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近隣トラブルを避けるための足場越境対策とは?足場越境に関する法律と注意点について解説

近隣トラブルを避けるための足場越境対策とは?足場越境に関する法律と注意点について解説

目次[非表示]

  1. 1.民法における隣地使用権
  2. 2.足場の仮設と隣地使用権
  3. 3.隣地が承諾してくれない場合の対処法
  4. 4.トラブルを避けるために
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.弁護士法人コスモポリタン法律事務所杉本 拓也(すぎもと たくや)

民法における隣地使用権

民法209条は、隣地使用権に関する基本的な規定を定めています。この規定は、ある土地の所有者が、その土地を使用するにあたって、隣地の一部を一時的に使用することを認めるというものです。具体的には、隣接する土地が工事のために必要な場合や、境界標の調査のために隣地を一時的に使用する際に、法律上の権利として認められることがあります。

また、この規定は、隣地所有者が不当にその使用を拒否することを防ぐことを目的としています。例えば、建設工事のために足場を隣地に組む場合、その土地の使用が不可欠であれば、一定の条件下で隣地使用権を行使することができます。

しかし、これはあくまで「一時的な使用」に限られ、隣地所有者に対する損害を最小限に抑えることが求められます。

2020年施行の民法改正前は、「土地の所有者は、境界またはその付近において障壁または建物を築造しまたは修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない」とされていましたが。改正後は「隣地を使用することができる」となりました。

この違いは、改正前は「請求することができる」と規定するのみであり、あくまで隣地所有者の承諾を取ることが必要であり、隣地所有者が承諾しない場合は、訴訟により承諾に代わる判決を得なければなりませんでした。

これに対し、改正後は「使用することができる」となりましたので、隣地所有者が承諾しない場合、訴訟を起こして承諾に代わる判決を得ることなく、隣地を使用できることになりました。

【参考】

民法209条(隣地の使用)
1.土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

2.前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3.第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

4.第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

足場の仮設と隣地使用権

建設工事において足場を仮設する際、工事の範囲に隣接する土地を一時的に使用することが求められることがあります。特に、足場は隣地に越境するケースが多く、その際には隣地使用権の問題が発生することがあります。

足場の仮設は、民法209条1項一号の「境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕」に該当するので、隣地使用権があります。

隣地を使用する場合、使用の日時、場所および方法は、隣地の所有者および隣地使用者のために損害が最も少ないものを選び、かつあらかじめ、その目的、日時、場所および方法を隣地の所有者および隣地使用者に通知しなければならないとされています。

また、隣地の使用によって隣地所有者または隣地使用者が損害を受けたときに賠償金を請求された場合、支払わなければなりません。

隣地が承諾してくれない場合の対処法

民法上、隣地を使用する権利がある場合でも、隣地の所有者が承諾していないのに隣地に足場を組むことは、自力救済として認められていません。

説明しても隣地所有者が了解しない場合は、訴訟を提起することになります。具体的には、隣地所有者を被告として、足場を組むことを妨害しないように請求する訴訟を提起することになります。

また、すぐに工事をしなければ多額の損害が生じてしまうような場合、妨害禁止の仮処分命令の申し立てを行うことになります。

仮処分命令というのは、緊急の必要性がある場合に、通常の訴訟手続きの前に、数日間から数週間という短い期間で暫定的な命令を出す制度をいいます。仮処分命令が出た後、通常の裁判手続きをして決着をつけることになります。

トラブルを避けるために

隣地使用権に関するトラブルを避けるためには、事前の調整と説明が非常に重要です。工事に着手する前に、隣地所有者に対して丁寧に計画を説明し、可能であれば合意を得ることが理想的です。特に、足場の仮設は一時的なものであるため、その後の土地の返還についても明確に取り決めておくとよいでしょう。

また、信頼関係を構築することも、長期的なトラブル回避には不可欠です。隣地所有者との円滑なコミュニケーションを維持し、問題が発生した場合には速やかに対応する姿勢を見せることが大切です。信頼を得ることで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:足場の仮設において隣地を使用する場合、隣地所有者の承諾が得られない場合はどうすればよいですか?
A:
足場を組むために隣地を使用する場合、隣地所有者の承諾が得られない場合でも、民法209条に基づき、隣地使用権が認められます。承諾が得られない場合、訴訟を提起することが必要です。訴訟では、隣地所有者が足場の設置を妨害しないように求めます。緊急の状況であれば、仮処分命令を申し立てて、迅速な対応を求めることができます。裁判の結果を待つ間に発生する損害を最小限に抑えるための措置です。

Q::足場を隣地に仮設する際、隣地使用権を行使する場合の注意点は何ですか?
A:
隣地使用権を行使する際は、使用の日時、場所、方法について隣地所有者に事前に通知することが求められます。また、隣地所有者または使用者への損害を最小限に抑えるよう配慮し、使用後は土地の返還に関しても明確な取り決めを行うことが重要です。さらに、事前に丁寧な説明を行い、可能であれば合意を得ることがトラブル回避につながります。


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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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