カインズの建築プロ向け「C’z PRO」 。資材調達の利便性と悩みに寄り添うサービスで差別化
国による住宅の省エネ改修の支援や、既存住宅の流通促進などもあり、リフォーム市場が順調に推移しています。矢野経済研究所の調査によれば、リフォーム市場は2030年ごろまで7兆円規模で緩やかに成長することが予想されています。
活況なリフォーム市場において主役ともいえる職人たちにとって欠かせない存在なのが、工具や資材などを調達するプロ向けショップです。関東近郊において7店(2025年2月時点)を運営する、カインズの建築プロ向けショップ「C’z PRO」を取材しました。
2020年にプロ向けの新業態をオープン
ホームセンター大手の「CAINZ」で知られる株式会社カインズは、2020年に建築プロ向けの新業態である「C’z PRO東名横浜店」をオープンしました。一般消費者向けのCAINZとはターゲットが異なり、対象は建築関係者を中心とした事業者のみ。会員制の卸売業態として「C’z PRO(シーズプロ)」という異なる名称で展開しています。利用には、事前に会員登録が必要です(建築業関連の法人、または個人事業主が対象)。
C’z PROの業務オペレーション全般を担う久保氏は、開業を進めるに至った経緯について当時を振り返ります。
「C’z PRO 1号店をオープンする前、2019年あたりから、地価の上昇や空き家問題などの背景もあり、リフォーム需要が高まってきていました。一方で、町の金物店は後継者不足により廃業が続いており、特に都内の建築現場近くには資材調達ができる店舗が無く、困っている職人さんが多くいるという状況を聞いていました」
C’z PRO全体の仕入れを担当する小林氏も、カインズで取引のあった建築関係者や取引先から同様の状況を聞いていたといいます。
「都内の現場を持つ職人さんからは、現場での急な変更があった際に、都内では資材の調達が難しいとの声があり、これらの課題を解決解決したいという思いがありました。建築プロ向けのビジネスには、チャンスがあるとの狙いもあり、新規事業として取り組んています」
C’z PROの5号店、川崎子母口店。主要幹線道路の尻手黒川道路沿いにあり、駐車場は19台が駐車可能
店舗には、建築関係のプロ向け、会員制店舗であることの案内が掲示されています
職人中心に考えられた店舗
C’z PROの店舗やホームページには、「卸売店のため一般の方のご利用はご遠慮いただいております」のご案内が。プロ向け店舗のなかには、卸売店でありながら一般消費者も購入可能な店舗もありますが、C’z PROは建築プロのみが対象です。
「住宅や建築は重要なインフラであり、このインフラを守る存在であるのが職人さんです。もともとC’z PROは職人さんの一助になれればとはじまりましたので、職人さんが求める商品を購入しやすくすることを軸に考えてつくられています。一般の方と職人の方は滞在時間も、来店される時間帯も異なります。工具ひとつをとってもDIY用とプロ用とでは品揃えも異なりますし、立地においても二号店以降は、往来のしやすい主要幹線道路沿いに寄せています」(久保氏)
「カインズはホームセンタ一の印象が強いので、一般のお客様と同じ場所での購入をためらうプロのお客様もいらっしゃいます。そこで、C'z PROは小売業であるカインズとは事なり、建築従業者様向けの会員制卸売り業としています」(小林氏)
C’z PROは2025年2月現在、東京都、埼玉県、神奈川県に7店舗ありますが、現場に向かう前に職人さんが立ち寄りやすいように平日は6時半にオープンします。特に朝の時間帯が混みあうそうです。
C’z PRO川崎子母口店。2階にはプロ向けの工具が並びます
C’z PRO川崎子母口店の電動工具売り場
スマホアプリを活用した資材調達の利便性
C’z PROの「インフラを守る職人さんたちのために何ができるか?」という思いは、店舗内のさまざまなサービスにも見られます。リフォーム現場では工具や資材が足りなくなってしまうことがあります。そんな急な入用にも、会員専用スマホアプリを活用して資材調達がスムーズにできます。
「専用アプリで検索して店舗にお取り寄せもできますし、LINEで商品注文やお問合せも承ります。『これがほしいけど商品名がわからない』といったお問合せにも対応しています。また、受け取り方法は店頭のピックアップロッカーも選べますので、営業時間内で店舗に受け取れない場合はこちらも便利です」(久保氏)
C’z PROの店頭には「売り場にない商品 お探しします」や「職人様の声にて導入しました」のポップアップがあちこちに掲示されています。資材調達の利便性はもちろんですが、その場に無い商品についても柔軟に対応しているといいます。
「店舗でお問合せのあった工具や資材については、毎日本部のC'z PRO部門に情報が共有されます。これらの情報を関連メンバーで精査した上で、店頭での品揃えに反映させています。現在は、これまで蓄積してきているプロのお客様の要望から、職種によって支持される商品が特定できつつあり、プロのお客様のニーズに合った商品の調達を進めています」(小林氏)
営業時間外でも、C’z PROのピックアップロッカーで24時間受取りが可能です
2階はエアコンや給湯器、水道や電気、内装関係の設備などが豊富に並びます。棚には「職人様の声にて導入しました」のポップアップがあちこちに
会員専用クリエイティブスペースが人気
C’z PROで特徴的なのが、会員であればだれでも無料で利用ができるクリエイティブスペースです。カフェのようなスペースが店舗内に設けられており、充電スペースもWi-Fiも無料。しかもドリンクも自由に飲むことができ、人気のサービスであるといえます。
「営業時間中いつでもご自由に使っていただけるスペースです。私たちC’z PROのスタッフとお客様とのお打ち合わせはもちろん、お客様同士のお打ち合わせでもご利用いただけます。最近は事務作業用にご利用いただくことが増えましたね。皆さん休む場所がなく、車中や屋外などで休憩されていることも多くありますので、C’z PROに来てぜひゆっくりとくつろいでいただき、気持ちよく現場に戻っていただけたらという思いからこういったスペースを設けています」(久保氏)
お昼の持ち込みもOKだそうで、店舗によっては非常に賑わう時間もあるとのこと。取材の際も、買い物終わりにドリンク休憩をされている方がおり、ちょっとした息抜きの場所になっているようです。
C’z PRO川崎子母口店のクリエイティブスペース。メーカーのパンフレットやカタログが閲覧できます。商品の見積もりや取り寄せにも対応
C’z PRO会員向けにフリードリンクを提供。職人さんが寛げるスペースになっています
コンセントがありスマホやPCの充電が自由にできます。コピーやプリントも無料。職人の方同士の交流が生まれる場になってほしいという思いもあるそうです
関東近郊で開店予定
「ありがたいことに、新店がオープンすると『楽しみにしていた』と挨拶に来てくださったり、新年のご挨拶にわざわざ店舗に足を運んでくださったりするお客様がいらっしゃいます。2025年2月には横浜綱島店がオープンし、その後も関東近郊でのオープンを予定しています。当面は関東近郊をメインに、毎年複数店舗のオープンを着実に進めていきたいと思います」(久保氏)
C’z PRO1階。鋼材や合板などの大型の商品が並びます