戸建住宅と中古住宅の需要が上昇?住宅市場の現状と今後の業界予測!
不動産事業に携わるうえでは、住宅市場の変化を的確に把握しておくことも大切です。不動産の需要は経済や社会情勢の変化と密接なかかわりを持っているため、常に最新の状況をチェックしておく必要があります。
今回は住宅市場の現状をさまざまな観点から確認したうえで、今後に予測される業界の変化について見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.住宅購入、住宅市場の現状
- 1.1.住宅価格の高騰
- 1.2.住宅に求められるニーズの変化
- 2.分譲一戸建て・中古住宅の購入平均年齢が低下
- 3.2023年が住宅購入のチャンスと言われている?その理由は?
- 3.1.住宅ローン控除の変化
- 3.2.補助金制度の充実
- 4.今後の業界予測
- 4.1.2025年問題の影響
- 4.2.4号特例の見直し
- 4.3.新築住宅の需要低下
- 5.住宅会社へのアドバイス
住宅購入、住宅市場の現状
2023年の住宅市場は、具体的にどのような状態にあるのでしょうか。ここでは2つの主なトピックから、住宅市場の現状を確認しておきましょう。
住宅価格の高騰
2023年現在、住宅価格は建築資材の高騰などを理由として、上昇傾向が続いています。新築市場を揺るがせたウッドショックからは2年が経過しており、木材価格は落ち着きを見せている一方で、設備や外壁、サッシといった部材の価格は相変わらず上昇が続いています。
また、住宅ローン金利の若干の上昇や物価高なども影響し、相対的に住宅価格は上昇傾向です。実際のところ、国土交通省の令和5年5月31日時点における「不動産価格指数」によれば、住宅の価格は2020年を境に大きく上昇していることが分かります。
特に目立つのは東京都におけるマンション価格の変化ですが、一戸建て住宅も2020年の指数を「100前後」とすると、2023年現在では「120程度」にまで上昇しています。
住宅に求められるニーズの変化
社会情勢や価値観の多様化によって、住宅に求められるニーズも大きく変化しています。特に、テレワークの普及による働き方の変化は、居住エリアに大きな影響を与えると予測されていました。
当初は出社の頻度が減り、在宅の機会が多くなるため、交通利便性よりも広さを求めて郊外への流出が進むと考えられていた部分もありました。しかし、実際には新型コロナウイルスの影響が落ち着くと、再び出社を必要とする企業が増えていったのです。
すると、在宅勤務を通じて「移動のストレスが軽減されることの重要性」を実感する人が増えたことで、かえって駅近や都心部といった利便性の高いエリアのニーズも高まっていきました。一方、もともと都市郊外に住んでいた層には、新たなニーズが見られるようにもなっています。
そのうちの一つが、「賃貸から一戸建て購入へのシフト」です。在宅勤務の増加によって、もう少し広いところに住みたいと感じる子育て世帯が増えたことで、同じエリアでより広い一戸建てを購入するという動きが活発化しているのです。
分譲一戸建て・中古住宅の購入平均年齢が低下
住宅価格の高騰に伴い、新築注文住宅と比較して、価格が控えめな分譲一戸建てや中古住宅への人気が高まっているのも現在の住宅市場の特徴です。たとえば、住宅金融支援機構が行った「フラット35利用者調査」によれば、中古住宅の購入者割合は2021年度時点で調査以来最多(24.7%)を記録しました。
2022年度も24.1%と中古市場は変わらずに活性化しており、若年層を中心に、新築にこだわらないケースが増えています。なお、リフォーム受注動向は堅調な推移を見せており、ここ10年を通じてそれほど大きな変化は見られません。
2023年が住宅購入のチャンスと言われている?その理由は?
不動産の需要はさまざまな要因によって変化しますが、2023年は比較的に住宅購入に適した買い時とされている部分もあります。ここではその理由について、いくつかのポイントから見ていきましょう。
住宅ローン控除の変化
2022年度の税制改正大綱により、住宅ローン控除の制度が大幅に見直されたことで、住宅購入市場にも大きな影響が生まれています。特に「2024年以降に利用するためには省エネ性能が必須」という条件が加わったことで、一般住宅の滑り込みでの需要は大幅に増加すると考えられます。
補助金制度の充実
2023年度の住宅関連の補助金制度は、子育て世帯や環境に配慮した住宅を求める層に対して手厚いという特徴を持っています。そのうちの多くは新築住宅が対象であり、「省エネ性能の実現」が必須となっていますが、各種補助金を活用した住宅購入のニーズは高まっているといえるでしょう。
今後の業界予測
今後の不動産業界にはどのような変化が起こるのでしょうか。ここでは、すでに決まっている動きなども含めて、予想される変化を見ていきましょう。
2025年問題の影響
2025年問題とは、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、超高齢社会への移行に伴うさまざまな変化のことです。具体的な影響としては医療費・介護費の増大、現役世代の負担の増加、深刻な人材不足などが挙げられます。
2025年問題については、不動産業界に限らず、あらゆる業界・企業が対策を迫られている状況といえるでしょう。そのうえで、不動産業界においては、住宅需要の低下や消費の冷え込み、人材難などが重要な課題になると予想されます。
4号特例の見直し
4号特例とは、小規模な木造住宅(一戸建てなど)において、建築士が設計を行う場合は構造関係規定等の審査が省略されるという制度です。これまでの制度では、4号建築物に「木造平屋建てと木造2階建て」が含まれており、両者は審査省略制度の対象となっていました。
しかし、2025年4月に新制度が施行されることで、「延床面積200平米を超える平屋と木造2階建て」は審査が省略できなくなります。そのうえで、特に重要な変化は、「確認申請時に省エネ関連の図書の提出が必須となる」という点にあります。
このように、省エネ基準の適合が実質的に義務化されていくと考えるため、住宅の建て方にも大きな変化が生まれていくと予想できるでしょう。
新築住宅の需要低下
これまでの変化も踏まえると、新築住宅の販売難易度は従来よりも高くなっていくと考えられるでしょう。住宅需要の減少が長期化すれば、住宅供給・販売を行う事業者にも淘汰の流れが訪れる可能性は十分にあります。
一方で、中古住宅の需要増加や超高齢化に伴うバリアフリーの重要性が高まることにより、リフォームは堅調な伸びを見せていくと考えられています。市場環境の変化を乗り越えるためには、新築市場だけでなくさまざまな分野に目を向ける柔軟性がカギといえそうです。
住宅会社へのアドバイス
これまで見てきたように、住宅業界には今後もさまざまな変化が起こっていくと予想されます。社会の複雑な変化に対応しつつ、競合他社に負けない強みを確立していくためには、次のようなポイントに目を向けてみることが大切です。
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不動産業におけるストックビジネスとは、たとえば「既存住宅の流通」「オフィスなどの流通」「管理業や賃貸業との並立」などが挙げられます。また、従来のように「販売して終わり」というビジネスモデルではなく、数十年後のリフォーム、相続相談、片づけなども含めたトータルサポートを検討してみるのも一つの方法です。
また、街づくりや行政機関との協力といった点にも視野を広げつつ、独自のビジネスモデルを構築することが重要となっていくでしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:2023年の住宅市場の特徴は?
A:都心のマンションを中心に価格高騰が続いており、2020年以降は一戸建ての価格も上昇傾向にあります。それに伴い、中古市場の活性化が目立つようになっているのが近年の住宅動向の特徴です。
Q:不動産業界は今後どうなる?
A:直近に控えた2025年問題や4号特例の見直し、省エネ基準適合の義務化といった大きな変化により、新築住宅の供給・販売の難易度は高まっていくと予測されます。それに伴い、リフォームや既存住宅の流通も含めた幅広い機会に目を向ける重要性が高まっています。
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