本格化するホームセンターのリフォーム事業。事業拡大のカギはロイヤルカスタマーの育成とマイスター制度?
近年、リフォーム事業に参入、または強化するホームセンターや家電量販店などの小売事業者が増えています。ホームセンターはもともと、DIY(日曜大工)を趣味とする顧客に対して部材や工具などを販売していたところから、DIYでは対応しきれない住まいの困り事の改修・修理や、住宅リフォームというように事業を拡大する流れが広がってきています。
また、従来のホームセンターのリフォーム事業は、電球や網戸の交換というような軽微な補修などの小規模工事を得意としていました。
しかし近年のリフォーム需要の拡大を受け、ホームセンターを含む小売事業者各社では、新たに複合リフォームやリノベーションなどの高単価で専門性が高いリフォームの受注を強化するようになっています。
少額工事をリピート受注し、ロイヤルカスタマーを育成
埼玉県に本社を置くホームセンターのカインズは、2023年6月1日時点で全国に234店舗を展開しています。その内、175店舗にリフォームの売り場を設置し、リフォーム専任のスタッフを配置してリフォーム相談を受け付けています。2022年度は年間18万件のリフォーム工事を施工しており、リフォーム売上高は320億円となっています。
カインズが取り扱うリフォーム事業は、大きく3種類に分かれています。水まわりの交換から、間取りの変更を伴う全面リフォームまでを行う「フルリフォーム」。キッチンやトイレ、洗面化粧台等の部分ごとの交換を行う「ポイントリフォーム」。電球1個の交換から受け付ける「くらしサポート」です。
リフォーム最安値である電球1個の交換は1,200円で受け付けており、同社のリフォームの特徴は、「くらしサポート」に分類される少額工事がリフォーム受注の大半を占めているということです。
細かいところで顧客の困り事を解決していくことで顧客をロイヤルカスタマーへと育成しています。ロイヤルカスタマーとは、いわゆる常連客のことで、企業やサービスに信頼を寄せてくれているため他社と競合することが少なく、売上への貢献度も高い顧客のことです。
便座の交換や家具の組み立てなど工事単価1万円以下のものを自社職人で請け負い、顧客との関係性を継続していくことで、将来的に複合リフォームや間取り変更などの大きな工事を受注できるようにするというのが同社のリフォーム事業の特徴となっています。
マイスター制度で販売強化、全国店舗に受注窓口を拡大
新潟県に本社を置き、全国に1200店舗以上を展開するホームセンターのコメリ。店舗のフォーマットは、人口10万人規模の商圏に出店する大型店舗の「パワー」と小商圏をカバーする「ハード&グリーン」となっています。
各エリアの中心となる市街地に「パワー」を出店し、周辺の小商圏に「ハード&グリーン」を出店するといった出店戦略を取り、全国をくまなくカバーしています。
コメリでは、2000年にリフォーム事業に参入し、店舗数の拡大とともにリフォーム事業も拡大しています。2022年度は年間6万件を超えるリフォーム工事を施工しており、リフォーム売上高は158億円となりました。
同社の強みは圧倒的な店舗網で、大型店舗を中心に約170店舗にはリフォーム専任のスタッフを配置します。また2022年10月からは全店舗で複合リフォーム等の大型工事を含めたリフォーム相談を受け付けられる体制を整備しています。
リフォームの専任スタッフが常駐していない店舗では、一般の従業員がリフォーム相談を受け付け、洗浄便座の取り付けや交換等の小規模な案件であれば、受注から発注までをその場で行うことができるということです。
これらを可能にしているのが同社の特徴的なスタッフ教育制度である「マイスター制度」です。「マイスター制度」とは、同社の店舗で扱う商品カテゴリー別に1~3級の階級制度を設けたもので、スタッフは保有する階級によって案内できる商品が変わります。
リフォームのカテゴリーでは、従業員の約7割が3級を取得しており、約3割が2級を取得しています。1級は主にリフォーム専任スタッフなど現地調査を必要とするスタッフが取得しています。
マイスターの試験は毎月Webテストで実施されています。同社では業務中に試験勉強をすることを推奨しており、勉強時間を従業員の勤務シフトに落とし込み、学習に専念できるようにしているということです。
コメリでは、マイスター制度の導入により、一般スタッフでもリフォームに対する知識が身に付き、顧客からのリフォーム相談にもその場で対応することが可能になったことで、業務効率が高まり、スタッフの生産性の向上にもつながっているということです。
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