすれば、関係性が深まりますよね。何か新たな情報が得られるかもしれませんよ(ご紹介とか!)。
 
 さて、というわけで、今回のタイトルは、
【ターゲットを意識した工務店のカタログ・パンフレット制作】既存のお施主様のことをベースに考えれば、打ち出し方が見えてくる
でした。
 
現場で感じてきたことをベースに考察してきましたが、少しでも工務店のみなさまのお役に立てば幸いでございます。
 
それではまた次回、お会いしましょう。
 
次回のテーマ(予定)
第9回【資料請求のカタログ・パンフレット】紙で渡す意味。手に取ってわかるのは「質感」「色味」。そして工務店の「思いやり」

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株式会社アドクロ 鶴田 二郎
株式会社アドクロ 鶴田 二郎
工務店とリフォーム会社に特化して活動するクリエイティブディレクター。カタログ・パンフレットをはじめ、雑誌の記事や純広など、広報・広告ツール制作の全工程に携わる。“GENBA-NIN”(※)を自称し、現場目線をたいせつにしたものづくりにこだわる。※GENBA-NIN は株式会社アドクロによる造語です

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