<新着>活用用途が広がるトレーラーハウス。需要増の背景と今後の市場は?
近年、宿泊施設や店舗などの用途でトレーラーハウスの活用が進んでいます。大手住宅会社がトレーラーハウス事業に参入する動きも見られ、需要は拡大傾向にあるといえます。そんなトレーラーハウス事業において、国内で先駆的な存在といえるのがYADOKARI株式会社です。
移動可能な“可動産”(タイニーハウス、トレーラーハウス)の情報発信や、企画開発を手掛けるYADOKARIに、トレーラーハウス市場の需要増の背景や今後の市場などについて取材しました。
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建築価格上昇を受け新規事業での活用が活発に
ここ数年で大手住宅企業からの相談が増えたと、YADOKARIのセールスプランニングユニットリーダー松田 真規央氏は言います。
「背景として考えられるのは、建築価格の高騰です。トレーラーハウスは移動可能で、導入コストが施設を建築するより低いことから、新規事業や実証実験などで活用されています。新規参入時の初期コストが3年~7年ほどで回収でき、事業が終了した後の中古のトレーラーハウスの売却も容易で、事業リスクが低いこともメリットとしてあげられます」
グランピングブームでより身近な存在に
住宅会社や鉄道系企業などでYADOKARIのトレーラーハウスが活用されていますが、企業による利活用だけでなく、一般消費者の認知度も高まっているようです。
「コロナ禍を経て、グランピングが注目されるようになり、トレーラーハウスを目にする機会が増えたことで、一般消費者の方にも『こういう空間の使い方もあるんだ』と認識していただけるようになりました。グランピングブームが落ち着いた後も、能登半島地震で仮設住宅としてトレーラーハウスが導入されたこともあり、認知度は上がってきていると感じています」(松田氏)
ほかに、地域の工務店がサイドビジネスとしてトレーラーハウスの製造や販売に参入する動きもあります。建築価格高騰の影響による分譲一戸建て需要減など、複合的な要因でトレーラーハウスの市場が伸びていると考えられる、と松田氏は話します。
宿泊施設としての利用事例も多いYADOKARIの「Tinys INSPIRATION」。一体型車検付トレーラーハウスで車両に該当するため、市街化調整区域にも設置可
本格的な販売開始から2年で販売台数は3倍超に
2022 年より、YADOKARI は本格的にトレーラーハウスの製造・販売を開始。初年度と比較しては3 倍を超える売り上げとなりました。購入層の 8 割は法人で、宿泊事業が多くを占め、事務所や店舗などのニーズもあるといいます。
規格品とフルオーダーの中間、ニーズに柔軟に対応
順調に販売台数を伸ばすYADOKARIのトレーラーハウスですが、選ばれる理由について、松田氏は「機能性や快適性、デザイン性」に加えて、他社のトレーラーハウスにはない特徴についても理由としてあるといいます。
「トレーラーハウスは主に、フルオーダーで受注生産と、形の決まった規格品のタイプがありますが、YADOKARIのトレーラーハウスは中間のような位置づけです。いくつかのシリーズからお好みのトレーラーハウスをお選びいただき、ご希望に合わせて設計を変更したり、プロジェクト用に調整したりと、柔軟に対応しています」
フルオーダーだと高額になるものの好みの仕様に仕上がり、規格品は安価ではありますが用途に合わせた調整が難しいという、双方、メリットデメリットがあります。YADOKARIのトレーラーハウスはちょうどその中間のよいところを併せ持った点が特徴としてあげられるでしょう。
トレーラーハウス「MIGRA」に太陽光パネルが一体型になった屋根材「Roof–1」を搭載した新モデル。2025年発売開始
空間を広く使える「MIGRA」「ROADIE」が人気
トレーラーハウスの用途として、宿泊施設としての利用が多いことから、YADOKARIは、リゾート地に対応したモデルを展開しています。積雪を考慮し屋根に傾斜をつけ、トリプルガラスの高断熱窓を設置した寒冷地モデルや、海や島にも設置可能な、特殊塗装を施した塩害対策仕様モデルも。
また、安価にトレーラーハウスを手に入れたい人向けに、中古のトレーラーハウスの買取・マッチングサービスの展開、実証実験や短期のイベント用にトレーラーハウスのレンタルサービスもあり、さまざまなニーズに対応しています。
「トレーラーハウスのなかでも人気のモデルが『MIGRA』と『ROADIE』です。リビング空間の床が下がっており、一般的なトレーラーハウスと比較しても天井高が高く、ゆったりとした造りが特徴です。『MIGRA』は床部分が全体的に低く造られていて天井が高く、水回りの上にロフトを配置して、リビング空間が広く使いやすいと人気です。両モデルとも、実際に見学された方からは、想像していたより広く感じるというお声をいただいています」(松田氏)
アウトドアやキャンプなど、自然の中での滞在に適したモデル「ROADIE」イメージ写真
ラウンジ空間の床が下がった造りになっており、従来のトレーラーハウスよりも天井が高く開放感があります
全国で販売代理店を募集
国内の市場規模は150億円ともいわれるトレーラーハウスですが、「世界的な市場で見れば5千億ともいわれており、まだまだ伸びしろはある」と松田氏は見ています。
「市場は伸びてはいるものの、今後も拡大の余地はあると思っています。競い合うというよりは、いろいろな企業と協力して一緒に市場を広げていきたい。YADOKARIにはこれまでトレーラーハウスの企画や、要望に合わせたカスタム・製造をしてきたノウハウが蓄積されています。トレーラーハウスは車幅によっては車検を取得する必要がありますが、そういったトレーラーハウス販売において必要な法的知識や独自のノウハウも持っています。全国で、トレーラーハウスの販売に協力してくださる販売代理店を募集しています。代理店様向けに、トレーラーハウス販売に必要な知識のレクチャーも行っています」(松田氏)
トレーラーハウスは原則、建築基準法には該当せず「車両を利用した工作物」に当てはまりますが、建築物扱いにならないためには、いくつかの条件を満たす必要があります。「随時かつ任意に移動できる状態」を維持しなくてはならず「土地の定着性」が認められると建築基準法においては違法建築物としてみなされてしまうため、注意が必要です。
新しいライフスタイルを提供するYADOKARIのこれから
YADOKARI は2025年7月、タイニーハウスの宿泊施設「YADOKARI VILLAGE 北軽井沢」をグランドオープンする予定です。開業に向け、YADOKARIは「YADOKARI VILLAGE OWNERS」という新しいサービスを開始しました。タイニーハウスを購入した所有者は、宿泊施設の管理や運用をYADOKARIに委託。オーナーは宿泊施設として貸し出すことで、収益化が期待できます。
「今後は、トレーラーハウスの製造・販売を継続しながら、宿泊領域だけでなく、住宅やビジネスホテルなど、領域を広げてることも進めていく予定です。デベロッパーとしてトレーラーハウスをより生活に身近に、宿泊であり、住宅であり、トレーラーハウスを使った多様な施設を利用できる環境をつくっていく計画もあります」(松田氏)
国が進める二地域居住の施策も後押しし、今後、“可動産”の活用シーンはさらに増えていくかもしれません。YADOKARIの今後の新しい事業展開にも高い関心が寄せられそうです。