住宅トレンド

“働き方”が売上の伸長や収益構造の改善につながる!?住宅業界の「2024年問題」にいかに対応するかがカギ。

目次[非表示]

  1. 1.“働き方”を見直すことは、売上の伸長や収益構造の改善につながる
  2. 2.1人当たりの労働時間を短縮するには?

“働き方”を見直すことは、売上の伸長や収益構造の改善につながる

これまで約30年続いたデフレ経済において、日本企業の人件費は抑制されてきましたが、にわかに上向きの兆しが見えてきています。日経新聞社が毎年実施している賃金動向調査によると、ベースアップ要求があった企業の実施率は9割に迫り、定期昇給とベースアップを合わせた今年の平均賃上げ率は3.89%と、31年ぶりの高水準となりました。

会社ごとのルールや評価制度にも大きく左右されますが、住宅会社では営業職の給与はインセンティブの比率が高い企業が多く、基本給のベースが上がることは安心感につながります。

逆に言えば、給与という形で評価が得られないと隣の芝生が青く見え、離職にもつながります。人材確保や既存社員のモチベーションアップのためにも、現在の賃上げの流れは自社の給与水準を見直す良い機会と言えそうです。

一方で、現在の学生は給与も会社選びの条件の一つではありますが、それ以上に、働き甲斐やプライベートの時間の充実を重視する傾向にあります。働き方も時代に合わせてアップデートすべきでしょう。

2024年4月からは労働基準法の改正によって、建設業においても法定労働時間外の労働時間の上限が罰則付きで規制されます。いわゆる「2024年問題」です。

具体的には、時間外労働は月45時間・年360時間が上限となり、臨時の特例でも年720時間を上限として月100時間未満、月45時間を超えることができるのは年6ヶ月以内に規制されます。住宅業界ではこれまで半ば容認されてきたような、営業職や工務職の長時間残業や休日出勤が是正される方向に進みます。

従業員数が変わらず1人当たりの労働時間を減らさざるを得ないとすれば、時間当たりの生産性を高めないことには売上・利益を維持できないこととなります。

“働き方”を見直し、優秀な人材を獲得しながら生産性を高めることは、売上の伸長や収益構造の改善にもつながってくるはずです。

1人当たりの労働時間を短縮するには?

時間外労働を減らし、1人当たりの労働時間を短縮するのには、以下の3つの施策が考えられます。

①社内ルール・制度を整える

とある分譲ビルダーでは、2020年4月に完全週休2日制度を導入し、2022年4月からは月1回の完全週休3日制度に移行しています。終業5分後の18時5分にはPCがシャットダウンするシステムを導入し、事前申請による延長でも各営業所が完全閉館する19時半までしかPCを使用できないようにしています。

同社では、半ば強制的に制度とシステムを先に整えることで、時間内に仕事を終わらせる意識が社員間で自然に芽生え、社員がタバコ休憩や無駄話に費やす時間が減ったそうです。

業務時間に“コアタイム”と“質問タイム”を設定しているビルダーもあります。部下から上司への質問、上司から部下への指示等は質問タイムにのみ行うようにし、コアタイムは社員同士の会話を禁止して個々の業務に集中できるようにしています。

また、時間外労働の有無にかかわらず、月40時間相当分の固定残業代を支給することで、無駄な残業を減らすようにしています。


②一人ひとりの業務を効率化する

住宅会社の各種業務を効率化するために普及が進んでいるのが、クラウド型現場管理システムに代表されるようなDXツールです。

インボイス制度に対応するため、帳票類の電子化・電子保存の導入は急ぐべきであり、会計・経理、勤怠・労務管理などのバックオフィス業務はできるだけDX化を進めておきたいです。顧客管理も紙からDXに変えるだけで進捗管理や検索が効率化でき、MA(マーケティングオートメーション)を活用すれば反響分析・追客を見える化できます。

この他にも、DXを活用した様々なツール・サービスがありますが、やみくもに何もかも取り入れればよいというわけではありません。まずは現在の業務上の課題を改善するのにコストが見合っているかを検証し、本当に有益なものだけを導入して、そのシステム・サービスの活用を社員に徹底することが重要です。


③分業化、一部業務をアウトソースする

個人が抱えている業務を切り分け、業務の習熟度によって担当業務を振り分けることで、1人当たりの業務量・労働時間を削減することができます。

例えば営業担当の業務は、一昔前と比べると随分と分業が進んでいます。SNSやWEB広告の運用も含めた集客戦略・WEBプロモーションは、専任担当を置く住宅会社が増えました。チーム制営業で、初回接客からの次回アポ、プレゼン、クロージングという商談の各工程をチーム内で切り分けて、経験を積むごとに難しい業務にステップアップするという社員育成を行っているケースもあります。

最初から1から10の仕事を教え込んで、それがすべてできて一人前となると戦力化するまでに年数がかかり、達成感が得られず離職することも懸念されます。まずは1~2の業務で戦力化し、次は3、4と業務の幅を広げていくという方法で、離職を防ぎながら社員を育成することができます。

切り分けた業務の一部はアウトソースすることで社員の負担を減らすという選択肢もあるでしょう。

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株式会社住宅産業研究所(JSK)
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1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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