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省エネ住宅表示ラベルの項目ごとの意味を理解しよう

省エネ住宅表示ラベルの項目ごとの意味を理解しよう

LIFULL HOME’S総研の中山です。
今回は、2024年4月からスタートした建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度(以下、表示制度)について、特に広告用として使用される表示ラベルに記載された各項目ごとにその詳細を解説します。

表示ラベル(および評価書)には「住宅用」と「非住宅用」があり、住宅用には「住戸用」と共同住宅の共用部について表示する「住棟用」があります。それぞれに「自己評価版」と「第三者評価BELS版」があるので、全部で10種類になりますが、ここでは新築戸建住宅で使用される「住戸用第三者評価BELS版」を例に説明します。

目次[非表示]

  1. 1.表示ラベルは住宅性能に関する情報の宝庫 物件の差別化に活用可能
  2. 2.コスパを見える化する最重要ポイントは「目安光熱費」
  3. 3.建物名称表記は任意だが国は物件特定のために強く推奨
  4. 4.ちょっと紛らわしい?「ZEH水準」と「ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)」の違い
  5. 5.現状では評価日に期限なし それでも再評価する必要あり
  6. 6.今回のまとめ:表示制度は住宅性能とコスパがわかる。ユーザーには大きなメリット

表示ラベルは住宅性能に関する情報の宝庫 物件の差別化に活用可能

では、実際にラベルをご覧いただきながら解説していきましょう。
まず、住宅の「住戸用」か「住棟用」かの区分が左上端に表示され、その下中央に、最も重要な表示内容である、エネルギー消費性能のBEI、つまり省エネ性能を星の数6段階で、そして断熱性能を家の形の7段階で、それぞれ表示しています。

これによって、現在自分が買おう、もしくは借りようとしている住宅の省エネ性能と断熱性能がどれくらいのレベルなのかが一目瞭然ですから、住宅性能が高いのか、それほどでもないのかが数値ではなく直感的に認識できるのが大きなポイントです。

BEIとはBuilding Energy Indexの略で、建物のエネルギー効率を数値で示す指標です。国が定めるエネルギー消費量の基準を1とした際に、対象物件のエネルギー消費量がどの程度かを示しています。例えばBEIが0.8であれば削減率は20%ですから、星3つ(0%が星1つ、10%ごとに星1つ追加)となります。

コスパを見える化する最重要ポイントは「目安光熱費」

次に、「目安光熱費」という項目があって、年間の光熱費の目安がいくらくらいになるのかが、万円単位の金額で表示されます。

こちらはあくまで目安(全国一律料金で計算)で、もちろん使い方によって違いますが、それでもこの住宅を購入および賃貸した場合に、年間でどれくらいのランニングコストが発生するのかをイメージすることができるので、この住宅の“コスパ”が高いのか低いのかを比較検討する際の重要な指標にすることができます。

こちらの項目は「住棟用」では非表示とされています。また「住戸用」でも必須ではなく、任意表示とされているため、記載されていないケースも想定されます。その場合は、担当者が口頭で説明できるようにあらかじめ準備しておくべきでしょうし、ユーザーにとって関心がとても高い項目といえるでしょう。

建物名称表記は任意だが国は物件特定のために強く推奨

そして、「目安光熱費」の表示の下には「自己評価版」なのか「第三者評価BELS版」なのかの区別と、建物名称が記載されます。建物名称については掲載が任意とされていますが、国土交通省からは、広告掲載時のラベルの取り違えを防ぐために、記載を強く推奨するとのことですから、半分必須項目くらいに考えておいたほうがいいかもしれません。

新築一戸建て住宅についても、媒介契約時の社内での記号・番号などを活用して、表示物件の取り違えが万が一にも起きないようにしておくことが大切です。

ちょっと紛らわしい?「ZEH水準」と「ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)」の違い

続いて、右上に移ると、再エネ設備の有無についての表示があります。再エネ設備とは、太陽光発電・太陽熱利用・バイオマス発電などの再生可能エネルギーを生産する設備がこの住宅用に設置されているかを示したものです。設置されていれば「再エネ設備あり」、なければ「再エネ設備なし」と表示されます。

次に「ZEH水準」についての表示があります。こちらは太陽光発電で自家消費する分を除いた一次エネルギー消費量が星3つ、かつ断熱性能が家の数5つ以上であれば、チェックが入ります。そして少々わかりにくいのがこの「ZEH水準」表示の下の「ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)」です。

これは上記の「ZEH水準」の達成に加えて、太陽光発電の売電分も含めて、年間のエネルギー収支がゼロ以下、つまりネットでゼロ・エネルギーを達成している住宅であればチェックマークがつきます。

ZEH基準を満たしている建築物は一次エネルギー消費量等級6以上、断熱等性能等級5以上ですから、星の数がフルの6つ、そして断熱性能の家の数が5つ以上であれば、この「ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)」の項目にチェックが入ります。

長期優良住宅や低炭素住宅なども同じく一次エネルギー消費量等級6以上、断熱等性能等級5以上ですから、これらに該当している住宅であれば、ここにチェックが入ることになります。ただし、この項目は「第三者評価BELS版」のみに表示されることとなっており、「自己評価版」には表示されませんのでご注意ください。

現状では評価日に期限なし それでも再評価する必要あり

そして最後に、右下に評価日が西暦で表示されます。評価日の期限は何ケ月以内というような定めはありませんので、同じ物件について定期的に評価を取り直す必要はありませんが、あまりに古い評価日はユーザーに与える印象も決してよくはありませんし、「目安光熱費」の金額もエネルギー価格によって変動することが考えられますので、必要に応じて再評価を実施することも考慮してください。

今回のまとめ:表示制度は住宅性能とコスパがわかる。ユーザーには大きなメリット

住宅性能表示ラベルの内容は、評価書にも同様に記載されますが、ラベルは広告に使用するためとても目立つものですし、何より新しい制度としてユーザーも注目しています。

特にこれまでにない住宅の本体価格や月額賃料といった“イニシャルコスト”だけでなく、目安光熱費という“ランニングコスト”の情報が公開されるわけですから、コスパを特に強く意識するユーザーには歓迎すべき表示制度です。ぜひ、正確さを第一に、ユーザーにとって有益な情報提供となるよう、明示することを心がけてください。


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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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