市場はどうなっている?コロナ禍で変わったリフォーム検討客の住宅会社選び
インターネットでリフォーム業者を検討するユーザーが増加
2020年春のコロナ禍初期は、リフォーム業界に暗雲が立ち込めていました。顧客のボリュームゾーンが60歳代や70歳代のシニアということもあり、リフォーム営業担当者が現地調査や商談を断られるケースが発生するなど、顧客へのアプローチが困難な状況が続きました。
このリォーム市況が変化し始めたのは、2020年の秋でした。この頃から、ステイホームで自粛生活を続けてきた反動で発生した、いわゆるリベンジ消費が顕在化し始めました。
リフォームもその一つで、在宅時間が長くなったことで自宅の不満点に気付いたり、もっと住みやすくしたいという願望が生まれたりというエンドユーザーが急増しました。さらに住設機器メーカーではハイグレードな製品の受注が伸びるなど、コロナ禍特有の需要も発生しました。
今回は、このコロナ禍の数年間で消費者行動がどのように変容したかについて、国土交通省が毎年実施している「住宅市場動向調査」を参考にリフォームユーザーの購買行動を分析します。
今回は2018年度と2023年5月に発表となった2022年度のアンケート結果を比較します。国内で新型コロナウイルスの国内感染者が初めて出たのは2020年1月頃、つまり2019年度の終わり頃です。よって、新型コロナの影響を全く受けていないのはその前年の2018年度と言え、比較対象としました。
着目したい設問の一つは、「施工者に関する情報収集方法」です。最多は「以前からつきあいのあった業者」で、回答率としては38.1%でした。TVのワイドショーなどでリフォームの訪問販売におけるトラブルが定期的に取り上げられることもあり、エンドユーザーにも知らない業者に依頼することに警戒する方が一定数います。一方で、新築を任せた業者などであれば、比較的安心して依頼できるはずです。
大手ハウスメーカーのリフォーム会社が業績を伸ばしてきた根底にはオーナーの存在があります。定期訪問などでリレーションを継続し、何かあったときにはオーナーから相談を受けるという関係を構築してきました。構法という観点でも、大手ハウスメーカーは独自の技術を導入していることもあり、この面でも囲い込みにつながります。セキスイハイムのユニット構法はその代表的な例です。
つきあいのあった業者に頼みたいというユーザーがいるものの、ここでボトルネックとなりやすいのは費用面です。自宅を建ててもらった住宅会社より、地場のリフォーム業者に依頼する方が安いということはよくあることです。ここでオーナーを手放さないためには、付加価値提案などが求められます。
例えば、メンテナンス系の案件であれば、「自社に依頼すれば保証がさらに10年延長」などが付加価値となりえます。内装系のリフォームにおいては住み心地の向上や工事品質、引き渡し後のフォローも、付加価値と言えます。これらは顧客にとっての安心につながる要素、お金に代えがたいはずです。
情報収集方法として、「インターネット」も上昇傾向にあり、2018年度の9.0%に対して、2022年度は16.9%でした。このアンケートの回答者の平均年齢は60.2歳ですが、この世代のユーザーも最近ではスマートフォンを使いこなす方が増えており、インターネットとリフォーム事業の親和性が高まっています。
自宅をよくしたい人が増えているエンドユーザーのリフォームの動機
次に着目したい設問は、エンドユーザーがリフォームに至った動機です。最多は「住宅がいたんだり汚れたりしていた」の36.5%でした。ただし、4年前からの比較ということでは7.0ポイント低下しています。この背景には建物の高耐久化や外装部材の耐候性の向上といった性能向上もあると考えられます。
2番目に多かったのが「家を長持ちさせるため」が23.7%で、0.1ポイントの微増でした。近年は、定期点検やメンテナンスなどの重要性を訴求する新築メインの住宅会社が増えているということも影響していると見られます。高耐久化した建物の資産価値を維持しやすくするためには重要な取り組みです
選択肢の中で最も回答率の上昇幅が大きかったのは「さしあたり不満はなかったが、よい住宅にしたかった」で、回答率としては4年前から2.7ポイントプラスの12.3%でした。建物の高耐久化もあり、メンテナンスだけでは受注が伸びにくくなりつつあり、「さしあたり不満がない」状況が進んでいます。「よい住宅」を実現するためにも住宅性能や住まい方にフォーカスした提案力の強化に取り組んでいきたいところです。
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