まだまだ続く平屋ブーム!幅広い世代に人気のその理由とトレンドデザインとは?
一昔前までは、平屋といえば古い住宅の代表的な特徴とされていました。しかし、現在では機能性や個性的なデザインが注目を集め、若い世代を中心に平屋のブームが続いています。
今回は平屋がどのような理由で人気を集めているのかを解説したうえで、トレンドのデザインや、営業を行う側の視点で重視すべきことなどをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.続く平屋ブーム
- 2.なぜ? 平屋が人気な理由
- 2.1.地震に強い
- 2.2.老後の暮らしを見据えたニーズの高まり
- 3.平屋のトレンドデザインを紹介
- 3.1.差し掛け屋根を取り入れたシンプルモダンな平屋
- 3.2.中庭が魅力のロの字・コの字形設計
- 3.3.勾配天井と見せ梁
- 4.平屋の販売を考えるときのポイント
- 5.ライフスタイルの提案が重要
- 6.この記事を監修した人
- 6.1.三輪 歩己
続く平屋ブーム
新築住宅の戸数全体で見れば、やはり居住面積を確保しやすい2階建て以上のつくりが依然としてメジャーです。しかし、平屋の着工数も着実に増加しており、若い世代を中心に人気を集めています。
たとえば、国土交通省の「建築着工統計調査」によれば、平屋の着工数は2016年で3万7,947棟であったのに対し、2022年は5万7,575棟と大幅に増えていることが分かります。また、2022年における居住用建物(一戸建てか集合住宅かは問わない)のうち、平屋の割合は全体の13.9%であり、以下のように年々増加していることが明らかです。
年 |
全体数(戸) |
平屋の数(戸) |
平屋の割合 |
---|---|---|---|
2016 |
459,585 |
37,947 |
8.3% |
2017 |
455,665 |
41,505 |
9.1% |
2018 |
455,301 |
44,451 |
9.8% |
2019 |
459,418 |
48,585 |
10.6% |
2020 |
412,168 |
46,334 |
11.2% |
2021 |
447,404 |
55,828 |
12.5% |
2022 |
415,428 |
57,575 |
13.9% |
このことから読み取れるように、平屋のブームは決して一過性のものではなく、静かながらも長く続いていることが分かります。
なぜ? 平屋が人気な理由
そもそも、平屋が人気を集めているのにはどのような理由があるのでしょうか。ここでは、大きく2つのポイントに分けて見ていきましょう。
地震に強い
平屋の大きな特徴として、地震に強いことが挙げられます。平屋は高さが抑えられる分、そもそも揺れが小さく収まりやすく、地震だけでなく強風などの影響も受けにくい構造です。
地震大国ともいわれる日本では、住宅性能において耐震性を重視されるケースが多く、災害への強さが平屋人気の理由の一つと考えられます。
老後の暮らしを見据えたニーズの高まり
平屋のもう一つの特徴は、ワンフロアで高いバリアフリー性を持っている点です。階段が必要ない構造であるため、老後を迎えてからも不便に感じられにくく、生活動線を効率的にまとめられるのがメリットです。
また、そもそも少子化の影響で、従来ほど広い居住面積を必要としない世帯も増えています。2階建て以上で無理に生活スペースを確保するよりも、夫婦二人になってからも安心して住めることを大事にしたいという発想から、平屋が選択されるケースもあります。
平屋のトレンドデザインを紹介
平屋は構造上の安定性が高いため、2階建て以上よりも個性的な形状やデザインを実現しやすいのも大きな魅力です。ここでは、外観、内装、間取りなどの面から、平屋のトレンドデザインをいくつかご紹介します。
差し掛け屋根を取り入れたシンプルモダンな平屋
平屋はシンプルでモダンな外観との相性が抜群であり、スッキリとしたデザインは2階建て以上の物件にない魅力といえます。そのうえで、最近では屋根にこだわりを取り入れ、個性を演出するケースが増えています。
代表例として挙げられるのが「差し掛け屋根」です。段違い屋根と呼ばれることもあり、2枚の屋根をあえて段差をつけて取り付け、非対称にするのが大きな特徴です。
「広い屋根裏空間をとれる」「自然光の採光面積が広がる」「風に強い」といった実用的なメリットもあるため、トレンドのアイデアとなっています。
中庭が魅力のロの字・コの字形設計
平屋は構造的な安定度が高いことから、ロの字形やコの字形といった特殊な形状も比較的に実現しやすいといえます。ロの字形やコの字形の場合、中庭を設けられるため、住宅の全方向から光が取り込めるようになります。
土地の形状や周囲の環境にもよりますが、個性を追求するデザインの選択肢として、意識してみるといいでしょう。
勾配天井と見せ梁
平屋は天井高を確保しやすく、空間を広くとれるのも特徴です。この魅力を最大限に生かせるのが、高さをつけた「勾配天井」です。
おしゃれな内装が実現されるのに加えて、中2階を設けてセカンドリビングにするなど、さまざまなアイデアを取り入れることもできます。天井を板張りで仕上げたり、あえて梁を見せてアクセントに用いたりすることで、デザイン性がワンランクアップするでしょう。
平屋の販売を考えるときのポイント
平屋を販売するうえでは、どのようなポイントが顧客のニーズを満たしているかをきちんとイメージする必要があります。それにはまず、平屋の客観的な強みと弱点を適切に理解しておかなければなりません。
これまでに見てきたように、平屋は「バリアフリー性が高い」「生活動線が効率的」「地震に強い」といったさまざまなメリットがあります。また、高さがないためメンテナンスがしやすく、屋根が広いことから太陽光発電との相性がいいことも利点です。
一方で、防犯や水害などに対する安全性は、顧客に懸念されやすいポイントとなります。特に河川の近くなどの土地では、浸水被害による影響が大きくなるため、平屋への不安は感じられやすいでしょう。
また、十分な敷地がない土地では、平屋にすることで収納が不足してしまうケースもあります。平屋を探している顧客は、間取り図を確認しながら、収納の少なさに不満を感じている可能性も考えられます。
このように、まずは顧客が感じやすい不安や不満を先回りして予想しておき、自分なりの提案や対策を考えておくことが大切です。そのためには、企業や担当者自身が平屋の事例を数多く把握し、魅力と欠点を深く理解することが必要不可欠となります。
ライフスタイルの提案が重要
平屋の営業を行ううえでは、2階建てと迷っている顧客が数多くいることを想定して準備を進めることが大切です。スタート時点から「平屋以外には考えていない」という明確なイメージを持っているケースの方が、むしろ珍しいでしょう。
そこで、実際に居住しているイメージを持ってもらうためにも、ライフスタイルの提案と併せて販売業務を考えることが大切です。たとえば、キャンプが趣味の顧客に対して、アウトドア風の平屋の事例を紹介したり、キャンプ道具を収納しやすいつくりを提案したりするといった方法が考えられます。
そのほかにも、子育てやペットとの暮らし、老後の生活などを踏まえて、いくつかのパターンで平屋での暮らしを知ってもらうのがポイントです。実際の生活スタイルと重ね合わせることで、単にメリットや魅力に触れるよりも、より購入のイメージを持ちやすくなるでしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:平屋ブームはどのくらい続いている?
A:国土交通省のデータによれば、住宅における平屋の割合は2016年以降、年々増えてきています。2022年には全体の13.9%が平屋となっており、今後ますます上昇していく可能性も十分にあると考えられます。
Q:平屋が人気の理由は?
A:構造上の安定性が高く、地震に強いのが人気の理由の一つです。それ以外には、「個性的なデザインを実現しやすい」「バリアフリー性が高い」といった魅力があると考えられます。
また少子化により、以前よりも「コンパクトな居住面積で十分」と考える世帯が増えていることも大きく関係しているでしょう。
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この記事を監修した人
三輪 歩己
不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)、 相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント
名古屋市立大学薬学部卒。 大学在学中に不動産鑑定士2次試験合格。日本土地建物株式会社にて、 不動産鑑定や不動産証券化業務に従事。その後外資系不動産ファンド等にて 物件購入・管理・経営企画等業務に従事。約20年間の鑑定・宅地建物取引業の 経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。 同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として 活動を行う。