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ペットに寄り添う暮らしを提案、需要拡大中のペット共生型住宅

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日本では近年、子どもの数の減少と対照的に、ペットの存在感が高まるという特徴的な変化が見られます。厚生労働省が2026年2月に発表した人口動態統計の速報値によると、2025年の出生数は705,809人で、前年比2.1%減となり、10年連続で過去最少を更新しています。

一方で、ペットの飼育は拡大傾向にあります。一般社団法人ペットフード協会の調査では、同年の犬・猫の新規飼育数は約78万匹と、人の出生数を10%以上上回っています。さらに総飼育数は約1,566万匹に達し、15歳未満人口である約1,366万人を大きく上回る規模となっています。こうした数値から、ペットは家族の一員として社会に定着しているという実態が読み取れます。

このような背景を踏まえると、今後の住宅においては、従来の子育て中心の発想に加え、ペットとの共生を前提とした住環境の重要性が高まると考えられます。今回は人とペットが共に暮らす住まいについて紹介します。

①動物行動学の専門家と学術連携し愛犬に寄り添う暮らしを提案

三井不動産レジデンシャルは、戸建分譲事業「ファインコート」シリーズの新物件として、愛犬に寄り添う暮らしを提案する「ファインコート世田谷上用賀」を発表しています。帝京科学大学の加隈准教授の監修のもと、動物行動学や動物福祉学などの専門的知見を活かし、飼い主だけでは気づきにくい細やかな配慮を随所に取り入れ、飼い主家族とのより良い関係の維持をサポートし、人とペットの生活の質(QOL)向上を目指したということです。

当該物件は東京都世田谷区で約39万m2の広大な敷地に豊かな自然とドッグランなどを有する「砧公園」から徒歩圏内に位置。日々の散歩や休日は愛犬と一緒に走り回るなど、アクティブな暮らしを楽しむことが可能です。また、近隣の商業施設には動物病院やトリミングサロンなどのペット関連サービスが充実しており、愛犬との生活をトータルでサポートする環境が整っています。

 室内には犬の膝関節への負担を軽減するため、滑りにくさと耐久性を両立したフローリング「パートナーワン」や、多くの飼い主が抱える悩みである臭いの問題に対しては、ナノイー発生機「エアイー」や、消臭効果のある内装タイル「エコカラット」を全棟に採用しました。また一部の建物には、温水対応の外部水栓を採用した足洗い場を設置。毎日の散歩後に手軽に足の汚れを洗い流すことができ、利便性を向上しています。

②愛犬家が設計した分譲戸建住宅

神奈川・東京エリアを中心に分譲事業を展開する神奈川県横浜市のリストホームズは、愛犬との暮らしを重視した新築分譲住宅「リストガーデン小杉御殿町」を販売しています。

当該物件は、東急東横線「新丸子」駅から徒歩11分、「武蔵小杉」駅から徒歩13分という利便性の高い場所に位置しています。武蔵小杉エリアは再開発により人気を集めていますが、タワーマンションなどの集合住宅では、飼育可能な犬種や大きさなどに制限が設けられる場合が少なくありません。また、実際に同社が市場調査を行うと「立地には満足しているが、希望する犬種を飼えない」というニーズが多くあることが分かりました。このような背景から、同社は制限なく愛犬と暮らせる分譲戸建住宅として、武蔵小杉という上質な住環境にふさわしいデザイン性と、ペット共生住宅としての機能性を両立させた住まいを開発したということです。

「愛犬を暮らしの中心に」というコンセプトのもと、実際に愛犬家である設計担当者の経験から、日常の動線を踏まえた設計や間取り、設備、建材が採用されています。具体的には、玄関外に足洗い用のシャワーを設けたほか、玄関ドア脇にリードフックを配置することで、散歩など日々の外出前後の動作が円滑になるようにしています。また、室内の床材は滑りにくく手入れしやすいペット対応フローリングを採用し、LDKのある階にはトイレスペースも確保されています。さらに、壁材には抗菌性や耐水性、耐熱性に優れた素材を使用することで、清潔な室内環境を維持しやすくしています。LDKには犬専用のスペースが設けられ、ルーフバルコニーはドッグランとしても利用可能とし、人とペットが共に快適に暮らせる住環境となっています。

③賃貸でも大型犬や多頭飼育を可能にした住まい

最後に賃貸住宅においても同様の動きが見られます。東京都東久留米市に立地する「kinone(キノネ)東久留米」は、2024年8月に竣工した鉄筋コンクリート造8階建ての建物で、1~2階階にカフェや物販機能を配置し、1~8階には全39戸の賃貸住宅が整備されています。「動植物との共生」や「エシカルな暮らし」をコンセプトに掲げた点が特徴となっています。

同施設では、ペットを家族の一員として位置づけ、一般的な賃貸住宅に見られる飼育に関する制限を設けていません。そのため、大型犬や多頭飼育にも対応可能となっています。加えて、最上階には入居者専用のドッグランを設置し、散歩後に利用できる足洗い場や共用部のリードフックなど、日常的な使いやすさに配慮した設備が整えられています。
さらに、住戸内部の設計にも工夫が見られます。玄関から直接洗面・浴室へ移動できる動線や、広い土間を備えた間取りなど、ペットとの共生を前提とした設計が採用されています。

今後の住宅市場においては、ペットとの共生を前提とした設計やサービスの重要性がさらに高まると考えられます。単に「ペット可」とするだけでなく、動線設計や設備、コミュニティ形成まで含めた総合的な視点が求められています。ペットを含めた家族の生活の質(QOL)の向上を軸に据え、多様なライフスタイルに対応できる住環境を提供していくことが重要となるでしょう。

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株式会社住宅産業研究所(JSK)
株式会社住宅産業研究所(JSK)
1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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