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建設業DXとは?建設業界が抱える課題や具体的な事例まで分かりやすく解説!

建設業DXとは?建設業界が抱える課題や具体的な事例まで分かりやすく解説!

近年さまざまなシーンで取り上げられるようになった「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。DXはデジタル技術の活用によって、ビジネスモデルの抜本的な変革を進める取組みのことであり、建設業においてもその重要性に注目が集まっています。

今回は建設業界が抱える課題を踏まえて、建設業DXの重要性や進め方、具体例などを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.建設業DXとは
    1. 1.1.生産性の向上
    2. 1.2.働き方改革の促進
    3. 1.3.イノベーションの創出
  2. 2.建設業を取り巻く課題とDXが注目される背景
    1. 2.1.深刻化する人材不足
    2. 2.2.高齢化に伴う技能継承の困難化
    3. 2.3.労働環境改善の必要性
  3. 3.建設業DXで活用される技術
    1. 3.1.BIM/CIM
    2. 3.2.クラウド
    3. 3.3.AI
    4. 3.4.5G
    5. 3.5.AR・VR・MR
  4. 4.建設業DXの具体例
  5. 5.建設業DXを進める方法
    1. 5.1.1.課題の把握
    2. 5.2.2.DX推進の目的と戦略の策定
    3. 5.3.3.要件定義・体制の構築
    4. 5.4.4.施策の実行
    5. 5.5.5.データ収集・評価・改善

建設業DXとは

「建設業DX」とは、文字どおり建設業におけるDXのことです。そもそもDXとはデータやデジタル技術を活用して既存の業務を効率化し、そこから新たなサービス・ビジネスモデルを創出したり、組織体制を変革したりすることを指します。

ここではまず、建設業DXを推進するメリットについて見ていきましょう。

生産性の向上

DX推進の取組みは、デジタル技術の活用による業務効率化からスタートします。たとえば、これまで紙を用いてやりとりをしていた業務をペーパーレス化し、情報共有のスピードを向上させるといったことがDXの第一歩です。

デジタル技術によって業務が効率化されれば、組織全体としての労働生産性が向上し、人材不足による課題の解消にもつながります。

働き方改革の促進

建設業DXは、働き方改革の促進にもつながります。労働生産性が向上することで、1人ひとりの労働負担が軽減されるため、長時間労働のような労務上の課題解決も期待できるでしょう。

事務作業などのバックオフィス業務も、デジタルツールを活用することでリモートワーク化やフレックスタイム化が可能となります。施工管理ツールなどを用いれば、現場にいながらリアルタイムで報告業務が行えるため、作業員の負担を軽減することも可能です。

このように、DXによって労務環境が改善され、働きやすい企業づくりにつながるのも重要なメリットです。

イノベーションの創出

DXの重要な目的はイノベーションの創出にあります。デジタル技術を用いて膨大なデータを効率的に管理し、適切な利活用によって新たなビジネスモデルを生み出したり、組織のあり方を改革したりするのがDXの中心軸といえるでしょう。

建設業を取り巻く課題とDXが注目される背景

建設業DXが重視される背景には、建設業が抱える特有の課題も大きく関係しています。ここでは、建設業の現状とDXとの関係性について見ていきましょう。

深刻化する人材不足

少子高齢化に伴う人材不足は、建設業に限らず、日本全体で抱える大きな問題といえます。2022年における建設業就業者数は、国土交通省が公表している「建設業を巡る現状と課題」によれば、479万人とされており、これはピーク時である1997年から約30%減にあたる数字です。

個々の企業が人手不足を解消する方法として、まず考えられるのは採用力の強化です。しかし、想定される人員に対してそもそも業務負荷が大きい場合は、人材採用にばかり力を入れても根本的な解決にはつながりません。DXによって業務効率化を進めることは、人材不足の解消につながる重要な施策となるのです。
※出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

高齢化に伴う技能継承の困難化

建設業においては、職人の高齢化に伴う技術・経験の属人化が大きな課題となっています。総務省の「労働力調査」(令和4年平均)によれば、建設技能者のうち60歳以上が占める割合は25.7%と高く、反対に29歳以下の割合は11.7%にすぎません。

技術や技能を持った職人が退職をすれば、技術的な財産が継承されないため、企業にとっては大きな損失につながります。DXの取組みによって技術のデータ化を実現することができれば、ノウハウがきちんと自社に蓄積されていくため、若い世代へ継承できるようになります。

若いメンバーが熟達者の技術に触れることで、新たな気づきやアイデアの発見につながったり、革新的なサービスを創出したりする可能性も期待できるでしょう。

労働環境改善の必要性

建設業においては、現場での業務や過大な事務作業による長時間労働が長年の課題とされてきました。特に2024年には、働き方改革関連法の時限的な特例処置が解除され、建設業においても時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。

それにより、働き方を見直す必要性に迫られている企業は決して少なくないといえます。労働力の増強のみに頼るのではなく、DXによって既存の仕組みを変革することが、現状の課題を解決する方途として考えられているのです。

建設業DXで活用される技術

建設業DXでは、具体的にどのようなデジタル技術が活用されているのでしょうか。ここでは、代表的な技術とそれぞれの特徴をご紹介します。

BIM/CIM

BIM/CIMは、計画・調査・設計の段階から3次元モデルを取り入れて、効率的な生産・管理を行う取組みのことです。3次元モデルの活用によって、「プロセス全体において関係者間の情報共有がスムーズになる」「ミスや手戻りが大幅に減少する」「単純作業が軽減される」「工程が短縮される」といったさまざまな効果が期待できます。

主にBIMは建築領域、CIMは土木領域で活用されます。

クラウド

ネットワーク経由でさまざまなサービスを提供する仕組みであり、メールやストレージ、ソフトウェア開発環境といった幅広い用途で活用されている技術です。建設業においては、図面や資料のスムーズな共有・確認などに活用することができます。

遠隔地でも問題なく情報共有が行えるため、たとえば現場や取引先への直行直帰が可能になったり、リアルタイムでの仕様変更が行えたりするといったメリットがあります。

AI

AIはすでにさまざまな分野で活用されていますが、建設業では作業の安全性や正確性、生産性の向上に役立ちます。たとえば、「画像認識技術による高所点検業務の自動化」などで、危険な作業を代替してもらうことも可能です。

5G

5Gとは第5世代の移動通信システムのことであり、高速かつ大容量のデータ操作、多接続環境下でのスムーズな動作などに特徴があります。容量が大きくなりがちな建設現場の3D映像共有や、多数のカメラ・センサーの同時接続などが可能となり、管理システムの選択肢が大幅に広がります。

AR・VR・MR

AR(拡張現実)は、コンピュータを用いて現実の風景などに仮想の映像を重ね、視覚的なイメージを作り出す技術です。ARの技術を用いれば、更地に完成後のイメージ映像を重ね、周辺の景観との相性を確認するといったことが簡単に行えます。

VR(仮想現実)は仮想空間を現実のように体感できる技術です。建造物を立体的に再現すれば、遠隔地にいながら内部を自由に移動できるため、クライアントとのコミュニケーションに役立ちます。

また、事故などの構造的なリスクを抱えた場所を発見するのに活用することも可能です。MR(複合現実)は現実空間の形状をゴーグルなどで認識させ、仮想のホログラムをディスプレイに投影することで目の前に浮かび上がらせる技術のことです。

まだ発展途上にある技術ですが、実物と同じサイズの建造物を現実空間上に表示し、ドアを開けたり室内を確認したりできるサービスなどの実現も想定されています。

建設業DXの具体例

これまで見てきたように、デジタル技術は着実に進歩を続けており、建設業で活かせるものも数多く存在しています。たとえば、建設業DXにつながる具体的なアイデアとしては、次のようなものが考えられます。

■建設業DXのアイデア例

  • クラウドによる速やかなデータ共有
  • 無人建設機械の遠隔操作
  • ドローンを活用した測量、点検
  • AIによる自動化シミュレーション
  • 3Dプリンタの活用による生産性向上


​​​​​​​前述のように、クラウドを用いたデータ共有は、業務の効率化や労働負荷の軽減につながる有効な施策です。さらに、5Gや3D技術を活用すれば、無人建設機械やドローンを高精度で遠隔操作することができます。

高所や危険な場所での作業を無人機械が代替することで、作業の効率化だけでなく、労働災害のリスクも大幅に減少されます。また、AIは蓄積されたデータから規則性や傾向を導き出し、事例や技術を法則化することが可能です。

AIの機械学習とデータを組み合わせれば、作業自動化のシミュレーションや、高度なノウハウの蓄積・分析などに活用することができます。さらに、建設業界と親和性の高い技術として挙げられるのが3Dプリンタです。

すでに3Dプリンタで建てられた住宅が手ごろな価格帯で販売されるなど、新たな商品の開発も着実に進められており、業界を超えて広く注目を集めています。

建設業DXを進める方法

DXは企業や組織のあり方を根本的に変革する取組みであるため、着手にあたっては戦略的なプランニングが必要となります。ここでは、建設業DXの基本的な進め方について見ていきましょう。

1.課題の把握

DXの進め方は企業の方針や現状によって大きく異なります。まずは自社の課題を明らかにするために、丁寧にヒアリングや調査を行いましょう。
「現場にどのような不満や問題点が存在しているのか」「どのような点を強みとして残すべきか」「業界における立ち位置はどうか」といった点を総合的に調査し、分析を行うことでDXの方向性を固めやすくなります。

2.DX推進の目的と戦略の策定

自社の課題を把握したら、DXを推進する目的と戦略を明確にしていきます。DXにはさまざまなアプローチ方法が存在するものの、単にデジタル技術を導入するだけでは、具体的なイノベーションの創出にはつながりません。

デジタル技術によってお客さまにどのような価値を提供するのか、社内のシステムをどのように変革していきたいのか、具体的なビジョンを描いておくことが大切です。また、DXの推進は長期的な取組みとなるため、戦略の策定もさまざまな視点で行う必要があります。

初期・中期・長期に分けて自社がどのように進んでいくべきかを定め、定期的に現状のチェックや戦略の見直しが行えるようにしておくとよいでしょう。

3.要件定義・体制の構築

目的や戦略が明らかになったら、達成するために必要な人材やスキル、ツールなどの要件を一つずつ定義します。たとえば、建設業DXに必要な人材のスキルとしては「デジタル技術の対応能力」「セキュリティに関する知識」のほかに、「コミュニケーション能力」や「調整力」「建設に関する専門知識」などが挙げられます。

自社の戦力も改めて分析しながら、どのような人材が必要になるのかを明確化しておくことが大切です。

4.施策の実行

実行体制が十分に整ったら、策定した戦略をもとにDXを実施します。実行段階においては、最終的な目標を見据えるとともに、小さなゴールにもきちんと目を向けておくことが重要です。

その理由は、目に見える成果があることで、DXに対する現場からの理解が得やすくなるためです。DXを進めるには、会社全体としての変化が求められるため、現状維持を望むメンバーからも協力を得なければなりません。

小さなゴールを着実に達成していくと、変化に抵抗感を覚えるメンバーにもDXを推進する意味や価値を理解してもらいやすくなるでしょう。

5.データ収集・評価・改善

施策の実行中は、定期的にデータの収集を行い、結果を客観的に評価することが大切です。評価結果に応じて戦略やリソースの配分の見直しを行い、継続的にPDCAサイクルを回すことがDXを実現するための基本となります。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建設業DXとは?
A:
建設業DXとは、デジタル技術の活用によって、建設業における業務効率化や新たなビジネスモデルの創出、組織体制の変革などを目指す取組みを指します。DXはさまざまな業界で重視されていますが、建設業では深刻化する人材不足や技術継承の難しさを解決する方法として期待されす。

Q:建設業DXで活用されるデジタル技術にはどんなものがある?
A:
代表的な技術としては、「クラウド」や「AI」、「AR・VR・MR」、「BIM/CIM」などが挙げられます。すでにビジネスで広く活用されているものだけでなく、発展途上にある技術にも目を向けることでDXの可能性が広がります。

Q:建設業におけるDXの具体例とは?
A:
代表的な例としては、クラウドを用いた速やかなデータ共有による業務効率化が挙げられます。また、無人建設機械やドローンの遠隔操作、AIを用いたシミュレーション、3Dプリンタの活用による新たな商品・サービスの創出などもDXの具体例といえます。


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