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人材確保につなげよう!建設業における若手育成のための重要なポイント

人材確保につなげよう!建設業における若手育成のための重要なポイント

建設業の人材確保においては、新たな人材を採用するとともに、若手の育成に力を入れることが重要となります。若い人材を大切に育てることで、組織の若返りが図れるとともに、企業に新たな視点やアイデアももたらされるようになります。

また、若手に長く働いてもらえる環境を整えれば、自然と定着率も高まるため、結果として採用力の強化にもつながるでしょう。今回は建設業における若手育成のポイントや注意点、具体的な取組み例について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.建設業における若手育成の課題
  2. 2.若手の人材が離職してしまう原因
    1. 2.1.現場の閉鎖的な人間関係
    2. 2.2.工事の進行や期限の厳しさ
    3. 2.3.長時間労働などの労務環境
  3. 3.建設業における若手育成のポイント
    1. 3.1.若い世代の価値観を知る
    2. 3.2.作業の意味と内容を明確に説明する
    3. 3.3.中長期的なキャリアプランを示す
    4. 3.4.綿密なフォロー体制を整える
  4. 4.<具体例>建設業における社内アカデミーの仕組みとメリット
    1. 4.1.社内アカデミーの仕組み
    2. 4.2.導入するメリット
    3. 4.3.導入方法

建設業における若手育成の課題

国土交通省の資料によれば、2022年時点における建設業就業者数は479万人であり、そのうち55歳以上は35.9%と高い割合を占めています。一方で、29歳以下は11.7%となっており、就業者全体の1割程度にすぎません。

実数ベースで見ても、前年の2021年と比べて55歳以上は1万人増加しているのに対し、29歳以下は2万人減少していることが明示されています。また、建設技能者の割合も60歳以上が4分の1以上を占めており、10年以内にはその大半が引退してしまうことが見込まれています。

このように、若手世代の確保・育成と次世代への技術承継は、建設業全体の大きな課題といえるでしょう。ただし、同じ年のデータとして、厚生労働省の『令和4年雇用動向調査』の結果を参照すると、業界全体としての離職率はそれほど高くないことも確かです。

離職率の全体平均は15.0%であるのに対し、建設業は10.6%とされており、16分類された産業別のなかで下から5番目の数値にあたります。そのため、今後も離職率の低下を目指すとともに、若い世代の入職率を高めることが建設業の主要なテーマといえます。

若手の人材が離職してしまう原因

若手の育成を考えるにあたって、まず採用した人材に長く働いてもらうことが前提となります。そのためには、若手の離職につながる主な原因を把握し、可能な範囲で事前に対策しておくことが重要です。

現場の閉鎖的な人間関係

建設現場の仕事は、大きな規模のものになると、数ヶ月から1年以上のスパンで取り掛かります。若手の人材が現場に入ると、基本的には決まった現場監督や所長のもとで働くことになるため、人間関係が閉鎖的になりがちです。

上司との相性に恵まれない場合でも、人事について客観的な評価が行われる機会が少ないため、配置転換などはあまり期待できません。その結果、せっかく仕事を覚え始めても現場にいづらくなり、離職を選んでしまうというケースが考えられます。

工事の進行や期限の厳しさ

建設業では工期の厳守が特に重要であり、進行が遅れれば遅れるだけ経費がかさみ、取引先や顧客からの信用も損なわれてしまいます。しかし、現実的には天候不順や欠員などの不確定要素によって、計画通りの進行が難しいケースも少なくありません。

進捗の遅れが生じたときに、スケジュールや人員に十分なゆとりがなければ、現場の作業員や管理者に負荷が生じてしまいます。こうした工期管理のプレッシャーや実質的な負荷の増加が、若手の離職につながってしまう側面もあるでしょう。

長時間労働などの労務環境

従業員の長時間労働は、建設業が抱える長年の課題ともいえます。厚生労働省の『毎月勤労統計調査(令和4年分結果)』によれば、建設業における1月の平均総労働時間は163.5時間とされており、全体平均よりも27.4時間多い数値です。

長時間労働については、2024年に建設業にも時間外労働の上限規制が適用されるようになったことで、ある程度の解消が期待されます。ただし、あくまでも制度上の変更にすぎないため、「実質的な作業量を減らすのが難しい」「作業負荷を軽減するための人員確保が難しい」といった課題が残されているのも確かです。

建設業における若手育成のポイント

若手の人材にのびのびと活躍してもらうためには、育成のポイントを的確に押さえておくことが重要です。ここでは、どのような点に気をつければよいのか、4つの具体的なポイントをご紹介します。

若い世代の価値観を知る

まずは、若手の価値観やレベルに合わせてコミュニケーションを図ることが育成の基本となります。現代の若い世代には、職人の世界で普及していた「背中を見せて学んでもらう」「ときに厳しく指導する」といった方法は受け入れられない可能性もあります。

教育を行うときにはきちんとマニュアルなどを整備し、冷静かつ丁寧な指導を心がけましょう。また、仕事において相手がどのような価値を大事にしているのかを知ることも、スムーズな育成の鍵となります。

特に、ベテランの従業員が育成を受け持つ場合などは事前に研修を行い、若手世代の考え方やワークライフバランスの捉え方などを知っておいてもらうとよいでしょう。

作業の意味と内容を明確に説明する

スムーズな育成を目指すためには、現場に入る前に作業の内容や目的を丁寧に説明し、理解してもらうことが大切です。「とりあえず現場に入ってもらう」「先輩従業員のやり方を見て学んでもらう」という方法よりも、あらかじめ具体的なレクチャーを行うほうが、安心して仕事に臨んでもらいやすくなるでしょう。

中長期的なキャリアプランを示す

将来のある若手世代には、定期的にキャリア研修やキャリア面談を行い、中長期的なプランを提示することも重要です。自社で働くことでどのようなキャリアが積めるのか、現在の業務がどのような将来につながるのかを丁寧に示すことで、前向きな意欲を引き出しやすくなります。

また、個人の力量やモチベーションに応じて、資格取得のサポートを行うのも有効な方法です。

綿密なフォロー体制を整える

若手の人材に安心して働いてもらうためには、綿密なフォロー体制の構築も大切です。定期的に仕事のフィードバックを行ったり、1on1ミーティングを実施したりして、孤立させないように気を配りましょう。

また、人材育成は長期的な取組みとなるため、教育担当者へのサポートも重要となります。「育成業務を担う分だけ通常業務の一部を周囲に分散させる」「教育担当の成果にもスポットライトを当てる」といった細かな配慮があれば、気持ちよく育成に向き合ってもらえるようになります。

<具体例>建設業における社内アカデミーの仕組みとメリット

若手人材を育成するうえでは、社内に新たな仕組みを導入するのも一つの方法です。近年では「社内アカデミー」や「社内大学」といった名称で、若手の人材を対象とした教育プログラムが導入されるケースも増えています。

ここでは、社内アカデミーの仕組みや導入のメリットをご紹介します。

社内アカデミーの仕組み

社内アカデミーとは、自社でテキストの作成や講師の選定を行い、講義形式で教育を行う育成プログラムのことです。講師はベテランや中堅の従業員に担当してもらい、会議室での対面講義やPC・スマホを使ったWeb講義によってプログラムを進行していきます。

受講の進捗を管理システムなどに記録しておけば、プログラムの進行度に応じて最適な人事配置やキャリア形成を検討することも可能です。

導入するメリット

社内アカデミーのメリットは、技術やスキルのスムーズな継承が行える点です。ベテランの知識や経験をテキストの形に落とし込み、講義を通じて伝えることで、誰でも平等に技術を習得できる機会が得られます。

また、さまざまなベテランの経験を共有してもらうことで、経験が浅いメンバーがトラブル処理能力を身につけやすくなるという側面もあります。現場でいきなりトラブルに直面するよりも、前もって事例や対処法を知っておけば、精神的な負担も生じにくくなるでしょう。

そして、もうひとつのメリットが、社内の教育システムの向上です。プログラムの作成を通じて、属人化された知識や技術が標準化され、誰でも取り出せるノウハウとして社内に蓄積されます。

プログラムの実行を通じて、教える側にも気づきや成長の機会がもたらされるため、教育制度そのものの質を高められるでしょう。さらに、普段は異なる現場に分散されている若手の従業員が集合するため、横のつながりが生まれやすくなり、閉鎖的な人間関係を改善することにもつながります。

導入方法

一口に社内アカデミーといっても、適した講義の内容や期間、頻度は会社ごとに異なります。初めからプログラムを作り込むよりも、まずは無理のない範囲で準備を進め、スモールスタートで様子を見るとよいでしょう。

たとえば、「業務開始のタイミングで15分程度の講座を継続してみる」「スマホで自由に講義が見られるように動画教材をストックしておく」など、自社に合った方法を見つけることが大切です。講義を担当する従業員とも意見を交わしながら、実現できそうなアイデアから着手してみましょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建設業の人材育成の課題は?
A:
建設業においては就業者の高齢化が目立ち、全体的に若手の割合が少ない傾向が見られます。建設技能者の割合も60代以上が4分の1を占めるため、若手世代への技術継承が喫緊の課題となっています。

Q:建設業で社内アカデミー(社内大学)を導入するメリットは?
A:
技術や知識をテキストにまとめることで、スムーズに人材育成が行えるようになるのがメリットです。ほかにも「若手同士の横のつながりが広がる」「キャリア形成に活かせる」「社内に育成ノウハウが蓄積される」といったさまざまなメリットがあります。

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