第2回【工務店DX】工務店が顧客満足度(CS)を向上させるには?
顧客満足度(CS)という言葉は聞いたことがあると思いますが、具体的にどのような対策をすべきかについてはよく知らないという方が多いのではないでしょうか。
施主様の期待・ニーズなどを定量的・定性的に評価する顧客満足度は、自社の課題を改善するきっかけにつながります。同じような疑問や不安を感じている工務店さん・住宅営業の担当者さんの疑問・不安を少しでも解消し、DXに向けて一歩を踏み出す一助になればと思い、今回の記事を作成いたしました。
弊社は、1997年から25年以上システム開発を専門に業務効率化や生産性の向上、近年ではDX化のお手伝いなど住宅・建設業界に限らず多くの企業様をサポートしてきました。今回は、DXを通してどういった課題を解決できるのかに着目した「工務店DX」特集を展開します。
前回(第1回)の「工務店DX特集」では、施主様・社内間のコミュニケーションによる課題について言及しました。
第2回である本記事では、「顧客満足度」に着目します。顧客満足度の重要性や意義を分析し、工務店の顧客満足度を向上させるための具体的な方法について解説いたします。
目次[非表示]
- 1.顧客満足度とは
- 2.工務店における顧客満足度の重要性
- 3.顧客満足度を向上させるメリット
- 3.1.1.よい評判・口コミ(VOC)が広がる
- 3.2.2.メンテナンス・リフォームの受注
- 3.3.3.紹介案件の受注
- 4.顧客満足度を向上させるデメリット
- 5.顧客満足度を測る手順
- 5.1.1.現状を把握する
- 5.2.2.顧客満足度を測る基準を明確にする
- 5.3.3.PDCAサイクルを回す
- 6.顧客満足度向上のために工務店が実施すべき3つのこと
- 6.1.1.施主様への継続的なアプローチ
- 6.2.2.社員の満足度を高める
- 6.3.3.デジタルツールを活用する
- 7.まとめ
顧客満足度とは
顧客満足度とは、企業が提供する製品・サービスが、顧客の期待にどの程度応えているかを測定し数値化したものです。英語表記では、「Customer Satisfaction」(カスタマー・サティスファクション)、CSと略称されます。
つまり、購買前に顧客が抱いている期待感との差異が顧客満足度として表れてくるのです。一般的には、商品購入・サービス体験後のアンケートやヒアリング調査・口コミなどによって測ることができます。
工務店における顧客満足度の重要性
では、なぜ工務店が顧客満足度を向上させることが重要なのでしょうか。
顧客満足度は、一般的に家の引き渡しが完了してから調査が行われるものです。そのため、利益や根本的な課題解決に直結しないと後回しにされることがあります。
しかし、顧客満足度は、単なる数字ではありません。施主様からの評価を聞くことができるチャンスです。それらをうまく活用することによって、他社との違いや自社の課題を発見するヒントを得ることができます。
顧客満足を数値として集計するだけでは、ほとんど意味をなしません。データとして分析・改善をすることで初めて意味をなすのが、顧客満足度と考えてもよいでしょう。また、住宅業界の全体の課題の一つに新規着工数の減少があります。
そのため、アフターメンテナンスやリフォームなどの次につながる営業が重要になります。詳しくは後述しますが、顧客満足度が高ければ長期的な関係性を持続できる可能性も高まります。よって、工務店においても顧客満足度は重視すべき指標の一つなのです。
顧客満足度を向上させるメリット
工務店が顧客満足度を向上させるメリットは、3つあります。
1.よい評判・口コミ(VOC)が広がる
近年の情報収集の主流は、SNSやインターネットなどWEB上での検索になります。
家を買うという選択は、人生に一度あるかないかの大きな買い物になります。その分、工務店や住宅メーカーに対する不安・期待が膨らんでいます。そのため、施主様は事前に情報を収集しようとします。
そこで参考にされるのが、第三者(実際にその工務店や住宅メーカーで建てたことのある施主様)の声です。自身が気になる点に関して言及した口コミ(VOC)から不安を払拭したり、多くの人の評判を踏まえて選択を変更したりすることがあるでしょう。
よって、施主様からの「満足した」というプラスの評価は、新たな施主様に選ばれる理由の一つになると考えられます。口コミは、企業側が介入できるものではありません。施主様同士のコミュニケーションによって確立されていきます。
2.メンテナンス・リフォームの受注
新規着工数の伸び悩みがある今、既存顧客との長期的な関係性の持続が、ビジネスチャンスを広げるきっかけにもなります。建築後には、必ずメンテナンスが必要になります。
関係性が構築されている状態であれば、打ち合わせなども比較的スムーズに進めることができます。
3.紹介案件の受注
注文住宅の定番の集客方法の一つが、紹介受注です。
友人や知人に工務店や住宅メーカーを紹介する場合、トラブルが起きたら申し訳ない・営業担当の方と合わないかもしれない、といった懸念から紹介側にもためらいが出てきます。特に高額の買い物に関しては、この傾向が強くなります。
そのため、本人が本当に気に入った商品やサービスでないと、紹介は難しいものです。
一方で、紹介された側の目線から考えると、友人・知人が満足したというある種の保証付きの工務店やメーカーという認識を持つようになります。よって、工務店やメーカー選定時の有力候補となることが期待できます。
顧客満足度を向上させるデメリット
基本的にはデメリットとなる部分はありませんが、顧客満足度への固執には注意が必要です。
例えば、施主様とのコミュニケーションの中で顧客満足度を意識しすぎてしまうと、過剰な接客対応が起きることが考えられます。営業全体のノルマや目標値として掲げることで、期待に沿うようにという方向に比重が傾いてしまうのです。
顧客の要望に応えていくことは重要ですが、それにより利益率が低下してしまったり、多少無理をした提案をしてしまったりといったことがあるでしょう。
顧客満足度を測る手順
顧客満足度を測る手順は以下のとおりです。
1.現状を把握する
2.顧客満足度を測る基準を明確にする
3.PDCAサイクルを回す
1.現状を把握する
既に引き渡し後のアンケートを実施したことがある・口コミサイトなどのデータがあるといった場合には、自社の現状を把握しておくとよいでしょう。
どの部分が課題として挙げられるのかをこの機会に見直すことで、社内全体の底上げにつながります。顧客満足度を上げるために新しい施策を打ち出すのではなく、まずはどの部分がボトルネックとなっているのかを把握しましょう。
顧客満足度を測るうえでアンケートの実施は一般的な調査方法ですが、社内での課題について仮説を検討していくことでより密度の高いものになります。
2.顧客満足度を測る基準を明確にする
顧客満足度の測定をするためには、基準を明確にする必要があります。一口に顧客満足度といっても、その指標の取り方や調査方法はさまざまです。
アンケート項目の作成においても、結果を誘導するような質問項目はないかなど慎重に検討をすることで、今後の分析や改善に役立つデータを収集することができます。
(関連記事:工務店・ビルダーの顧客満足度を測るには? 主な指標や調査方法を解説)
3.PDCAサイクルを回す
前述したように、顧客満足度は数値を測ることが目的ではありません。集まったデータを分析し改善していくことが重要になります。
アンケート・口コミなどのデータから、自社の課題を把握し改善するというプロセスを継続していくことが必須です。PDCAサイクルを回すうえでのポイントは、顧客満足度に固執しないことです。
顧客満足度向上のために工務店が実施すべき3つのこと
顧客満足度向上のために、実施すべきことは以下の3つです。
1.施主様への継続的なアプローチ
アフターメンテナンスの受注を得るためには、施主様との関係を維持できているかが重要です。例えば、リフォームに関する案内、冬には凍結の可能性に関する注意喚起やその対処法についての案内など、施主様の関心に合った情報を定期的に送付するといったことです。
数年後のメンテナンスまたは修繕が必要になったときに、もう一度頼みたいと思い出してもらえるようなコミュニケーションの取り方が重要になってくるのではないでしょうか。
2.社員の満足度を高める
施主様の対応をするのは、営業・設計・コーディネートをする「人」です。施主様の評価は、家という建築物だけでなく、建築前後のサービスまでを含む一連の体験です。
そのため、施主様と直接コミュニケーションをする「人」、つまり社員が自身の仕事に対する誇りや達成感を得られることで、そのパフォーマンスが変わってきます。
よって、社員のメンタルヘルスや労働環境を整えることが、顧客満足度にも影響を与えるのです。
3.デジタルツールを活用する
デジタルツールの活用は、業務の効率化や労働環境の改善につながります。しかし、一口にデジタルツールといっても、どのフェーズに活用でき、強みがあるツールかはさまざまです。
どの部分をデジタル化すべきかの検討は慎重に行いましょう。
※デジタルツールの種類や選定方法などの詳細は、別記事で展開予定です。お楽しみに!
顧客満足度を向上させるために見直すべきは、顧客接点のポイントです。施主様とのコミュニケーションの中で、ボトルネックとなる課題がないかを洗い出しましょう。
例えば、返信の遅延や漏れが生じていないか、担当者間の連携・共有ミスによるトラブルはないかといったことです。トラブルは、顧客の満足を下げるきっかけになります。
また、時代の変化とともに施主様(消費者)の購買行動、企業とのコミュニケーション手段が多様化しています。デジタルに慣れ親しんでいるこれからの世代に合わせたコミュニケーションの手段を今のうちから確立していくことは、今後の市場を生き残るうえで重要な鍵となっています。将来的な他社との差別化にもつながっていくでしょう。
まとめ
顧客満足度は、家を建て終わった後の調査になるため、後回しにされがちです。しかし、施主様から意見を直接もらえる機会は多くないですし、自社の現状を見直せるきっかけにもなります。DX化を進めていくうえで、顧客満足度という点にも着目してみてもよいのではないでしょうか。
次回は、失注率に着目した記事を展開予定です。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。
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