補助金に沸いた2023年、自宅リフォームの需要喚起へ
窓リフォームが居住者の健康を守る
この1年間で、住宅の断熱性能に対するエンドユーザーの関心が急速に高まりました。その一因が、2022年に相次いだエネルギー価格の上昇です。昨今の世界情勢や円安などに起因して、原油や液化天然ガス、石炭などのいわゆる化石燃料が高騰し、これらを受けて電力会社各社も電気料金の値上げを行いました。
これが国民の家計を圧迫することとなりましたが、そこで光熱費を抑える方法の一つとして全国的に注目度が高まったのが、窓のリフォームです。既存の窓に内窓を設置したり、高性能の二重サッシなどにつけ替えたりすることで断熱性能アップとともに冷暖房機器の負荷の軽減、節電、電気代の削減効果が見込めます。これらはテレビ番組など多くのメディアでも取り上げられました。
さらに、エンドユーザーの窓リフォームを後押ししたのは手厚い補助金です。2022年に管轄の経済産業省と環境省の両省から「先進的窓リノベ補助事業」が発表されると、多くのリフォーム会社が補助金を絡めた販促を実施しました。
補助額は、1戸当たり最大200万円。工事内容によっては費用の半額程度が補助されるということもあり、エンドユーザーからの改修依頼も増加しました。ここで逼迫したのは部材供給で、とある窓メーカーでは納期が最大2~3ヶ月まで長期化したということもありました。
この11月上旬時点で申請額が予算規模に対して一戸建てが70%台、マンションは80%台で推移しています。好評だった窓リノベ補助事業も終わりが見えてきましたが、政府発表によると後継となる補助事業が今後スタートすることとなるようです。
この11月10日、令和5年度補正予算案が閣議決定され、この補正予算案には、窓リノベ補助事業の後継事業と言える「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」が盛り込まれています。後継事業等の交付申請は、2024年3月以降の受付開始となる予定です。
住宅業界としては、今年の盛り上がりを機に、今後も窓リフォーム需要の掘り起こしに努めていきたいところです。国土交通省が実施した2018年住宅・土地統計調査によると、国内の住宅の68%は単板ガラス窓のみで、断熱性能が乏しい住宅は多くあります。つまり、窓リノベの潜在的需要はまだまだ膨大です。
断熱性能向上の効果ということでも、先述の光熱費削減だけではありません。コールドドラフトが起こりにくくなったり、夏季や冬季においても屋内の温度を一定に保ちやすくなったりと、住み心地の向上が期待できます。部屋間の温度差が生じにくくなると、浴室などで発生するケースが多いヒートショックの予防にもつながります。
住宅ストックの性能向上を支援する背景には、政府が今推し進めている政策の一つ「グリーントランスフォーメーション(以下、GX)」もあります。
GXとは、脱炭素社会を目指す取り組みを通じて経済社会システムを変革させ、持続可能な成長を目指すことを意味しています。住宅分野では、新築戸建の2025年度の省エネ基準適合義務化や2030年度のZEH水準の性能確保などを通じてGXに貢献する計画を掲げています。
新築住宅の価格上昇、消費者の実質賃金低下…中古住宅検討層が増える?
先進的窓リノベ補助事業を含むリフォーム関連の補助金は自宅のリフォームを後押しするだけでなく、住宅購入を検討しているエンドユーザーにとって選択肢を広げることにもつながります。つまり、今後はこれら補助金によって、中古住宅を購入して、リフォームによって自身の理想の住まいを手に入れるという消費者が、一層増える可能性があります。
その背景にあるのは、コロナ禍以降の新築住宅の高騰です。特に首都圏のマンションの場合、ファミリータイプであれば6,000万円以上は当たり前、都内となるとさらに高くなっています。土地価格は地価公示ベースで2年連続の上昇、一戸建て住宅ももちろん値上がりが続いています。
一方で、実質賃金は減少傾向にあります。この要因には今年に入ってから消費者物価指数は3%台で上昇している一方で、賃金上昇がインフレに追いついていないことが挙げられます。
実質賃金が低下している今、新規の住宅購入検討者が増えにくい状況が続いていると言えます。それを裏付けるように2023年度の持ち家の新設住宅着工数も停滞しています。4月から9月までの半年間においては前年比10%マイナスで、21世紀に入ってから過去最低のペースです。
今後、中古住宅の購入を検討する消費者が増えることは間違いないでしょう。躯体性能は、補助金を活用して断熱性や耐震性いずれも新築並みに高めることもできます。中古住宅の価値の再評価にもつながり、国内のストック流通はさらに活発になるかもしれません。
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