住宅トレンド

住宅の耐震性について改めて考える

目次[非表示]

  1. 1.増える地震、高まる不安…今こそ住宅には耐震性が強く求められている
  2. 2.住宅の耐震性能の考え方
  3. 3.住宅に求められる構造基準はさらに高く

増える地震、高まる不安…今こそ住宅には耐震性が強く求められている

地震が増えてきています。特に今年の5月は国内で地震が多く発生しました。震度3以上の地震は40回を上回り、震度5弱以上の強い地震は6回となっています。震度3以上の地震が1ヶ月に40回以上起きたのは2021年の4月以来、震度5弱以上の地震が6回を数えるのは、熊本地震が起きた2016年4月以来となっています。

5月5日には石川県能登地方でマグニチュード6.5、最大震度6強の地震が発生。同日にはマグニチュード5.9、震度5強の地震も起きています。この地震では計468棟の住宅が被害を受けたとされており、全壊は9棟、半壊は9棟あったと言います。

5月11日には千葉県南部を震源とするマグニチュード5.2の地震が発生し、木更津市で最大震度5強の揺れを観測。26日には千葉県東方沖でマグニチュード6.2の地震が起こり、千葉県銚子市と旭市、茨城県神栖市で震度5弱の揺れが観測されています。

地震は多い時期と少ない時期を周期的に繰り返すとされており、今は多い時期なのだと考えられますが、このまま巨大地震も起こるのでは…と不安に思う方は多いのではないでしょうか。

パナソニックホームズは2023年4月に、住宅購入検討層や将来的な購入検討層を対象に行った「住まいに対する意向調査」の調査結果を発表。その中では、住宅性能において「特に重視すること」(複数回答)は「耐震性」という回答が最も多く67%。「もっとも重視すること」(単一回答)の結果でも「耐震性」がトップとなり46.3%でした

次点の断熱性は13.0%で、地震大国日本では、住宅の性能において圧倒的に耐震性が重視されていることが分かります。上述した5月の地震の頻発もあり、今はさらに耐震性へのニーズが上がっていると考えられます。

住宅の耐震性能の考え方

地震へ不安があり、住宅の耐震性の確保を望むとして、どのような点が住宅の耐震性能を左右するのでしょう?簡単にまとめてしまうと、住宅の耐震性の鍵を握るのは大きく4つです。

1つ目が建物の重量です。軽いものの方が揺れにくいというのは想像に難くないと思います。

2つ目が耐力壁の量です。耐力壁とは建物にかかる力を負担してくれる構造壁のことです。この耐力壁が多い方が、耐震性が高くなります。

3つ目がその耐力壁や、耐震性を担う金物の配置バランスです。建物の片側だけが地震に強くても、全体としては地震に強くなりませんし、建物の重さも偏って、安定性に欠けてしまいます。

4つ目が床の耐震性能です。下図のような縦に長い立体を想像してもらうと分かりやすいかもしれません。真ん中あたりで支えがあるものとないものでは、横からの力がかかった際の揺れ方が異なります。

住宅の耐震性能を表す指標として、耐震等級があります。等級1から等級3までの3段階で表され、等級1は建築基準法の耐震性能を満たす強さ、等級2は等級1の1.25倍の強さ、等級3は等級1の1.5倍の強さとなっています。

建築基準法の耐震性能は兵庫県南部地震相当の地震(震度6強~7程度)でも倒壊しない程度とされていますが、建築基準法は国が定める安全の「最低基準」であることを覚えておいて欲しいと思います。これを下回るものは建築することができません。耐震等級1はあくまで「最低限の基準」なのです。安心安全を求めるのであれば耐震等級3を満たすようにしましょう。

さらに耐震等級3の算定方法にも、「壁量計算」と「許容応力度計算」の2つがあります。前者は2階建て以下の小さな木造建築物などに適応できる、簡易的な計算方法です。後者は3階建て以上の建築物に用いられる構造計算の方法で、建物にかかる荷重を想定し、構造部材の内部に生じる抵抗力を詳細に計算するものです。

より確かな安心を求めるのであれば、許容応力度計算で耐震等級3を確保するとよいでしょう。

住宅に求められる構造基準はさらに高く

国から住宅に求められる耐震性能はより高くなってきています。

例えば、「4号特例」の廃止が2025年4月に施行予定です。4号特例とは特定の条件下であれば建築確認の審査を一部省略できるという規定です。特定の条件下とはどのようなものかというと、木造であれば2階建て以下かつ床面積が500m2以下のもの、木造以外の場合は、平屋かつ床面積が200 m2以下のものです。一般的な住宅の多くがこの条件を満たします。

上述の「壁量計算」もこの4号特例を利用したものとなっており、今後は耐震性能を確保するため、詳細な計算が求められるようになります。

もう1つ、2025年4月から、ZEH水準等の木造建築物の構造基準が変更になります。ZEHを満たす建物は断熱材の増加や太陽光発電の搭載などにより、重量が重くなる傾向にあり、それに対応して必要壁量の新たな基準値が設けられます。

国も基準を改め、地震への対策を推奨する今、改めて自社の耐震性を見直し、ユーザーに安心して選ばれる会社になるよう心掛けたいところです。

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株式会社住宅産業研究所(JSK)
株式会社住宅産業研究所(JSK)
1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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