建築・施工管理

「隣地境界線1メートル」目隠し設置の義務化?目隠しの設置が認められる要件とは?

「隣地境界線1メートル」目隠し設置の義務化?目隠しの設置が認められる要件とは?

目次[非表示]

  1. 1.隣地境界線と目隠しの設置義務
  2. 2.建築基準法63条と民法234条1項の優先関係
  3. 3.目隠しの設置義務に関する判例
  4. 4.トラブルにならないためのポイント
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.弁護士法人コスモポリタン法律事務所杉本 拓也(すぎもと たくや)

隣地境界線と目隠しの設置義務

建物は、境界線から50センチ以上離れた位置に建築しなければならず (民法234条1項)、この距離を確保できない位置に建物を建築することはできません。

しかし境界線から50センチ以上の離隔距離を保持したとしても、境界線の近くに窓や縁側、ベランダが設けられると、他人から容易にのぞき見られてしまうというプライバシーの問題があります。すなわち、隣地境界線から1メートル以内に建物の窓やベランダが設置されている場合、その部分から隣地を見通すことができるため、プライバシーが侵害される可能性があるのです。

そこで、民法235条は、こうした状況において隣地所有者に対して目隠しを設置する義務を課しています。具体的には、「境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓または縁側(ベランダを含む)を設ける者は、目隠しを付けなければならない」という内容が規定されています。

目隠し設置義務は、隣地所有者のプライバシー保護を目的としており、住民の生活環境を守るための重要な規定となっています。もちろん、当事者双方の合意があれば1メートル未満とすることもできます。

【参考】


民法第235条

1.境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。

2.前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。


民法第236条(境界線付近の建築に関する慣習)
前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

建築基準法63条と民法234条1項の優先関係

建築基準法63条(旧建築基準法65条)は、「防火地域または準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」と規定していますので、民法234条との関係が問題となります。

判例(最高裁判所平成元年9月19日判決)では、準防火地域内で耐火構造の外壁を持つ建物を境界線に接して建築することが、民法上の境界線後退義務(境界線から50センチ以上離して建築する義務)に違反するかどうかが問題となりました。

この点、最高裁判所は、旧建築基準法65条と民法234条第1項の関係について、旧建築基準法65条が防火地域や準防火地域内で耐火構造の外壁を隣地境界線に接して設けることを許容していることから、同条は民法234条第1項の特則として機能し、これらの地域においては民法上の境界線後退義務が適用されないと判断しました。

つまり、建築基準法65条の適用により、特定の地域では民法の規定よりも建築基準法の規定が優先されることが確認されました。

この判決は、建築基準法と民法の関係性、特に防火や土地利用の観点から、特定の条件下で建築基準法の規定が民法の一般的な規定に優先することを示した重要な判例です。

【参考】


建築基準法(隣地境界線に接する外壁)
第63条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。


民法234条(境界線付近の建築の制限)
1.建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。2.前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

目隠しの設置義務に関する判例

目隠しの設置義務について、以下の2つの判例を紹介いたします。

1つ目は、建物所有者とマンションを建設しようとする隣地所有者との間で目隠し設置に関する合意があったにもかかわらず、隣地所有者が目隠しを設置せずにマンションを完成させてしまったことから訴訟を提起した事案です。この事例では、裁判所が、隣地所有者に対し、目隠しの設置と100万円の慰謝料支払いを命じました(東京地裁平成19年4月27日判決)。

2つ目は、のぞき見されることを根拠として、マンションのテラスの建築そのものの差し止めが認められた判例です (仙台地裁昭和55年1月25日決定)。この判例では、のぞき見されることがプライバシー権の侵害となる可能性があることを指摘しています。

トラブルにならないためのポイント

近隣に居住する者同士は、互いにプライバシー権を侵害し、または侵害される可能性があります。お互いに相手の立場もおもんぱかりながら生活することが必要であり、目隠しの設置は、相手の立場への配慮のひとつということが言えるでしょう。

目隠し設置義務をめぐるトラブルを避けるためには、事前に隣地所有者との良好な関係を築き、十分なコミュニケーションを取ることが重要です。隣家との間で問題が生じないよう、以下のポイントに注意することが求められます。

建物の設置やリフォームを行う際には、近隣住民の生活環境に配慮し、可能な限りプライバシーを尊重することが重要です。また、目隠し設置については、近隣住民の意見を十分に聴取し、双方が納得できる形で進めることが理想的です。

また、建設前に隣地所有者と目隠し設置についての合意を形成しておくことが、後々のトラブルを防ぐ鍵です。事前に調整を行うことで、法的な義務が発生する前に問題を解決できるでしょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:隣地境界線1メートル以内に窓やベランダを設置した場合、目隠しを設置しなければならない理由はなんですか?
A:
民法235条により、隣地境界線から1メートル未満の距離に設置された窓やベランダが他人の宅地を見通せる場合、プライバシーの侵害を防ぐために目隠しを設置する義務があります。この規定は隣地所有者の生活環境を守るために設けられており、住民間の配慮を促進します。目隠し設置は、近隣とのトラブルを防ぐためにも重要です。

Q:目隠し設置義務をめぐるトラブルを避けるためにはどうすればいいですか?
A:
目隠し設置義務に関するトラブルを避けるためには、事前に隣地所有者との良好な関係を築き、十分なコミュニケーションを取ることが重要です。建物の設置やリフォームの際には、近隣住民のプライバシーを尊重し、互いに納得できる形で進めることが理想的です。また、事前に目隠し設置についての合意を形成しておくことで、法的な問題を未然に防げます。


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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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